ノーベル生理学・医学賞1981年ロジャー・W・スペリー:脳が左脳と右脳に分かれているという新たな常識に辿り着いたアメリカの神経心理学者

ロジャー・W・スペリーはアメリカの神経心理学者です。「大脳半球の機能特化に関する発見」という内容で1981年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。脳が左脳と右脳に分かれていることを突き止めたことでも知られています。そんなロジャー・W・スペリーの受賞までの道のりを詳しく解説していきます。

◆幼少期・学生時代

ロジャー・W・スペリーは1913年8月20日に、アメリカ合衆国コネチカット州にあるハートフォードという街で生まれました。スペリーはハートフォード公立高校(Hartford Public High School)に通い、卒業後は獲得した奨学金でオバーリン大学へ進学。そこで英文学科の学士号を取得したのち心理学を学び、心理学では修士号を取得しています。その後シカゴ大学の大学院に進み、有名な生物学者であるポール・ワイスの元で学びながら動物学の博士号(Ph.D=Doctor of Philosophy)も取得しました。さらにハーバード大学では神経心理学の開拓に携わったカール・ラシュレーのもとで霊長類の研究を行い、1946年にはシカゴ大学の解剖学助教授となっています。

◆受賞に至るまでの逸話など

スペリーは1950年代ごろから分割脳の実験を始めました。彼が研究をするまでは、「大脳は分化していない。大脳の一部が欠損しても残っている部分で代用可能である」と考えられていました。しかしスペリーはその説に疑問を持っており、カエルを使って脳を分析する実験を行います。まずカエルの目を上下逆さまに移植すると、カエルは左右や上下をとらえず真正面のハエにだけ反応するようになりました。その後ネコを使って「分離脳」の実験を開始。分離脳とは脳梁(のうりょう)という左右の脳を繋ぐ「神経線維束」を切断した状態の脳のことです。この脳梁と、目と脳を繋ぐ神経の一部を切断し、左目は左脳、右目は右脳のみに繋がる状態をつくります。そしてネコの右目を塞ぎ左目だけで図形を記憶させると、左目の繋がる左脳のみでしか記憶していないことが分かりました。この結果は「右脳と左脳は個々で扱える」ということを意味しており、大脳は分化していないという「全体脳」の考え方が主流であった当時では衝撃的な発見となりました。
さらに人間のてんかん発作を抑えるためにも分離脳をつくる手術法が適応され、スペリーはこの患者の観察を行うことにしました。患者は手術後てんかん発作を起こすことはなくなりましたが、片手を使いたくても両手同時に動いてしまうなど生活に支障をきたすようになり、この状態を見た彼は「脳はふたつに分かれており、ふたつの脳は神経で繋がった状態でお互いに情報の伝達を行っている」という結論に辿り着きます。
さらに研究を進めたスペリーは、左右に分かれた脳がそれぞれ違う機能を持っていることも発見。これらの成果が認められ、1981年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。この研究内容が発表されて以降脳に対するさまざまな実験が行われ、いまでは左半球(左脳)は主に言語や発話に関する機能、右半球(右脳)は視覚や空間情報の処理機能があることまで分かっています。

◆終わりに

いまでは常識となっている左脳と右脳の発見をしたロジャー・W・スペリー。脳についてはまだ解明されていないことがたくさんありますが、彼の研究はその謎を解き明かす大きな一歩となったに違いありません。最近では利き手と同じように「利き脳」があることも分かっており、これから先も脳に対する新しい知識が増えていきそうですね。

出典:(THE NOBEL PRIZE、sperry)(6,2021)

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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