ノーベル生理学・医学賞 1985年 マイケル・ブラウン:スタチン開発の基礎を築いた遺伝学者

マイケル・ブラウンはアメリカの遺伝学者です。彼はジョセフ・ゴールドスタインとともに、血中コレステロールを低下させ、心臓病や脳卒中を防ぐスタチンという薬を開発する基礎を築きます。そして1985年に、コレステロールの代謝とそれに関する疾患の研究によりノーベル生理学・医学賞を受賞しました。そんなマイケル・ブラウンの受賞までの道のりを解説します。

◆ブラウンの生まれた町

マイケル・ブラウンは1941年4月13日にアメリカのニューヨーク州ブルックリンで生まれました。

ブルックリンはニューヨーク市に5つある行政区の1つです。昔から移民と密接な関係にある地区で、特にアフリカ系の人々が多く居住していました。しかし近年では貧困地域に富裕層が流入してくるようになり、民族によってはっきりと居住地が分かれるということもなくなりつつあります。
ブルックリンは長い間製造業の町として発展してきましたが、1975年以降の主要な産業はサービス業です。製造業は縮小していますが、現在ではアパレル、家具、金属、食品などが主に製造されています。

20世紀初頭にはリゾート地として開発され、第二次大戦前はブルックリン区南部の半島コニーアイランドなどがニューヨーク市近郊のリゾート地として栄えていました。地下鉄の路線がコニーアイランドまで伸び、アクセスが容易になったことで多くの観光客が流入し、全米初の一大観光地となったのでした。
区内の移動または、中心地からブルックリンに訪れる際は公共交通が便利です。ブルックリンにはニューヨーク市地下鉄が18線も乗り入れているため、ブルックリンを往来する人々のほとんどがこの地下鉄を利用しています。

◆幼少期、学生時代

ブラウンは11歳のときに、ペンシルバニア州フィラデルフィアの郊外にあるエルキンズパークに移住することになりました。そして同州のウィンコートにあるチェルトナム高校に通います。

ブラウンは13歳でアマチュア無線の運用免許を取得し、このころから科学に対する関心を持ち始めます。それに加え、ジャーナリズムへの興味もあり科学と執筆に対しての情熱は、彼にとって最も重要なものとなっていきました。
その後ブラウンは化学を専攻し、1962年にペンシルバニア大学の教養学部を卒業しました。彼は学生時代のほとんどの時間をペンシルバニア新聞社での学生新聞の作成に費やし、特集編集者や編集長を務めました。そして、1966年に同大学の医学部で医学博士号を取得します。

◆受賞に至るまで

1964年、幼なじみのアリス・ラパンと結婚しました。そしてその後の2年間はマサチューセッツ総合病院の内科のインターンとして過ごし、そこでジョセフ・ゴールドスタインと出会います。彼らはここから長い間、共に協力しあって研究を進めていくこととなるのでした。

※ヌクレオチドの構造イメージ図

1968年から1971年までは国立衛生研究所で研究を行い、当初は消化器および遺伝性疾患の臨床助手を務めていました。その後、酵素の調節機構の研究の先駆者アール・R・スタットマンが率いる生化学研究室に加わります。ここでブラウンは酵素学の技術と代謝調節の基本原理を学び、グルタミン合成経路の調節酵素がヌクレオチドのウリジンの共有結合によって制御されることを発見したのです。
その後サウスウェスタン医科大学の助教授となり、ここでゴールドスタインと再会を果たします。彼らはコレステロールの代謝についての研究を行い、人間の細胞が血流からコレステロールを抽出する低密度リポプロテイン(LDL)受容体を持っていることを発見します。LDL受容体が不足すると、家族性高コレステロール血症に繋がるのです。この疾患の病理を説明することに加え、今となっては細胞生物学の基本である、受容体介在性エンドサイトーシスの存在も明らかにしました。

そしてこの発見が、スタチン系薬剤の開発の基礎となったのです。スタチンとは、血液中のコレステロール値を低下させる薬の総称で、心筋梗塞や脳血管障害の発症リスクを抑えることができます。
1974年、ブラウンはサウスウェスタン医科大学医学部内科准教授に昇進しました。1976年には教授に就任し、翌年には同研究所の医学・遺伝学教授および遺伝病センター長に任命されます。そして1985年、ジョセフ・ゴールドスタインとともにノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

◆おわりに

スタチンはブラウンとゴールドスタインの研究を元に、その後日本人の研究者の手によって完成されました。現在スタチンの服用人口はとても多く、あらゆる薬の中でも最も多く処方されているものだと言われているくらいです。それだけコレステロールに悩まされている人は多く、彼らの努力が多くの人々の健康を守っているのです。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

関連記事一覧