ノーベル生理学・医学賞 1988年 ジェームス・ブラック : 創薬研究の父と呼ばれる医師・薬理学者

ジェームス・ブラックはイギリスの医師・薬理学者です。病を治すためには、その病の根本的な原因を突き止めることと、治療するための薬を摂取することが必要だという提唱をしたブラックは「プロプラノロール」や「シメチジン」などの薬を開発しました。そしてこれらの功績が認められ1988年ノーベル生理学・医学賞の受賞に至りました。

○ジェームス・ブラックの生まれた町

ジェームス・ブラックは、1924年6月14日にイギリスのスコットランドにて誕生しました。
スコットランドは約800近い島々から形成されている、豊かな自然と山脈のある美しい国ですが、首都のエディンバラはヨーロッパ有数の金融都市として知られ、経済の中心を担っています。そしてスコットランドは、イギリスの一部というより独立した地域という扱いですが独立国家ではありません。しかし、かつてはスコットランド王国という独立国でした。
近年でも何度か独立の動きを見せていますが、スコットランド国民の間でも独立に関しては賛否両論があります。スコットランド独立に関する動きは今後も活発になるだろうと予想されていて、ヨーロッパ情勢においての火種の一つとなっています。

○幼年期、学生時代

スコットランドのラナークシャーという自然豊かなところで生まれ育ったブラックは、伸び伸びと自由な少年時代を送りました。家は裕福ではありませんでしたが、高校の数学教師の勧めでセント・アンドリュース大学の医学部に入学します。そして、だんだんと医学への関心を抱くようになります。

○受賞に至る迄

セント・アンドリュース大学医学部を卒業し、結婚もして公私共に充実していたブラック。当時の妻のヒラリー・ジョーン・ヴォーンは、彼が試練にぶち当たっても暖かく見守ってくれる良き理解者であり、時には助言をくれることもありました。
大学を卒業した当時ブラックは多額の借金を抱えていたため、卒業してからは3年間ほどシンガポールで働きました。イギリスへ戻ってからブラックは、生理学教育研究所の新設に携わりました。そのときブラックは胃酸分泌に関するヒドロキシトリプタミンの研究に参加し、ヒスタミンの刺激によって起こり得る酸分泌に関して研究していました。

また、共同研究者であるジョージ・スミスが深い関心を寄せていた分野の、冠動脈が狭くなっている患者の心臓へ酸素を送り込むときの流れについて共同で研究します。それは、心臓の交換神経駆動を無効にして酸素の心筋需要を減らす、という内容でした。彼らの研究の目的は、特定のアドレナリン受容体拮抗薬を得る事で可能になりました。

そのときからブラックは、薬理学の必要性を強く感じるようになりました。そして、今では市販され不整脈や心筋梗塞などの治療に用いられている、アドレナリン作動制効果遮断薬を作り出したのです。副作用としての頭痛や、喘息患者への投与はできないなどの問題はあるものの、これは劇的な医療技術の向上といえるでしょう。そして、薬理学者のビル・ダンカンが研究チームの一員となり、彼とブラックのパートナーシップは実に15年間にも及びました。

H 2受容体拮抗薬をつくるプログラムにも尽力し、ヒスタミンH2受容体の遮断薬となる「シメチジン」を作り出しました。この薬は胃酸分泌をコントロールし抑制する事ができるため、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療などに使われます。しかもシメチジンは人間のみならず、犬や猫といった動物の胃炎治療にも利用することができます。

様々な新薬を開発したブラックは、研究者としてこれ以上ないほどの名声を得ました。しかし医学的科学の分野をもっと一般に浸透させ、もっと新しい発見にアクセスしやすい環境を作っていきたいとも思っていました。それが人類の今後を良いものにすることだという確信が、彼にはあったのです。そのために、子どもの頃から教育の過程に薬理学を含むべきだという主張をしていました。そして、大学の医学科学課程に薬理学コースを新設する活動に尽力し、後進の育成にも務めました。

また、新薬の開発という分野は大きな市場を持っていることも確かです。そのため企業と手を組み、新薬が開発されたらすぐに製造し、人々に明け渡せるという流れも作り出しました。

これらの実績により1988年にノーベル医学賞を受賞しました。しかし、ブラックが幾多の研究成果を出す事が出来たのは、有能な薬理学者仲間や家族の支えがあったからこそだとブラック自身が語っています。

○終わりに

ブラックはただ薬を開発するだけに留まらず、今後の薬理学の発展や迅速に医療現場へ普及させる術など、薬ができてから患者の手に届くまでの流れの全てを大切にしました。そんなジェームス・ブラックは、2010年3月22日に85歳で亡くなりました。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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