ノーベル生理学・医学賞 1993年 フィリップ・シャープ:遺伝子構造に対する基本的な考え方を変えた研究者

◆受賞者の実績をサマリー

フィリップ・シャープは、アメリカ出身の遺伝学者・分子生物学者です。1993年に『分断構造を持つ遺伝子の発見』でノーベル生理学・医学賞を受賞しました。そんなフィリップ・シャープの受賞までの道のりについて詳しく解説していきます。

◆生年月日、生まれた町、生まれた町の概略

フィリップ・シャープは、1944年6月6日にアメリカ合衆国 ケンタッキー州のファルマスで生まれました。

ファルマスはペンドルトン郡の郡庁所在地で、1776年頃に「フォークス・オブ・リッキング」と呼ばれた集落からスタートします。その後、開拓者のジョン・ウォーラーが町を整備し、1793年に州議会により正式に「ファルマス」を設立しました。町名はウォーラーの生まれ故郷にある同名の町に由来しています。

◆幼少期、学生時代

フィリップ・シャープは、ペンドルトン郡にある公立の小学校、中学校、高校に通い、とくに数学と科学の授業を楽しんでいました。両親は彼に大学へ進学することを勧め、授業料のために節約するよう助言しました。その教えもあり、彼は両親の許可を得て牛の飼育やタバコを栽培するなどして市場で学費を稼いでいます。

その後、長年慣れ親しんだ環境を離れたくなかったシャープは、ケンタッキー州にあるユニオン大学に進学します。彼は化学と数学を専攻しつつ、将来の方向性をじっくり考えました。そして、『化学についてさらに学びを深めたい』と考えた彼は教授に相談し、イリノイ大学への進学を勧められます。

※イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校

イリノイ大学(現在のイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)の奨学金制度を授与されたシャープは、物理化学部で学び始めます。学位取得のための論文では、統計的および物理的理論を使用したDNAの分析を中心に記述しました。

そして、転機となったのは1966年。シャープはコールド・スプリング・ハーバー研究所で開催された遺伝暗号に関する研究発表会の内容を知り、分子生物学と遺伝学への興味をもつことになります。

◆受賞に至るまでの逸話など

※カリフォルニア工科大学の生物化学研究センター

分子生物学と遺伝学の研究に携わりたいと考えたシャープは、1969年からカリフォルニア工科大学の研究室に所属しました。そこで分子生物学の研究プログラムに没頭し、ヘテロ二本鎖法と電子顕微鏡を使用した実験を行うようになります。1971年からは細菌の性因子と薬剤耐性因子のプラスミドの構造研究を行い、ゲノム配列の獲得を観察して転位因子が含まれていることを発見しました。

その後、コールド・スプリング・ハーバー研究所の分子生物学者・遺伝学者であるジェームズ・ワトソンの元で働き始めます。しかし、ジェームズ・ワトソンはハーバード大学での勤務が中心であったため、シャープはジョー・サンブロックの研究室で過ごすことが多かったと語っています。

シャープは遺伝子発現に強い関心をもっており、アデノウイルスを使用した実験を数多く行いました。そして、制限酵素とゲル電気泳動法を使用したアデノウイルスの遺伝子地図作成プロジェクトに参加します。

※マサチューセッツ工科大学のがん研究センター(現在のコッホ統合がん研究所)

1974年からはマサチューセッツ工科大学のがん研究センター(現在のコッホ統合がん研究所)へ移り、アデノウイルスの研究を継続して行いました。そして、シャープと共同研究者たちは『核内の長いRNAは細胞質に存在しない』ということに気付きます。『長いmRNAは短いRNAに加工される』という仮説をたて、RNA/DNAのハイブリッド分子を使用した実験を行いました。その結果、細胞質のmRNAは加工・編集されていることが判明し、『分断構造を持つ遺伝子の発見』に繋がりました。

1978年には複数の研究者グループに加わり、バイオジェン社を設立しています。シャープは科学担当を務め、取締役会のメンバーにも就任しました。また、1985年からはマサチューセッツ工科大学のがん研究センターの所長に就任すると、1991年には所長を辞職してマサチューセッツ工科大学の生物学部門長を1999年まで務めました。

そして1993年。『分断構造を持つ遺伝子の発見』によりノーベル生理学・医学賞を受賞しました。また、シャープはイーライリリー生物化学賞、米国科学アカデミー賞分子生物学部門、ガードナー国際賞、コロンビア大学のルイザ・グロス・ホロウィッツ賞、ピッツバーグ大学からディクソン賞医学部門、アメリカ国家科学賞なども受賞しています。

◆終わりに

フィリップ・シャープは、遺伝子発現に強い興味をもち研究を続けた遺伝学者・分子生物学者です。彼の研究結果により、遺伝子に対する根本的な考え方が大きく変化したと評価されています。そして、自らの研究を継続する一方で、企業や大学・科学学会の役職を兼任し精力的に活動している人物でもあります。

出典:(Wikipedia) Falmouth,_Kentucky
(THE NOBEL PRIZE)Phillip A. Sharp – Biographical – NobelPrize.org
(DNA入門)DNA入門24:人物紹介

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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