KISS:アメリカンドリームを体現したバンド

KISSは、1973年にベースのジーン・シモンズ、ギターボーカルのポール・スタンレー、ドラムのピーター・クリスによって結成されたハードロックバンドです。
その後、オーディションでリードギターのエース・フレーリーが加わり、第一期KISSが誕生するのです。

KISS

東のエアロスミスに対し、西のKISSとまで言われるほど、アメリカで人気を二分していたハードロックバンドです。
デビュー当時から、とにかく売れるためにはどうすればいいのかを徹底的にセルフプロデュースしており、他のバンドが真似できないようなステージを展開してきました。

独特の衣装とメイクは、メンバーそれぞれのペルソナに基づいていて、ジーン・シモンズが地獄からの使者、エース・フレーリーがスペースマン、ピーター・クリスがキャットマン、そしてポール・スタンレーがスターチャイルドとなっています。

ポール・スタンレーのメイクは白塗りに右目の部分だけに大きな星型が描かれているもので、そこから光線が発射できるのだそうです。

この設定は、のちに制作されたSF映画「KISS Meets the Phantom of the Park」の中でも生かされています。
ライブでは、ポールがフロントマンとしてMCなどを担当していましたが、ワイルドなジーン・シモンズ、ハスキーで甘い歌声のピーター・クリスもボーカルを担当することでバンドに幅を持たせることに成功しています。
KISSは、デビュー当初からジーンの血糊、ポールのギター破壊など派手なパフォーマンスが有名でしたが、中でもサーカスからヒントを得たというジーンの火吹きはロック界だけにとどまらずニュース番組などにもたびたび取り上げられました。

KISSが名実ともにトップアーティストになったのは1975年に発売された「Alive!」のヒットによるものです。それまで奇抜な格好ばかりが話題になり、なかなかレコードセールスに結びつかなかったKISSのはじめてのヒットアルバムがライブ盤というのも、つねにパフォーマンスを中心に考えてきたKISSの作戦勝ちと言えるのかも知れません。

ポール・スタンレーとは

甘いマスクとセクシーな立ち振舞でロックスターとして君臨し続けるポールですが、全てが順風満帆で来たわけではありません。本人もあまり多くは語りませんが、ポール・スタンレーは生まれながらにして右耳が聞こえません。
また、20cmもあるブーツを履いての過激なアクションによるものか、股関節変形症を患っており2004年には人工股関節に取り替える手術が行われています。スポーツ選手などもクーリング手術などを受けることがありますが、大変な痛みを伴うためライブ前には痛み止めが欠かせなかったそうです。

KISSでは多くのヒット曲を生み出しているポールですが、音楽以外にも才能があるようで、とくに絵画に置いては個展の収入だけで食べていけるほどの腕前です。

もともと、学生時代美術を専攻していたという下地は合ったのだそうですが、真剣に描くようになったのは、最初の奥さんとの離婚で受けた精神的苦痛を緩和するためのセラピーの一環として始めたことがきっかけのようです。
まるで、アンディ・ウォーホルを彷彿させるようなポップで色鮮やかな絵画は、いかにもニューヨークっ子のポールらしい色使いと言えますね。

アイバニーズ・アイスマン

多くのギターを使いこなすポールですが、一番似合うギターと言えばアイバニーズのアイスマンではないでしょうか。

日本のギターメーカーであるイバニーズが、はじめて制作したオリジナルギターであるアイスマンは、独特な形状をしており同系会社であるグレコのミラージュとならんで多くのモデルが発売されました。
中でも2663というモデルをポール・スタンレーが気に入り、自身の要望を詰め込み開発したシグネイチャーモデルをメインギターとして使用するようになったのです。

ギター下部が大きくえぐれたシングルカッタウェイの形状をしていますが、上部も20フレットあたりまででボディが結合されているためハイポジションの弾きやすさはダブルカッタウェイのストラトキャスターと比べても遜色ありません。

ピックアップはハムバッカー2発。2ボリューム1トーンで3WAYのトグルスイッチが付いています。オリジナルのピックアップはV2オープンコイルを採用していてかなりパワフルな音が期待できます。
ボディ重量は4.5kg。ストラトキャスターが3.6kg、バックとトップに2種類の木材を張り合わせるレスポールスタンダードですら3.8kg前後が普通ですから、アイスマンの4.5kgはかなりの重量と言えます。
ポール・スタンレーくらいのマッチョマンでないとステージ上で軽やかなアクションは決められないかも知れませんね。

その他には、ギブソンのフライングV、エクスプローラー、BCリッチのワーロックなどKISSに似合う派手なデザインのギターを多く使用しています。

ポール・スタンレーのプレイスタイル

KISSでのポール・スタンレーは、ボーカルがメインという立ち位置で、ソロパートの多くはエース・フレーリーやトミー・セイヤーに譲っています。

しかし、ギタリストとしてのテクニックも素晴らしいものがあり、デリケートなアルペジオから速弾きのソロまで無難にこなすことができます。
美しいアコースティックギターの旋律で始まるブラックダイヤモンドは、ポールのアルペジオから始まり、ライブの定番パフォーマンスの一つとなっています。

また、ジーン・シモンズのベースとポールのサイドギターは、重厚なKISSのサウンドの要であり、デビューから変わらないKISSサウンドを支える要因の一つになっているのです。
最近では、アコースティックライブや小規模なTVショーなどにも積極的に参加し、その卓越したギターテクニックを垣間見ることができます。

KISSのおすすめアルバム

50年近い活動歴を誇るKISSですから、この1枚を選ぶのはとても大変ですが、ここではパフォーマンスの素晴らしさからやはりライブアルバムを推したいと思います。

出世作ともなった「Alive!」も素晴らしいのですが、初期の代表曲が惜しげもなく詰まった「AliveⅡ」はKISSを語る上では外せない1枚と言えます。
まるで映画の1シーンを思わせる会話から、バイクのエンジン音が響き激しいリフがスタートする「Detroit Rock City」を皮切りに、ライブでの定番曲「Love Gun」、エース・フレーリー初のボーカル曲である「Shock Me」
全米7位という大ヒットを記録した、ピーター・クリスの「Beth」、長らくライブのトリを飾ってきた「Shout It Out Loud」と全編通して飽きさせない構成となっています。
また、発売当時「AliveⅡ」は2枚組のLPだったのですが、4面にはスタジオ盤のボーナストラックが付属しており、ここでもエース・フレーリーの歌う名曲「Rocket Ride」が収録されています。

その他には、セールスには結びつきませんでしたが初期のストレートなロックンロールが詰まったファーストアルバムも名曲揃いでファンからの支持は高いです。ライブにおけるジーンの火吹き演出の代表曲だった「Fire House」やピーター・クリスの初のボーカル曲「Black Diamond」は今でもKISSのセットリストの定番です


メンバーチェンジ後のおすすめアルバムとなると、1987年にプラチナ・アルバムを獲得した「Crazy Night」シングルカットされた「Forever」が全米8位を獲得した「Hot in the Shade」などがありますが、アルバム全体の評価としてはライブ盤には及ばないでしょう。

KISSは、多くのベストアルバムを発表していることでも有名で、メンバーやバンドの状況などに応じて9枚ものベストアルバムが発売されていますから、そちらを参考にしてもいいでしょう。
あとは、70人編成のオーケストラ楽団と演奏を共にしたライブ盤「AliveⅣ」は初期から中期までの代表的なヒット曲が収められていてお得感があります。また、クラシックとロックが、これほど相性がいいものだということを教えてくれるアルバムでもあり、KISSの楽曲の素晴らしさを再確認させてくれます。
オーケストラのメンバーが、それぞれにKISSと同じメイクを施した状態でヴァイオリンやチェロを演奏する姿は一見の価値があります。この時のライブの模様は動画共有サイトなどにもアップされていますから見てみることをおすすめします。

2018年、ポール・スタンレーも66歳になり、ローリングストーン誌のインタビューで自らの引退について語った記事が掲載されました。メイクのせいもあるのでしょうが、鍛え上げられた大胸筋とパワフルな歌声、ステージ上の派手なアクションは年齢を感じさせなかっただけに、今回の引退発言にショックを受けたファンも多かったようです。
できることなら、撤回された2000年の引退宣言のように、今回も思い直してくれることを期待します。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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