チープトリック:まさにアメリカンドリーム!

チープトリックは、アメリカはシカゴで結成されたロックバンドです。
1974年にギターのリック・ニールセンとベースのトム・ピーターソンによって産声を上げ、その後、メンバーチェンジを繰り返しドラムにバーニー・カルロス、ボーカルにロビン・ザンダーを加え正式メンバーが揃うことになります。

シンデレラバンド!チープトリック

2016年にはロックの殿堂入りを果たし、数々のヒット曲を生み出してきたチープトリックですが、成功までの道のりは平坦ではありませんでした。

1977年、アルバム「Cheap Trick」でデビューしましたが、当時アメリカにはKISSやエアロスミスといった人気バンドがおりほとんど注目されることはありませんでした。ハードロックのジャンルでもコミカルなキャラクターでバンドを支えていたリック・ニールセンのプレイは、全盛期のリッチー・ブラックモアやクイーンのブライアン・メイに比べられ過小評価されていた部分もあったのです。

その後も何枚かアルバムを出すものの、ヒットに恵まれずにいたのですが1979年にリリースしたアルバム「Cheap Trick at Budokan」が全米4位を記録します。日本の武道館では、それまでにもボブ・ディランやディープ・パープルなどがライブアルバムを発表しており世界的なヒットを記録していましたが、チープトリックの成功で武道館のライブアルバムを出すことが成功への秘訣といったジンクスがアメリカの新人バンドの間で広まるきっかけになったのです。

1980年台になると、世界的なハードロックブームが訪れ、とくにアメリカではLAメタルとよばれる大きなムーブメントが訪れます。どちらかと言うとパワーポップに分類されるチープトリックはその影に隠れてしまいますが、その後も息の長い活動を続けコンスタントにアルバムを発表し続けています。

特異なキャラクター集団

チープトリックは超個性派集団です。ボーカルのロビン・ザンダーこそ甘いルックスにハスキーな歌声とロックスターとしての要素を持っていたのですがバンド全体で見ると全く統一感がありませんでした。

ギターのリック・ニールセンはキャップに蝶ネクタイ、カラフルなカーディガンとまるでコメディアンのような格好でしたし、ドラムのバーニー・カルロスは銀縁眼鏡に七三分け、白いワイシャツにネクタイとどこかの事務員のような衣装で常にタバコを咥えてドラムを叩いていました。ベースのトム・ピーターソンは格好こそロックミュージシャンだったのですが、使っていたのは1つの弦に3本もの弦を張った12弦ベース。ただでさえ張力の強いベースに12本も弦を張るなど当時は考えられませんでした。

ところが、彼らがステージに上って演奏を始めた途端、そのバラバラだった個性がものの見事に一つに融合し、絶妙なサウンドを聴かせてくれる…。これこそがチープトリックの最大の魅力だったのかもしれません。

ギターコレクターでもあるリック・ニールセン

リック・ニールセンは大が付くほどのギターコレクターとしても有名です。自宅だけでは置ききれずにいくつか倉庫を借りて保管しているほどです。以前、その倉庫の一つでボヤが発生、数万ドルのギターが灰になり大きなニュースになったこともありました。

現在、一部のコレクションを販売する会社も立ち上げておりコレクターの間でも話題になっています。
ライブでは、ヘイマーのエキスプローラータイプであるスタンダードをメインに使うことが多いリック・ニールセンですが、やはり特筆すべきは1つのボディから5つのネックが生えた5ネックギターでしょう。

ヘイマーのサンバーストをメインに作られた5ネックギターは、リック・ニールセンのための完全オリジナルギターです。
ヘイマーらしく5本のネックは全てローズウッドの指板でそれぞれのネックは、上から12弦、6弦レギュラーチューニング、トレモロユニット搭載、6弦オープンチューニング、6弦フレットレスとなっています。
ライブでは「Surrender」などで披露される5ネックギターですが、総重量は20kg以上にもなると言われておりこのギターをぶら下げてステージ上を飛び回るリック・ニールセンの体力にも感心してしまいます。

リック・ニールセンのギタープレイ

非常にオーソドックスなプレイをするリック・ニールセンですが、ツボを抑えたバッキングといい、裏方に徹する控えめなリードギターといいいたるところにキラリと光るセンスを感じます。
ソロ自体はペンタトニック・スケールを中心としたものが多く、4~8小節と短いものがほとんどです。派手なアクションでステージを盛り上げるリック・ニールセンには、速弾きよりもグルーブ感が感じられるタイトなリズムギターの方が重要だと考えているのでしょう。

チープトリックのおすすめアルバム

やはり出世作ともなった「Cheap Trick at Budokan」は外せません。このアルバムは当時、日本だけの限定発売だったのですがアメリカ本国に逆輸入されたところラジオなどで人気に火が付きワールドワイドで発売されたという経緯があります。

全米7位を記録した「I want you To want Me」を始め、現在でもライブの定番曲である「Surrender」、学校のチャイムを思わせる印象的なナチュラルハーモニクスで始まる「Clock Strikes Ten」など初期の代表曲が全て収録されています。

オリジナル盤は1978年に発売されていますが、1998年にはノーカットで曲順も当時のまま再編集された「The Complete Concert」が発売されていますので、こちらもおすすめです。
「The Complete Concert」は2枚組で全19曲。「High Roller」や「Southern Girls」などオリジナル版には含まれていなかった曲や曲間のMCまで全て当時のまま再現されています。

「Cheap Trick at Budokan」の勢いをそのままにリリースされた「Dream Police」も評価の高いアルバムです。プラチナ・アルバムも獲得したこのアルバムには代表曲で全米26位を記録した「Dream Police」やロビン・ザンダーの甘い声が印象的なバラード「Voices」などが収録されています。
アルバム自体も最高で全米6位まで上り詰め、チープトリックの作品の中でもっとも売れたスタジオ・アルバムとなったのです。ちなみに、このアルバムにはゲストプレーヤーとして、TOTOのスティーブ・ルカサーがギターを弾いています。

どの曲も非常に完成度が高く、パワーポップ・バンドとしての本領を発揮した1枚として世界中にCheap Trickの名前を印象づけました。

現在のチープトリック

ベースのトム・ピーターソンが一時バンドを離れたことがありつつも、デビューしてから一貫としてオリジナルメンバーで活動してきたチープトリックですが、ドラムスのバーニー・カルロスの脱退が決定的となってしまいました。
チープトリックはメンバー間の仲がいいことで有名なバンドではありましたがその実、バーニーと他のメンバーの間には深い確執があったようで、ついに裁判にまで発展してしまいました。

現在では、バーニーがチープトリックのメンバーであることは間違いないが、今後、レコーディングやライブには一切関わらないというニュースが伝えられています。

2018年現在、バンドはリック・ニールセンの息子であるダックス・ニールセンをドラムに加え活動しています。すでに「Bang,Zoom,Crazy…Hello」と「We’re All Alright」の2枚のスタジオ・アルバムに参加していて父親譲りの才能を見せています。

棍棒を使ったドラムソロなど、ユニークな演奏でバンドを盛り上げていたバーニー・カルロスが見られなくなるのはファンとして寂しいですが、若いダックスが加入したことでチープトリックはまだまだ第一線で頑張っていけそうです。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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