KK.ダウニング:ヘヴィメタルの雄、ジューダス・プリーストを作った男

KK.ダウニングはイギリスを代表するヘヴィメタルバンド、ジューダス・プリーストのギタリストとして知られています。激しいヘッドバンギングでブロンドの長髪をなびかせ、ワインレッドのメダリオン・フライングVを弾くKK.ダウニングの勇姿は世界中のギターフリークの憧れの的でした。

ジューダス・プリースト

1970年、ギターのKK.ダウニングとベースのイアン・ヒルによってジューダス・プリーストは結成されますが、ジューダス・プリーストというバンド自体は1年前から存在していました。
実は、KK.ダウニングにはそのジューダス・プリーストのオーディションを受け落選するという悔しいエピソードを持っているのです。その後、旧ジューダス・プリーストが自然消滅してしまい、その名前を引き継ぐ形でKKらによって生まれ変わることになるのです。

度重なるメンバーチェンジによってボーカルに5オクターブの声域を持つロブ・ハルフォード、KKと並ぶツインリードの要、グレン・ディプトンを加え黄金期のラインナップが揃っていきます。
しかし、セールスは思ったように伸びず、厳しい時期が続きます。やっと、メジャーデビューを果たしたのは1977年、結成から7年も経ってからのことです。

「Sin After Sin」と名付けられたアルバムは、ジューダス・プリーストにとっては3枚目のアルバムですが、メジャーとしてはファースト・アルバムになります。プロデューサーに元ディープ・パープルのロジャー・グローバーが担当したこのアルバムは全英チャート23位を記録し、バンドとしてまずまずのスタートを切ることになります。

バンドは、その後もコンスタントにアルバムを発表し、精力的なライブを繰り返します。やがて1980年に入り世界的なヘヴィメタル・ムーブメントが起きるとジューダス・プリーストのカリスマ性が一気に爆発。メタルゴッドの愛称とともに押しも押されぬトップバンドに君臨するのです。

KKダウニングとは

KK.ダウニングは、本名をKenneth Keith Downing, Jrといい、イギリスはバーミンガム出身のギタリストです。少年時代の家庭環境は、恵まれておらず家庭内暴力などに苦しみ15歳の時に家出同然で独立することになります。

当時、イギリスに来ていたジミ・ヘンドリックスのライブを見て感化されロックミュージシャンを目指します。
今ではヘヴィメタルバンドの定番になっている、スタッズの付いた黒いレザーの衣装を最初に考え着用したのはKKだと言われています。当時は、レッド・ツェッペリンやディープ・パープルのようにパンタロンにヒラヒラのレースが付いた衣装が主流で、膝まであるブーツや現在のライダースジャケットなどは販売されていませんでした。

KKは、ボーカルのロブと一緒に舞台用のレンタル衣装店からそれらしいアイテムを借りて、ライブで着用していたのだそうです。

KKダウニングとフライングV

KK.ダウニングと言えばマイケル・シェンカーと並ぶフライングVの使い手で知られますが、デビュー当時は左利き用のネックを付けたフェンダー・ストラトキャスターを使用していました。一時期、ギブソンのSGも使っていましたが、グレン・ディプトンがバンドに加入したあたりから、ギブソンのメダリオン・フライングVを使うようになり、その後はひたすらVシェイプのギターにこだわっています。

これは、グレンのメインギターがギブソンのSGでバランス的なものを考えたからだとも言われています。
当初は、1967年製のギブソン・メダリオン・フライングVオンリーでしたが、その後、ヘイマーのVシェイプのものや、トレモロユニットを搭載したKXKのシグネイチャーモデルなども使用しています。

ベテランになってからは、一時期ステージでスタインバーガータイプのヘッドレスのVモデルを使用していたこともありましたが、ヘヴィメタルにヘッドレスはミスマッチだったようで現在は見かけることはありません。

KKダウニングのプレイスタイル

グレン・ディプトンが加入してからリフを含めたサイドギターとしてバンドを支えてきましたが、1984年に発売された「Defenders of the Faith」あたりから積極的にソロも取るようになります。

それまでは、どちらかと言えばバッキングに徹していて、たまにソロパートを担当しても曲のテーマ的なものや5度進行によるグレンとのツインリードなどがメインだったのです。
プレイスタイルとしては、初期はブルースを基調とした泣きのギターが特徴でしたが、後期になるとブリティッシュハードロックバンドらしい、ドラマチックでメロディアスなものが増えてきます。

KKダウニングのおすすめアルバム

KK.ダウニングのプレイは脱退後に参加したいくつかのセッションでも聴くことができますが、やはりその本質はジューダス・プリーストにあります。

ジューダス・プリーストは、ヘヴィメタルバンドとしては珍しく、ギターシンセを導入するなど実験的な取り組みを行うことから、作品ごと賛否両論が激しいのですが、やはりオーソドックスなヘヴィメタル色を前面に出したアルバムは高評価を得ています。

バンドとしては5枚目のアルバムにあたる「Killing Machine」はジューダスサウンドを確立した1枚としておすすめできます。発売された国によってはタイトルにもなっている「Hell Bent for Leather」ではこれぞKKと言える激しいリフを、初期の名バラード「Before the Dawn」ではピッキングハーモニクスを多用した素晴らしい泣きのギターを展開しています。

セールス的にもっとも成功し、ダブルプラチナムを獲得した「Screaming for Vengeance」も評価の高いアルバムです。様式美という言葉がヘヴィメタルに使われるようになって久しいですが、1曲目の「THE HELLION」から「ERECTRIC EYE」、「RIDING ON THE WIND」と続く流れは、これぞ様式美というにふさわしい見事な構成になっています。

11枚目のアルバム「Ram it DOWN」には前作「TURBO」で実験的に取り入れられたシンセサイザーが、このアルバムでも大々的に導入されています。よりハードロック的に使用されてはいるものの元来のジューダスサウンドとは違うといった意見もあり、ファンの間でも賛否が分かれる作品です。

しかし、このアルバムのタイトル曲にもなっている「Ram it Down」では、とてもスリリングなKKとグレンのギターの掛け合いを聞くことができます。タイトでヘヴィなリズムに突き刺さるような二人のツインギターがとても印象的な名曲です。

90年台に入ってからのおすすめアルバムになると、やはり「Pain Killer」でしょうか。このアルバムからドラムがデイブ・ホーランドからスコット・トラヴィスに変更されます。それまで、どちらかというと地味な印象が強かったジューダスのドラムですが、KKとグレンの高速リフにシンクロさせるツインバスドラと派手なドラムロールでジューダスの音楽性を一変させました。

グレンやKKのギターも、より一層ドラマチックなものになり、結成30年経ってもさらに進化し続けるジューダスの底力を見せつけた1枚になったのです。
さらなる高みが期待されたジューダスですが、このアルバムを最後にロブ・ハルフォードが一旦バンドを離れ、長い低迷期を迎えることになります。

現在のKKダウニング

2011年、ツインギターの片翼であるグレン・ディプトンとの長年の確執が原因でKKはバンドを脱退してしまいます。一時は2011年のワールドツアーを最後にバンド自体も活動を停止すると発表しましたが、後任に同じフライングVを操るイギリス人のリッチー・フォークナーが抜擢されバンドは活動を継続しています。

皮肉にもその後発売された17枚目のアルバム「Redeemer of Souls」では、KK在籍時に達成することが叶わなかった米チャートのトップ10入りを果たすことになります。

KKは現在、若手ミュージシャンのプロモートの他、いろいろな事業のマネージメントを行うなど精力的に活動していますが、SNSでたびたびジューダスに対するつぶやきを繰り返しており、古巣への復帰を期待するファンも少なくありません。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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