エドワード・ヴァン・ヘイレン:ロック界に革命を起こした天才児

トリッキーなプレイとまさしく爆音のようなサウンドで一時代を築いたヴァン・ヘイレン。
その成功は、デイヴィッド・リー・ロスのカリスマ性とエドワード・ヴァン・ヘイレンのギターテクニックによるものだったことはまちがいありません。
ハードロックバンドでありながらリリースされたアルバムのほとんどでプラチナ以上の売上を上げており、全世界で8,000万枚以上を記録しているスーパーバンド。それがヴァン・ヘイレンなのです。

アメリカを代表するハードロックバンド

ギターのエドワード・ヴァン・ヘイレン、ドラムスのアレックス・ヴァン・ヘイレンの兄弟によって結成されたマンモスというハードロックバンドがヴァン・ヘイレンの前身になります。

当初は、兄のアレックスがギター、弟のエディがドラムスだったのですが、いつの間にかアレックスの方が、ドラムがうまくなってしまったため仕方なくエディがギターを担当することになったのだそうです。
その後、ボーカルにデイヴィッド・リー・ロス、ベースにマイケル・アンソニーを迎え、バンド名を兄弟の名字である「ヴァン・ヘイレン」に改名しロサンゼルスを中心に活動します。
デビューのためのデモテープは、ヴァン・ヘイレンの才能を気に入ったKISSのジーン・シモンズが資金援助して作られており、当時もっとも金のかかったデモテープと言われていました。

ところが、このテープで契約してくれるレコード会社が見つからず、1976年かなりの安売り状態でワーナー・ブラザースと契約することになります。
デビューアルバムは契約から2年後のことで、キンクスの「You Realy Got Me」のカヴァーシングルでデビュー。翌月アルバム「Van Halen」が発売されます。エディのギタープレイが話題を呼び、デビューアルバムとしては異例の大ヒットを記録し。全米最高19位、プラチナディスクを獲得します。

その後も、ストレートなハードロックを中心にアルバムを発売しつづけ、チャートの常連となります。ヴァン・ヘイレンのポリシーとしてシンプルで短い曲にこだわっており、とくに初期の段階では4分を超える曲はほとんどありませんでした。

これは、戦略の一つで、当時のアメリカの音楽シーンは、いかにラジオ局で多くオンエアされるかがヒットバンドに求められるステータスだったのです。
そのため、ポップスのほとんどがラジオでオンエアされやすい、3分前後にまとめられていたのです。

世界的な成功

その後、一時ボーカルがデイヴィッド・リー・ロスからサミー・ヘイガー、さらにはエクストリームのゲイリー・シェローンに交代するなど大きな転換期がありましたが、バンド自体は順調に成長し、なんとファーストアルバムから10枚連続、ライブ盤とベスト盤を加えると12枚連続でプラチナ・アルバムを獲得します。
バンドは1992年にグラミー賞を獲得し、2007年ロックの殿堂入りを果たすことで名実ともにアメリカを代表するトップバンドとりました。

あのKISSのジーン・シモンズが認めた才能

KISSのジーン・シモンズがヴァン・ヘイレンの才能に惚れ込んだお話はしましたが、実はエディの方もKISSに興味を持っていたようです。

1982年のジーン・シモンズのインタビューによれば、当時「Diver Down」を発表したばかりのエディがKISSを訪ね、当時のボーカルだったデイヴィッド・リー・ロスとの不仲を相談し、KISSに加入したいと訴えたと言うことです。
その時、ポール・スタンレーに聴かせたデモテープの中には、なんと「1984」に収録され世界的にヒットした「Jump」を彷彿させる曲も含まれていたと言いますから、かなり本気だったのかもしれません。

もし、ここでKISSのエドワード・ヴァン・ヘイレンが誕生していれば「Jump」はおろか、サミー・ヘイガーが歌った「Why Can’t This Be Love」といった名曲も誕生しなかったのかも知れません。
しかし、その反面、エディが弾く「Love Gun」や「God of Thunder」を聞いてみたかったと思うギターフリークもいるのではないでしょうか?

エディの類まれなるギターテクニックは、デビュー以来多くのアーティストに多大な影響を与えています。
ディープ・パープルの「Smoke on the Water」の歌詞にも出てくるロック界のカリスマ、フランク・ザッパが自分の息子にギターを教えてもらうために直接エディに合わせたエピソードは有名です。
当時のギター少年達はヴァン・ヘイレンの新譜が発売されるたびにエディの新しいテクニックを真似し、それに応えるかのようにエディのテクニックもより高度なものになっていったのです。

ヴァン・ヘイレンの愛機「フランケン」

※EVH Striped Red with Black

ヴァン・ヘイレンがデビューした時に、多くのギターフリーク達がエディの抱えていたストラトキャスターに驚いたものです。

当時はまだ無名だったシャーベル製のストラトキャスターをベースにしたギターは、ハムバッカー1発をマウントされたシンプルなものでした。
しかし、ピックガードは外され、フロントとセンターのピックアップホールはむき出し、配線も丸見えの上、ワンボリュームに変更されたコントローラーの穴もそのままという有りさまで、一見するとジャンクのようなギターだったのです。
バイク用の白いラッカーでラインを引かれた真っ赤なストラトキャスターは、エディ自身に「フランケンシュタイン」と命名されていましたが、つぎはぎだらけの様相はピッタリでした。

しかし、何より驚かされたのが今まで見たこともないトレモロユニットが搭載されていたことです。
今でこそ、当たり前となったフロイドローズ製のトレモロユニットですが、初めて公の登場したのがヴァン・ヘイレンの「You Really Got Me」だったのです。

それもそのはず、フロイドローズのシリアル・ナンバーを確認するとフランケンシュタインに搭載されたものがNo1となっています。ちなみに、No2はジャーニーのニール・ショーン、No3はナイト・レンジャーのブラッド・ギルスとなっています。

当時ジャーニーは、のちにトリプルプラチナムを獲得した4枚目のアルバム「Infinity」を発売しており、ニール・ショーンは名実ともにロック界のトップギタリストでした。そのニール・ショーンを差し置いてシリアル・ナンバーの1が刻まれたフロイドローズを託されたわけですから、いかに卓越した才能の持ち主だったのかがわかります。

その他にもフランケンシュタインには当時としてはかなり画期的な改造が施されていました。ES335のピックアップをリワイヤリングしハウリング防止のためにロウで固めたり、ローズウッドの指板はエディ自ら自身に合うように削られていました。
さらに、より低音が重視されたナチュラルな音が出るように、新品の弦を一度煮てから使うなど独特なこだわりは世界中のギターフリークが真似したものです。

現在では、Dチューナーとよばれる6弦の開放弦をワンタッチでEからDに1音下げるギミックが付け加えられなどさらなる進化を遂げています。

驚異のギターテクニック

今やギター奏法の一つとして定着しているライトハンド奏法を生み出したことでも有名ですが、それ以外にもオリジナルのギターテクニックは枚挙にいとまがありません。

「Mean Street」でのチョッパー奏法、「Dance The Night Away」のタッピングハーモニクス、「ERUPTION」のボリューム奏法などはどれも多くのギタリストに影響を与えたプレイとして有名です。
ファーストアルバムに収録された「ERUPTION」は日々進化を遂げており、2015年に発売された「Tokyo Dome Live in Concert」では究極とも言えるソロプレイを展開しています。

ヴァン・ヘイレンのおすすめアルバム

やはり世界中のロックファンに衝撃を与えたファーストアルバム「Van Halen」は外せません。わずか12小節しかないにもかかわらず「You Realy Got Me」におけるギターソロは今聞いても鳥肌が立つほどすさまじいものです。

そして、エディがはじめてキーボードをプレイしビルボード1位を獲得した「Jump」が収録された「1984」。サミー・ヘイガーを迎え3週連続No1など世界的なヒットを記録した「5150」などもおすすめです。

その他、ヴァン・ヘイレンとしてのアルバムではありませんが、世界でもっとも売れたアルバムとして知られるマイケル・ジャクソンの「Thriller」に収録された「Beat It」では強烈なサウンドと共にすさまじいプレイを披露しています。

ちなみに、「Beat It」で弾いたソロは全てアドリブとのことで印象的なイントロやバックギターはTOTOのスティーブ・ルカサーが担当しています。ジャクソンズのライブにエディが飛び入りし、即興で「Beat it」を演奏した映像は現在でも動画共有サイトなどで見ることができます。

現在のヴァン・ヘイレン

オリジナルボーカルのデイヴィッド・リー・ロスが加わったもののデリケートな問題からベースのマイケル・アンソニーが脱退、現在はエディの実子のウルフギャング・ヴァン・ヘイレンがベースとコーラスを担当しています。
病気や怪我など度重なるトラブルに見舞われているエディですが、そのギタープレイはまだまだ健在でレコーディング、ライブを精力的にこなしているようです。
超人的なギターテクニックに円熟味が増し、もはや向かう所敵なしといった感じですが、本人はまだまだ高みを目指しているようでこれからも目が離せませんね。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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