エリック・クラプトン:ブルースをこよなく愛した人生

エリック・クラプトンは63年からの約10年間でバンドをいくつも渡り歩き、名曲を作曲又はアレンジしてきました。しかしどの曲にも共通している部分がブルースに対する思い入れです。ビートルズを見て「おれはポップではなくブルースで売れる」と言ったエリックの人生をたどります。2018年のクリスマスアルバムでは、EDMにブルースギターを入れる曲を収録しました。未だにクラプトンのブルースは進化し続けています。

ローリング・ストーン誌の選ぶ「最も偉大な100人のギタリスト」では2位を獲得した、誰もが認める名ギタリストエリック・クラプトン。

音楽に興味がない人でも、「Change the World」や「Layla」は聴いたことあるのではないでしょうか。生きていればだいたいの人がクラプトンの音楽を聴きます。そのくらい有名なミュージシャンですが、そこにはブルースに対するこだわりとクラプトンの求める音楽がありました。

音楽との出会いは複雑な家庭環境にあり?

1945年3月のイギリスに生まれたエリック・クラプトン。第二次大戦中ということもあり、幼い頃から苦労がありました。母親は当時16歳で、イギリスに駐留していたカナダ兵と不倫関係の元にクラプトンを授かり、未婚のままクラプトンを出産しました。母はその後すぐ別の男性とドイツで結婚し、クラプトンはレンガ職人の祖父母の元で育てられました。

出生の秘密を隠すように生きてきたクラプトン。ですが、この複雑な家庭環境だったからこそ音楽に触れることができたのかもしれません。年の離れたおじさんが当時のダンスミュージックでもあったスイングジャズを聴いていたのです。幼いながらも音楽に興味を抱いたのはこの時でしょう。

クラプトンも10代になると様々な音楽を聴くようになります。当時はロックンロールがブームとなっていましたが、ロバート・ジョンソンを知ってからはめっきりブルースにのめり込んでいきました。ロバート・ジョンソンのレコードを聴いたのは1961年ごろと言われていますが、この時から自分のギタープレイにどんどんブルースの要素を入れていったのです。

クラプトンはブルースギターを一般の視聴者にも聴きやすくする天才です。ロバート・ジョンソンなどの伝統的なブルースは、一般視聴者にはかなり聴きにくいマニアな音楽と言っても過言ではないでしょう。音楽活動するようになったのが、今から50年ほど前のことなのですが、いまだに「古い」と感じさせないところがすごい!

バンドを渡り歩く若きクラプトン

ヤードバーズで知名度を得る

幼い時からスイングジャズを聴き、そしてロバート・ジョンソンの影響でブルースにのめり込みました。その後1963年にはルースターズというバンドに所属します。しかしわずか数ヶ月で脱退、その後もケイシー・ジョーンズ・アンド・ジ・エンジニアズというバンドにも参加しますが、すぐに脱退してしまいます。

バンドが合わなかったということもありますが、クラプトンはこの2つのバンドでさらなるギターの腕を磨いていったと言っても過言ではないでしょう。そしてこの2つのバンド経験があったからこそ、伝説的なバンド、ヤードバーズに誘われる形で参加するのです。

ヤードバーズが初リリースしたアルバム「Five Live Yardbirds」はライブアルバムとなっているのですが、メンバー紹介の時の拍手喝采がクラプトンの時だけ非常に多いのです。クラプトンがヤードバーズに参加した時には、ヤードバーズは人気になりつつあるバンドでした。クラプトンは後から入ったメンバーであるのにも関わらず、一番の人気を獲得していたのです。

それは紛れもなくギターの腕が関係しているのでしょう。まぁ顔面もイケメンですから、アイドル的な拍手喝采もあったかもしれませんが…。

ヤードバーズに参加したのは1963年ですが、1965年にはヤードバーズを脱退します。理由は、ブルース路線にいきたかったクラプトンに対して、他のメンバーはポップ路線に進もうとしていたからです。

クラプトンはビートルズのライブを見て「おれはポップではなくブルースで売れる」と言ったこともあります。ロバート・ジョンソンを聴いた日から、ブルースにこだわり続けるクラプトンの熱量が伺える発言です。

伝説のバンドであるクリーム結成

ヤードバーズ脱退後はイギリスのブルースギタリストとして重要人物にもあげられるジョン・メイオールのバンドに参加します。しかし一枚のアルバムだけ参加して、すぐに脱退します。せっかくブルースができたのに脱退するところがクラプトンらしい。またこの時には街の壁に「CLAPTON IS GOD」と書かれたことで、クラプトンは「ギターの神」と言われるようになります。

その後即興演奏を中心としたバンドを結成します。それが伝説的なバンドであるクリームです。最高の3人組バンドと言っても良いでしょう。ブルースとサイケデリックロックを融合した音楽は、その後のロック界に多大な影響を及ぼします。

この頃からクラプトンのアレンジ力が爆発し始めます。ロバート・ジョンソンの名曲「Crossroad Blues」を「Crossroads」として演奏。軽快なリフと3人の火花散らせる演奏がクリームの代表曲の1つとなっています。またブルースギターの新たな時代の幕開けを感じさせます。

ブラインド・フェイスから「いとしのレイラ」

クリームはライブでもレコードでも人気を獲得します。しかしメンバー間の不仲からわずか3年で解散するのです。その後のクラプトンは、またバンドを転々とするようになります。

ブラインド・フェイスはクリーム解散後に組まれたバンドであり、クラプトンのベストアルバムでも、ブラインド・フェイス時代の曲が使われています。クラプトンの中では重要なバンドだったのかもしれませんが、ブルース路線のクラプトンに対して、他のメンバーがジャズ路線だったこともあり解散します。アルバムも一枚しかリリースしていません。

その後デラニー&ボニーでの活動や初めてのソロアルバムをリリースします。最初のソロアルバム「ソロ」では、「After Midnight」や「Let It Rain」などの名曲が収録されています。

そしてクラプトンはデレク・アンド・ザ・ドミノズを結成し、クラプトンのベストアルバムとして名高い「Layla And Other Assorted Love Songs」をリリースします。このアルバムに収録されている「Layla」はクラプトンの名曲になり、いまだにライブで演奏されたり、カバーしているバンドがいたりと、人気の曲になっています。

しかしこのアルバムをリリースした後のクラプトンは、ドラックとアルコールの地獄にハマってしまうのです。実は「Layla」という曲は、親友であるジョージ・ハリスンの妻に対して書いた恋の曲だともいいます。クラプトンは親友の妻に恋をしたのです。もちろんこの時に恋は叶いませんでした。

またライバル関係であり、お互いを称え合ったジミ・ヘンドリックスが他界、デレク・アンド・ザ・ドミノズのサポートをしていた、デュアン・オールマンも交通事故で亡くなります。恋や尊敬していた同年代のギタリストの死により、1974年まで音楽活動をほとんど行わなくなってしまうのです。

ブルースの復活

1974年にクラプトンは「461 Ocean Boulevard」を発表します。この中に収録されている「I Shot the Sheriff」はレゲエの神様であるボブ・マーリーのカバーで、世界にレゲエを発信した音楽にもなりました。本家の「I Shot the Sheriff」よりもブルースロック強めの曲に仕上がっていて、クラプトンのブルース愛をとても感じます。

このアルバムで復活を成し遂げたクラプトンはその後も、数々の名曲を誕生させます。「Change the World」や「Tears in Heaven」などは90年代以降に生まれたクラプトンの代表作です。

ブルースに対する思い入れ

クラプトンの歴史をたどっていくと、どんな曲でもブルースの面影を感じることができます。そして意外にも伝統的なブルースより、クラプトンらしい音楽の追求がされていることがわかります。

クリームでは「Crossroads」などのブルースの曲をカバーしながらも、サイケの要素を取り込んだ音楽が特徴です。ブルースの起源は自由に歌いながらセッションするところにあります。クリームは根っからのブルースバンドであり、サイケという新たな音を混ぜた新しいバンドだったのです。

また「Layla And Other Assorted Love Songs」でも当時人気のだったサザンロックに、クラプトンらしいブルースを混ぜ合わせた音楽になっています。クラプトンのブルースのこだわりは伝統的なデルタブルースのような音楽ではなく、自分らしいブルースの追求ということです。

それはボブ・マーリーのカバー「I Shot the Sheriff」でも同じです。レゲエにブルースロックの要素を加えて、クラプトンらしい音楽に仕上げています。そして2018年になり、クリスマスアルバムを発表しました。その中の一曲「Jingle Bells」では、2018年に亡くなったアヴィーチーへの哀悼の曲として収録されています。

今までに聴いたことのないような「Jingle Bells」に仕上がっていますよ。この曲では今まで交えなかったEDMとブルースの融合になっているのです。70歳超えても新しい音楽に挑戦しているのは本当にかっこいい。そしてブルースに対するこだわりを非常に感じます。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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