ジェフ・ベック:飽くなき挑戦と飽き性に見る音楽の進化

ヤードバーズ時代にハードロック、サイケデリックの印象を植え付けたのはジェフ・ベックでした。エリック・クラプトンがヤードバーズを変えることができなかったのに、ジェフにはできたのです。ジェフ・ベックはやりたいことを突き進み、ハード、サイケからジャズやフュージョン、エレクトロなどの要素を取り入れ、進化を続けています。それはジェフが飽き性だから成せた技なのかもしれません。

エリック・クラプトンとジミー・ペイジと並び世界三大ギタリストに選ばれているジェフ・ベック。クラプトンやペイジと比べて、目立った活躍があまり無いようにも感じますが、ギターの腕も人気も両方持ち合わせたギターヒーローです。

この記事では、ジェフ・ベックの音楽に対する探究心と、新たな音楽を生み出すベックの挑戦を見ていきましょう。

ヤードバーズに見るジェフ・ベック

1944年イギリスに生まれたジェフ・ベックは、幼い頃よりピアノを母親から学びます。中流家庭の生まれということもあったので、生活には困らない程度の収入があったのです。ピアノとの出会いが音楽との出会いでもありましたが、10代になると、その当時流行っていたロックンロールを聴き始めるようになります。

友人からもらった3本の弦しか張っていないギターをもらい、そして自分でもギターを作ってしまうのです。自分で作ったギターでも毎日のように練習に明け暮れました。ギターすら自分で作ってしまうような探究心は、ベックの音作りなどにもつながりがありそうです。

そして16歳の頃に初めてのバンドを組みます。それから5年ほど経った1965年になると、姉の紹介で知り合ったジミー・ペイジから、ヤードバーズに加入しないかという誘いを受けます。ペイジは多忙なためにヤードバーズには参加していませんでした。ペイジの代わりという形で、ベックはヤードバーズに加入するのです。

この時のベックは名声が欲しいと考えていました。ヤードバーズはエリック・クラプトンの活躍もあり、人気を獲得していたバンドでした。ベックはヤードバーズに入ることで、自分を知ってもらおうと考えていたのです。

その考えは見事に的中します。この時にはベックは申し分ないギターの腕前を持っていました。そしてそのギタープレイの見せ場にもなったのです。ヤードバーズからエリック・クラプトンが脱退した穴を埋める役割で入ったバックは、最初クラプトンのようにギターを弾いてくれと言われえていたといいます。

しかしベックはその約束を無視し、ヤードバーズがポップ路線に走ろうとしていた方向を、ハード路線、サイケ路線へと変更させるのです。ヤードバーズを代表する曲となった「Train Kept a-Rollin’」はベック時代に取り入れられた曲です。「Train Kept a-Rollin’」はハードロックに大きな影響を与えた曲の1つとしてあげられています。

このことからわかるのは、ベックはリーダーシップをとってバンドを自分色にしてしまうことです。クラプトンがヤードバーズを脱退したのは、クラプトンがブルースを演奏したかった反面、他のメンバーはポップを演奏したかったからです。しかしポップを演奏したかったヤードバーズに加入したベックがハード路線に舵をとってしまったのです。

クラプトンとの違いは、自分勝手にリーダーシップをとって自分のやりたいことをやるところになります。このような自分勝手さが今のトリッキーな奏法を生んだのかもしれませんが…。

ちなみにベックは1年ほどでヤードバーズを脱退します。これも自分勝手であり、ヤードバーズに飽きたからでしょう。

ジェフ・ベック・グループ名義での活動

「自分の好き勝手できるバンド…自分で作ったバンドしかない!」そう思ったジェフ・ベックは、ジェフ・ベック・グループを結成します。これがどのようにメンバーを集めたのか、最強とも言えるようなバンドだったのです。

ジェフ・ベック:ギター
ロッド・スチュワート:ボーカル
ロン・ウッド:ベース
エインズレー・ダンバー:ドラムス

この4人が初期の正式なメンバーだったのですが、常にメンバーチェンジが行われ、他にもビックなメンバーが参加しているのです。

ジミー・ペイジ:ギター
ジョン・ポール・ジョーンズ:ベース
ニッキー・ホプキンス:ピアノ
キース・ムーン:ドラム などなど

ジェフ・ベック・グループ初のアルバムにはこのような名だたるメンバーが参加しているのです。これは本当にモンスターレベルのバンドです。

しかし初期のジェフ・ベック・グループが爆発的に売れるということはありませんでした。三大ギタリストのジミー・ペイジは、レッド・ツェッペリンとして爆発的な人気になっていましたし、エリック・クラプトンはクリームで人気を確立していました。

三大ギタリストの1人と呼ぶにふさわしい人気はまだ得られていなかったのです。

最強ロックトリオ:ベック・ボガート&アピス

ジェフ・ベックは一度、交通事故に遭い音楽活動ができなくなってしまうのですが、第二期のジェフ・ベック・グループを完成させます。以前のメンバーは姿を消し、モンスターレベルのミュージシャンではなくなったものの、二枚のアルバムをリリースします。

この第二期でR&Bやジャズ色の強い音楽を取り入れます。この時の音楽がのちの「Blow By Blow」にも繋がっているのかもしれません。しかしこのバンドも長続きせずに空中分解してしまいます。

この後に組んだ3人組のバンド、ベック・ボガート&アピスが当時「最強ロックトリオ」と呼ばれるようになるのです。元ヴァニラ・ファッジで活躍していたティム・ボガートとカーマイン・アピスの強烈なリズム隊にベックは聴き惚れてしまい、結成に至ったとか。

このバンドはとにかくテクニカルなロックバンドで、ギターだけでなくドラムとベースのリズム隊まで激しい!しかし大きな成功をあげることができずに、バンドは解散します。おそらく、時代が後3年早かったらもっと人気を獲得していたかもしれません。クリームと同じ時期に登場していたら、張り合えるようなバンドだったと思います。非常に残念…。

ソロになってからの挑戦

今までのジェフ・ベックはハード面を強めに押したギターを披露してきました。その中でもR&Bの要素を取り入れてみたり、ジャズを取り入れてみたりといろんな音楽にも挑戦してきました。しかしバンドはどんどん変わるし、長続きしない。また大ヒットした曲もない。そんな中ソロとして活動するようになります。

そして1975年ついにベックの大きな成功を納めたアルバムが発売されるのです。それが名盤「Blow By Blow」です。このアルバムは当時として珍しいインストゥルメンタルアルバムだったのです。そして当時流行っていたフュージョンの要素を色濃く出したアルバムで大ヒットします。

この翌年にも同じコンセプトで「Wired」というアルバムをリリースします。これもインストゥルメンタルアルバムで、ロックとジャズを融合させた新たなサウンドだったのです。このアルバムでエリック・クラプトンやジミー・ペイジと並ぶ人気を得たのでした。

ベックのファンは「Wired」はジェフ・ベックが完成されたアルバムだと言われています。ジェフ・ベックをこれから聴く方はぜひ「Wired」から聴いてみましょう。

この成功のあとは、なぜかアルバム制作に熱を入れることは無くなります。他のミュージシャンのアルバムにゲスト参加するくらいで、目立った音楽活動もしなくなるのです。1985年ぶりにリースした「Flash」ではエレクトロサウンドを聴かせた曲を取り入れますが、ベック自身はあまり気に入っていないと発言しています。

しかしこの時からピック弾きではなく、指弾きを多用していきます。また1989年にリリースしたアルバム「Guitar Shop」でもベースをシンセサイザーに任せるというスタイルに挑戦し、高い評価を得ることに成功します。ハード面は残しつつエレクトロサウンドを取り入れるのがベックらしさを表しています。

その後もテクノサウンドやドラムンベースを取り入れるなど、新たな音楽を発信し続けています。

進化は飽き性から来るのかもしれない

ジェフ・ベックは「飽き性で自分勝手だ」などと思われていますし、実際にそうなのかもしれません。しかし飽き性で次々にメンバーを入れ替えたり、自分勝手がゆえに新たな音を取り入れたりしているようにも見えます。

しかし、彼はギターのレジェンドとなった今でも新たな音楽に挑戦し続けています。普通は、ヒット曲をリリースして一度頂点に立ったら、音楽路線変更は怖くてできないものです。それは成功するのか失敗するのかわからないからです。だからこそ挑戦し続ける姿勢がかっこいいのです。

2016年にリリースしたアルバムでは、女性のミュージシャンを起用し、ハードロックなベックの超絶ギターを聴くことができます。そのトリッキーなプレイスタイルは、のちのギタリストでも真似できるものがほとんどいないこともあり「孤高のギタリスト」なんて呼ばれています。

これから先もベックにしかできないサウンドを聴かせてくれるでしょう。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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