ウォルター・サレス:『モーターサイクル・ダイアリーズ』を制作した映画監督

この記事では亡命者とアイデンティティを作品のテーマとして数々の作品を手がけており、またドキュメンタリー作品でも高い評価を受けていることで知られるウォルター・サレスの人生と、彼の作品についてご紹介します。

■ウォルター・サレスとは

※リオ・デ・ジャネイロの景観
※南カリフォルニア大学

ウォルター・サレスは1956年の4月12日にブラジルのリオデジャネイロに生まれました。父親はブラジルの銀行家で政治家でもあるウォルター・モレイラ・サレスであり、彼はとても裕福な家庭で育ちました。幼いころから芸術や映画に関心を持っていたサレスは南カリフォルニア大学映画学部に進学しています。1995年に発表した『異国』では地元の映画評論家たちの間で広く称賛され、40以上の国際映画祭に選出されました。

その後1998年に発表した『セントラル・ステーション』はアカデミー賞の主演女優賞と外国語映画賞にノミネートされたほか、ゴールデングローブ賞では最優秀外国語映画賞を獲得しています。ブラジル人がこの賞を獲得したのはこれが初めてのことでした。また2003年にはガーディアンによって世界の映画監督40人のひとりに選ばれたほか、のちにチェ・ゲバラとして知られることになる若きエルネスト・ゲバラを追った『モーターサイクル・ストーリーズ』を発表し、大ヒット。彼の名声は世界的に広まることとなりました。

■ウォルター・サレスの作品

彼の作品は亡命者やアイデンティティをテーマとしていることで有名です。登場人物の孤独と向き合い、自らのアイデンティティを探し求める様は、まさに現代社会に求められているテーマであり、高く評価されています。

そんなウォルター・サレスの作品には、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品についてご紹介します。

・『モーターサイクル・ダイアリーズ』 2004年

『チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記』を映画化した作品です。音楽性も高く評価され、2004年にはスペイン語の楽曲としては初めてアカデミー歌曲賞を受賞しました。

1952年1月4日、アルゼンチンのブエノスアイレスに住む医大生エルネストは喘息持ちにもかかわらず、先輩で放浪癖のある生化学者のアルベルト・グラナードとともに1万2千キロにわたる南米大陸横断旅行にでかけます。途中恋人に会ったり、バイク事故にあったり、また先住民やハンセン病患者との出会いなどさまざまな出来事を通して2人は南米社会の現実を思い知らされることになります。

・『セントラル・ステーション』 1998年

1998年に制作された作品で1998年ベルリン映画祭金熊賞、主演女優賞を受賞したほか、第71回アカデミー主演女優賞にノミネートされたことでも話題になりました。

・『ビハインド・ザ・サン』 2001年

2001年に制作され、ブラジル北東部の砂地に住む家族の壮烈な争いを描いた作品です。2002年にはヴェネツィア国際映画祭若手審査委員賞を受賞したことでも話題になりました。

・『ダーク・ウォーター』 2005年

鈴木光司原作の日本映画『仄暗い水の底から』のハリウッド・リメイク作品で、2005年に制作されたホラー作品です。

幼少期の出来事がトラウマになっているダリアは、太鼓のような音色と共にその時の記憶がフラッシュバックしてくるという現象に苦しめられていました。さらに彼女とその夫カイルは現在離婚調停中であり、娘のセシリアの親権を争いながら、仕事や新しい住居を探さなければならないというプレッシャーに晒されてもいました。

そうしてようやく彼女とセシリアはニューヨークのはずれにある古いアパートに移り住みます。少々不気味な部屋だったものの、セシリアとの生活を守りたいという強い思いがあり、賃貸契約を結んだのでした。しかし平穏な日々は長く続くことはなく、次第に不可思議な現象が頻発するようになります。日々大きくなっていく天井のシミ、誰もいないはずの上階から物音が聞こえたり、セシリアは見えない誰かと会話をするようになってしまいます。次第に彼女は精神的に追い詰められることになっていくのでした。

■おわりに

ウォルター・サレスは1956年にブラジル・リオデジャネイロに生まれた映画監督であり、『セントラル・ステーション』や『ビハインド・サン』、そして若きチェ・ゲバラを描いた『モーターサイクル・ダイアリーズ』を制作した映画監督です。サレスは亡命者とアイデンティティの追求を映画製作のテーマとしており、作中では登場人物の孤独や不安などに焦点が当てられました。

サレスはブラジルの若手監督たちの中では積極的にプロデューサーを務めている人物でもあり、ブラジルの映画業界を牽引する人物の一人といえるでしょう。また監督としてもどのような作品を発表するのか、今後が期待されます。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

関連記事一覧