ガス・ヴァン・サント:『エレファント』『ミルク』を制作した映画監督

ガス・ヴァン・サントは1952年7月24日アメリカ合衆国ケンタッキー州ルイビルに生まれた映画監督です。ロジャー・コーマンのもとで助手として働いたのち、1985年には映画監督としてデビュー。その後は『エレファント』や『ミルク』といった作品を制作し、高い評価を得ました。そんなガス・ヴァン・サントの人生と作品について詳しく解説していきます。

■ガス・ヴァン・サントとは

ガス・ヴァン・サントは1952年7月24日アメリカ合衆国ケンタッキー州ルイビルに生まれました。ガスの父親は衣料品メーカーのセールスマンであり、ガスは父親の仕事のため住む場所を転々とせざるを得ませんでした。その後コネチカット州のダリエン高校やオレゴン州ポートランドのカトリン・ガベル校で学んだ後、芸術への関心の高まりから1970年にはロートアイランド・デザインスクールに進学。当初は絵画を学んでいたものの、様々な前衛的な監督との出会いに触発され、専攻を映画に変えることになります。

卒業後はしばらくヨーロッパで過ごし、1976年にはロサンゼルスに居を移します。その際ケネス・シャピロの制作アシスタントとして働いたものの、功績を残すことはできませんでした。その後、ハリウッド大通りの荒れ果てた地域の住人たちを観察することに時間を費やすようになり、1985年には社会からはみ出した人々に焦点を当てた『Mala Noche』で長編映画監督としてデビューします。

現在に至るまで映画製作以外にも幅広く活躍しており、1995年には写真集を、1997年には小説を出版しています。また、ミュージシャンとしてアルバムをリリースするなど、その活動は多岐にわたっています。

■ガス・ヴァン・サントの作品

ガス・ヴァン・サントの作品の特徴は、ミュージック・ビデオなどを手がけた経験から質の高い映画音楽を取り入れている点、そして自らのアイデンティティをテーマとしている点といえるでしょう。『マラノーチェ』『ドラッグストア・カウボーイ』『マイ・プライベート・アイダホ』からなる、自らが青年時代を過ごしたポートランドを舞台にした「ポートランド三部作」を制作したほか、2008年にはゲイの政治家ハーヴェイ・ミルクを描いた『ミルク』が公開されています。同作はガス自身がゲイであることを公表していたこともあり、大きな話題となりました。

そんなガスは、どのような作品を制作してきたのでしょうか。代表作をいくつかご紹介します。

・『サイコ』 1998年

本作品は1998年に制作されたホラー映画で、アルフレッド・ヒッチコック監督によるサスペンスの古典『サイコ』のリメイクにあたります。ロバート・ブロックの同名作を原作に現代風のアレンジを加えたことで話題になりました。

主人公のマリオン・クレインは、ボーイフレンドのサム・ルーミスを借金から解放するために、社長から40万ドルを盗みます。彼女は車でアリゾナ州フェニックスから逃亡し、カリフォルニアにあるサムの家に向かう途中、激しい嵐に見舞われ、ベイツ・モーテルで一夜を過ごすことにしました。オーナーのノーマン・ベイツは、母親と二人で暮らしており、新しくできた他のモーテルに客がとられてほとんど仕事がないと言います。

食事をした後、マリオンはモーテルの自室でお金を返すためにフェニックスに戻ることを決意します。使ったお金をどうやって返済するかを計算した後、シャワーを浴び始めた時、ノーマンの母親らしき女性がバスルームに入り、マリオンを刺し殺してしまいます。彼杵、死体を見つけたノーマンは彼女の持ち物を車のトランクに詰め、その車に彼女を乗せて沼に沈めてしまいました。

一歩、マリオンの雇用主から彼女を見つけてお金を取り戻すように雇われた私立探偵のミルトン・アーボガストから連絡を受けたサムとマリオンの妹ライラは、マリオンの行方を追って、ベイツ・モーテルまでたどり着きますが・・・。ラストに向けてノーマンの謎が渦巻く作品になっています。

・『ミルク』 2008年

本作品は2008年に公開された伝記映画で、自らゲイであることを公表した活動家ハーヴェイ・ミルクの生涯を描いています。第81回アカデミー賞では作品賞を含む8部門にノミネートされ、主演男優賞と脚本賞を受賞したことで話題になりました。

まだ同性愛が市民権を得ていなかった時代、ハーヴェイ・ミルクは自らゲイであることを公表するとともに、同性愛者の公民権獲得や地位向上のための活動をはじめていました。ミルクの活動は同性愛者支援にとどまらず、黒人やアジア人、高齢者、下級労働者など社会的弱者の救済にも及んでいました。支持者は着実に増えていっていたものの、同時に強い反発も生んでいきます。ミルクはいつしか身の危険を感じるようになり、ある日テープレコーダーに遺言を記録し始めるのでした。実在した人物の、最後の八年間を描いています。

・『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』 1997年

本作品は1997年に公開されたヒューマンドラマ映画で、天才的な頭脳を持ちながらも幼いころに追ったトラウマから逃れられない青年と、最愛の妻に先立たれた心理学者との交流を描いています。無名の俳優であったマット・デイモンが脚本を執筆して高く評価された作品であり、アカデミー賞やゴールデングローブ賞で脚本賞も受賞しています。

フィールズ賞受賞者でマサチューセッツ工科大学数学科教授のジェラルド・ランボーは、数学科の学生たちに代数的グラフ理論の難問を出します。優秀な学生たちが悪戦苦闘する中、アルバイト清掃員として働く孤児の青年ウィル・ハンティングが正解を出し、回りを驚かせたのでした。

ランボーはウィルの非凡な才能に目を奪われその才能を開花させようとするものの、ウィル自身は喧嘩をしては鑑別所入りを繰り返す素行の悪い青年でした。ランボーはウィルを構成させるべく、さまざまなカウンセラーを紹介するものの、いいようにあしらわれてしまっていました。このため、ついに不仲であったバンカーヒル・コミュニティ・カレッジの心理学の講師であるショーン・マグワイアに依頼をします。徐々にショーンとウィルは心を打ち溶けあうようになり、ウィルは大きな成長を遂げることになります。2014年にはハリウッド・リポーターの「100 Favorite Film(100のお気に入り映画)」で53位にランクインした人気作品です。

■おわりに

ガス・ヴァン・サントは1952年にアメリカ合衆国ケンタッキー州ルイビルに生まれた映画監督で、自らの生まれ育ったポートランドを舞台にした「ポートランド三部作」のほか、ゲイであることを公表し制作に携わった『ミルク』など数多くの作品を制作しました。

ここ数年毎年のように新作を発表しているガスですが、今後はどのような作品を届けてくれるのでしょうか。今後の活躍がますます期待されます。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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