キム・ギドク:韓国を代表する映画監督

キム・ギドクは1960年12月20日、韓国の慶尚北道奉化郡で生まれた映画監督です。絵画の勉強のためにフランスに渡った際に見た『羊たちの沈黙』や『ポンヌフの恋人』に感銘を受け、その後は脚本の執筆に没頭。『うつせみ』や『アリラン』などで国内はもちろん海外でも高く評価される映画監督となりました。そんなキム・ギドクの作品には、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品についてご紹介します。

■キム・ギドクとは

キム・ギドクは1960年12月20日に韓国の慶尚北道奉化郡に生まれました。17歳から工場で働き始め、20歳のときには海兵隊に志願し、5年間を軍隊で過ごすことになります。1990年には絵画の勉強のためにフランス、パリにわたることになりますが、その際映画館で見たジョナサン・デミの『羊たちの沈黙』やレオン・カラックスの『ポンヌフの恋人』などに感銘を受け、映画監督を志すようになっていきました。

帰国後は脚本の執筆に没頭します。1996年には『鰐~ワニ~』を低予算で制作し、映画監督デビュー。また、2000年の『魚と寝る女』や2001年の『受取人不明』はヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門に出品され、ヨーロッパを中心に高い評価を得るようになっていきました。それに比例するように韓国国内でも評価を得るようになり、2001年の『悪い男』は大ヒットを記録して第52回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品されています。2003年には『春夏秋冬、そして春』で韓国映画最大の栄誉である大鐘賞と青龍賞の作品賞を受賞し、韓国映画史上最大のヒットを記録しました。

そうして韓国国内はもちろん海外においても高く評価されるようになったギドクでしたが、2008年に『悲夢』を撮影中、自殺未遂のシーンで女優があやうく命を落としかけるという事故に遭遇してショックを受け、映画製作が困難な状況に陥り、その後は3年間隠遁生活を送るようになります。

2011年には隠遁生活中の自身の姿を撮影したドキュメンタリー『アリラン』を発表し、第64回カンヌ国際映画祭のある視点部門作品賞を受賞。その後は韓国国内を中心に精力的な制作活動を送っています。

■キム・ギドクの作品

キム・ギドクの作品の特徴は韓国における社会問題をテーマとし、登場人物たちの心情を丁寧に描き切ることで、物語に深みを与えている点でしょう。また陰影や自然を取り入れた風景描写なども美しく、韓国はもちろん世界的にも質の高い映像表現を生み出している映画監督といえます。

そんなギドクは、どのような作品を制作してきたのでしょうか。代表作をいくつかご紹介します。

※画像はイメージです

・『魚と寝る女』 2000年

本作品は2000年に公開されたスリラー映画で、第57回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門に出品されました。国際映画祭で耽美な映像表現が称賛された一方で、何点かのシーンに衝撃を受けて嘔吐したり失神したりする観客もいたといわれており、議論を呼んだ作品です。

釣り堀の管理人であるヒジンは客に食べ物を差し入れたり、売春したりすることで生活を送っていました。そこにヒョンシクという元警官の男がやってきます。ヒョンシクは恋人を殺した罪を背負っており、釣り針を飲み込んで自殺を図ってしまいます。ヒジンは針をペンチで抜いてヒョンシクを助けますが、それをきっかけに2人は関係を持つようになり、次第に破滅へと向かっていくことになります。

※画像はイメージです

・『受取人不明』 2001年

本作品は2001年に公開された戦争映画で、第58回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門に出品されました。

舞台は1970年代、韓国の米軍基地のある村で、黒人のアメリカ兵とのハーフであるチャングクは母親と二人で暮らしていました。母親はアメリカに帰国したチャングクの父親にチャングクの写真を同封した手紙を出すものの、手紙は「受取人不明」の判を押されて帰ってきてしまいます。一方、玩具の銃で右目を失明したウノクは朝鮮戦争で戦死した父親の年金と母親の内職で生活していましたが、米軍基地内の病院で目を直してもらう希望をもっていました。監督の生前の実話や、知る人ぞ知る実話をもとに作られている作品です。

※画像はイメージです

・『サマリア』 2004年

本作品は2004年に公開されたドラマ映画で、第54回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞しました。

主人公は、女子高生のヨジンとジェヨン。二人はヨーロッパ旅行に行くお金を集めるために、チャットで知り合った男たちと援助交際をしています。ヨジンがジェヨンのふりをして男たちとチャットをし、電話をかけて会う約束を取り付け、ジェヨンがラブホテルに向かい援助交際をするという日々を送っていましたが、顔も知らない男たちと会って性行為に及ぶことに意味を見出すジェヨンをヨジンは理解することができませんでした。

しかし、ある日ラブホテルで男と会っていたジェヨンは、突然押し入った警察から逃げようとして窓から落ち、亡くなってしまいます。ジェヨンの死に大きな衝撃を受けたヨジンは手帳に記された男たちを順番に尋ねていき、援助交際でジェヨンがもらったお金を返していきました。その中で男たちは安らぎを得るようになり、ヨジンもまたジェヨンと同じように男たちとの関係に意味を見出すようになっていくのです。

※画像はイメージです

・『うつせみ』 2004年

本作品は2004年に公開されたロマンス映画で、主人公の2人がほとんどセリフを発することのない無言劇であることで大きな話題になりました。

主人公は、高学歴で高級な外国ブランドのバイクを乗り回しているテソク。彼は留守宅を探しては寝泊まりする日々を送っています。その手段は、家のドアにチラシを貼り、しばらくしてもチラシがはがされない家に忍び込むというもので、入り込んだ先ではその家の洗濯物を洗い、壊れた電気製品があれば直し、記念写真を撮るというものでした。

ある日、テソクが忍び込んだ大きな邸宅でいつものように一人の時間を過ごしていたものの、その家に住んでいたソナに見つかってしまいます。ソナは傲慢な夫との生活に疲れ果てており、テソクに導かれて家を出ては二人で留守宅を転々とする生活を送るようになります。しかしそんな生活も長くは続かず、テソクは逮捕され、ソナは家に連れ戻されてしまいます。

テソクは牢獄で看守の目から身を隠す修練を重ねるようになり、やがてテソクはソナの目にしか映らない存在になっていきました。そして、釈放されたテソクはソナの家で影のように暮らすことになります。

■おわりに

キム・ギドクは韓国の慶尚北道奉化郡に生まれた映画監督で、工場労働者、軍隊などさまざまなキャリアを経て映画監督になった人物です。『魚と寝る女』や『受取人不明』といった初期の作品が海外で認められるとヨーロッパを中心に評価が高まり、韓国国内でも爆発的なヒットを記録したことで、韓国を代表する映画監督となりました。

今後キム・ギドクはどのような作品を発表するのでしょうか。今後が期待されます。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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