ジャン・コクトー:「芸術のデパート」と呼ばれた人物


(Public Domain /‘Jean Cocteau (1889-1963)’ by Agence de presse Meurisse. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

ジャン・コクトーは1889年7月5日、フランス共和国のイヴリーヌ県メゾン=ラフィットに生まれた映画監督です。詩人、小説家、劇作家、評論家として活躍する一方、画家、映画監督、脚本家としても活躍し、「芸術のデパート」と呼ばれました。そんなジャン・コクトーの人生と作品について詳しく解説していきます。

(Public Domain /‘Portrait of Jean Cocteau’ by Federico de Madrazo y Ochoa. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

■ジャン・コクトーとは

ジャン・コクトーは1889年7月5日フランス共和国イヴリーヌ県、メゾン=ラフィットに生まれました。幼いころから図工に秀でており、高校時代はマルセル・プルーストの影響を受けて文学に没頭していました。その一方、大学受験に失敗してしまい、進学を断念します。

1909年には自費で詩集『アラディンのランプ』を発表。このころ、ディアギレフのバレエ団「バレエ・リュス」を通じてココ・シャネルをはじめとした多くの人物と出会うことになり、交流を深めていきました。1915年にはモディリアーニをはじめとするモンパルナスの画家たちと交流が始まり、モイズ・キスリングやパブロ・ピカソ、アンリ=ピエール・ロシェといった著名な画家たちとも親しくなっていきます。1917年にはピカソやサティと手掛けたバレエ『バラード』を初演し、芸術家たちと交流しながら共同制作に取り組んでいました。

(Public Domain /‘Jean Cocteau’ by Amedeo Modigliani. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

しかし、1926年にはシュルレアリストたちと激しく対立することになってしまいます。そんな中1929年には『恐るべき子どもたち』を執筆。1930年にはド・ノアイユ子爵の援助により映画『詩人の血』を発表しています。

バレエや詩、小説などに取り組んでいたコクトーでしたが、1946年には代表作となる映画作品『美女と野獣』を発表しています。その後もさまざまな作品を発表し、1960年には「詩人の王」に選ばれるなど、まさに芸術家を代表する人物となっていました。

1963年、歌手で親友のエディット・ピアフががんによって亡くなったことにショックを受け、その日の夜心臓発作を起こして急死。74歳の生涯を閉じることとなりました。

■ジャン・コクトーの映画作品

ジャン・コクトーがはじめて発表した映画作品は1932年の『詩人の血』でしたが、戦後には『美女と野獣』『オルフェ』といった議論を呼ぶ作品を次々と発表し、戦後のフランス映画を牽引しました。コクトーの映画作品はシュルレアリスムを思わせるものであり、自身の詩や小説をそのままイメージ化したものも多くみられます。これはコクトーが何よりも詩人と呼ばれることを望んだため、映画にも詩的なイメージを付与したかったのだと考えられています。

そんなコクトーは、どのような作品を制作してきたのでしょうか。代表作をいくつかご紹介します。

※画像はイメージです

・『美女と野獣』 1946年

本作品は1946年に公開されたファンタジー・ロマンス映画で、かつてJ・L・ド・ボーモン夫人が執筆し、1756年におとぎ話の一端として発表された説話を映画化しています。ベル役にはジョゼット・デイ、アヴナン役にジャン・マレーといったスターが結集したことで話題になりました。

主人公のベルが自宅の掃除に勤しんでいたところ、兄の友人であるアヴナンに求婚されます。家で父との生活がしたかったベルはアヴナンを拒絶しますが、その夜父の船は難破してしまい、家族の財産もすべて失われてしまいます。

ある日、ベルの父が帰宅し、明日ついに莫大な財産を取り戻すことができると喜んでいる様子を見せます。一方、ベルの頼りない兄リュドヴィクは、自身の借金を支払うことができないならば父親を告訴する権利を与えるという契約にサインしていました。この契約によって、ベルの父は港に到着する財産は負債を精算するために押収されたことを知り、失意のどん底に突き落とされてしまいます。

※画像はイメージです

そんなベルの父は森で道に迷い、門がある大きな城にたどり着きます。その門とドアは魔法のように開き、そこで魔法にかけられた燭台によってごちそうのある食卓に案内され、眠りこけてしまいました。しばらくして、ベルの父は大きなうなり声によって目を覚まし、城の庭を歩き回ります。そこでベルがバラを欲しがっていたのを思い出し、バラを木からむしり取ってしまいますが、そこに野獣が現れ、バラを盗んだ罪で処刑すると言い渡されてしまいます。

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・『オルフェ』 1950年

本作品は1950年に公開されたファンタジー・ロマンス映画で、ギリシア神話のオルフェウス伝説から着想を得てコクトーが脚本を執筆しています。1950年にはヴェニス国際映画祭監督賞を受賞しました。

フランスの詩人オルフェウスは、若き詩人セジェストがオートバイにはねられて殺されたところに居合せ、優雅で神秘的な「王女」と呼ばれる女性と出会います。彼女は廃墟と化した別荘に住んでおり、そこで無線で暗号化された指示を受けていました。オルフェウスはこの指示に魅了され、その解読に全力を尽くし、妻のエウリュディケ無視してしまいます。この間に王女はオルフェウスに恋をしてしまい、命令を無視してエウリュディケが白バイ警官に轢かれるのを許してしまいます。

オルフェウスは運転手のウルトビーズと共に、エウリュディケを取り戻すために死の国へと向かいました。そこで彼は、王女が不服従の罪で最高裁判所の裁判にかけられていることを知ります。オルフェウスはエウリュディケを生き返らせる許可を得ますが、地上に出るまで二度と妻を見ることは許されませんでした。しかし、絶望したエウリュディケはもう一度死ぬことを決意し、夫に自分を見てもらうことを強要します。また、その時セジェストの仲間たちが介入して口論が起こり、オルフェウスは射殺されてしまいます。王女は死の国の入口でオルフェウスを待っていましたが、自分の恋を実らせることを諦め、エウリュディケと一緒に行動できるように、オルフェウスを生き返らせてもらうようにするのでした。

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・『ルイ・ブラス』 1948年

本作品は1948年に公開されたドラマ映画で、ヴィクトル・ユーゴーの戯曲を映画化した作品です。

物語の中心となるのは、求婚を断られた復讐のために高官のドン・サリュストが女王マリアに仕掛けた罠です。奴隷の一人であるルイ・ブラスが密かに彼女に恋をしていることを知ったサリュストは、彼を貴族ドン・セザールだと偽って宮廷に連れて行きます。知性的で寛大なブラスは人気者になり、首相に任命され、女王の心を掴みました。一方、サリュストは復讐を果たすために残酷なまでにブラスを辱めることで、真実を明らかにしてしまいます。王妃を守るためにブラスはサリュストを殺し、毒を盛って自殺することを決意します。死の淵に立たされた彼は、王妃の許しを得て、王妃への愛を公然と宣言するのでした。

■おわりに

ジャン・コクトーはフランス、パリ近郊の小さな町であるメゾン=ラフィットに生まれた芸術家です。詩人や小説家、劇作家のほか、画家、映画監督としても活躍し、「芸術のデパート」と呼ばれました。コクトー自身が詩人と呼ばれることを望んでいたためか、コクトーの映画作品はシュルレアリスム的、かつ詩的に仕上がっています。

詩人として注目されることが多いジャン・コクトー。ぜひ彼の映画作品にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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