ジャン=リュック・ゴダール:ヌーヴェル・ヴァーグの旗手

ジャン=リュック・ゴダールは1930年12月3日に生まれた映画監督です。はじめは映画批評家としてそのキャリアをはじめたものの、1959年の『勝手にしやがれ』でヌーヴェル・ヴァーグの旗手として注目されるようになりました。その独創的なカメラワークや大胆な編集方法は、のちの映画監督たちに大きな影響を与えたといわれています。そんなジャン=リュック・ゴダールの人生と作品について詳しく解説していきます。

■ジャン=リュック・ゴダール

ジャン=リュック・ゴダールは1930年12月3日、フランス共和国のパリに生まれました。父はフランス人銀行家であり、母がスイス人であったため、ゴダール自身は二重国籍者です。子ども時代はスイスのヴォー州ニヨンのコレージュで過ごしました。1949年の秋からはパリ大学に進学し、エリック・ロメールが主催する「シネクラブ・デュ・カルティエ・ラタン」に参加。ジャック・リヴェットやフランソワ・トリュフォー、ジャン・ドマルキらと出会い、映画人との親交を深めていくようになっていきました。同年、ジャン・コクトーとアンドレ・バザンが主催した「呪われた映画祭」にも参加しています。

1951年4月に創刊されたアンドレ・バザン編集の『カイエ・デュ・シネマ』の執筆に参加するようになり、映画批評家としてのキャリアをはじめていきました。1954年には短編『コンクリート作業』を脚本・監督し、1958年までにはトリュフォーとの共同監督作品『水の話』を含めた数編の短編を監督。その後1959年には初の長編映画作品『勝手にしやがれ』を監督し、ジャン・ヴィゴ賞やベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞しました。その後も『気狂いピエロ』や『ジェーンへの手紙』といった作品を制作。戦後のフランスにおける芸術運動ヌーヴェル・ヴァーグの旗手として注目されるようになっていきました。

2006年にはパリのポンピドゥー・センターで初の個展が開かれたほか、同会場で上映するための『偽造旅券』を発表。2010年にはそれまでの功績が称えられ、第83回アカデミー名誉賞を受賞しています。2018年には第71回カンヌ国際映画祭にて、カンヌ国際映画祭粉砕事件50周年を記念した特別賞「スペシャル・パルム・ドール」を受賞しました。現在も2年に一本のペースで作品を発表し続けており、フランス映画界における重鎮として存在感を示しています。

■ジャン=リュック・ゴダールの作品

ゴダールの作品の特徴は、ヌーヴェル・ヴァーグの特長ともいえる即興演出や同時録音、ロケーションを重視している点でしょう。こうした表現は当時としては非常に画期的なもので、フランス映画界における新しい文化を開かせたといえます。

そんなゴダールは、どのような作品を制作してきたのでしょうか。代表作をいくつかご紹介します。

※画像はイメージです

・『勝手にしやがれ』 1960年

本作品は1960年に公開された犯罪映画で、ゴダールの初長編映画にあたります。時間の経過を無視して同じアングルのショットをつなぎ合わせるジャンプカットや手持ちカメラでの街頭撮影、唐突なクローズアップなど、それまでの映画文法を破壊したともいえる斬新な表現が用いられた、映画史に残る作品となりました。

ハリウッド俳優のハンフリー・ボガートを好むミシェルはマルセイユで自動車を盗み、追ってきた警察官を射殺してしまいます。パリにたどり着いたもののミシェルの懐はさみしいもので、アメリカ人のガールフレンド、パトリシアと行動を共にすることになります。

最後にはパトリシアが二人で逃げることをあきらめ、警察に通報しまいます。劇中何度も出てきた「デグラス(最低)」という言葉を最後にミシェルがいい、パトリシアは刑事に「彼は何といったの」と聞きますが、あなたは本当にデグラスだと彼は申していました」と伝えられます。パトリシアはフランス語で「デグラスってなに?」と聞き返し、物語は幕を閉じるのです。

※画像はイメージです

・『女は女である』 1961年

本作品は1961年に制作されたコメディ映画で、ゴダールの長編3作目にあたります。第11回ベルリン国際映画祭で金熊賞にノミネートされたのち、コンペティションで正式上映。銀熊最優秀女優賞をアンナ・カリーナが、銀熊特別賞をゴダールが受賞しました。

主人公のエミールはパリの小さな書店に勤める青年です。コペンハーゲンから来たばかりで、フランス語の「R」がうまく発音できないアンジェラと一緒に暮らしています。ある日、アンジェラが突然子どもが欲しいと言い出しますが、2人の意見が合わず、アンジェラは「それなら他の男に頼む」と啖呵を切ってしまいます。エミールは動揺するものの、勝手にしろと答えてしまいます。

アンジェラはアパルトマンの下の階に住んでいる、駐車場のパーキングメーター係のアルフレードに頼むと宣言。もともとアルフレードはなにかとアンジェラにちょっかいを出しており、それをきっかけにふたりはついに関係を持ってしまいます。深夜、アンジェラはエミールのいるアパルトマンに戻ってくるものの、ふたりはベッドで黙り込んでしまいます。そこで、エミールは自分の子どもを作ってみようと決意するのです。

・『気狂いピエロ』 1965年

本作品は1965年に公開された犯罪映画で、ヌーヴェル・ヴァーグを代表する作品の一つといわれています。

不幸な結婚をした主人公のフェルディナンドは、最近テレビ放送会社をクビになったばかり。周りから「ピエロ」と呼ばれていました。退屈な毎日から逃げ出したい衝動にかられたフェルディナンドは、妻子と中産階級の生活を捨て、偶然出会った昔の恋人マリアンヌとともに一夜を過ごしてしまいます。

その翌朝フェルディナンドは見知らぬ男の死体を発見してしまい、マリアンヌがギャングに追われていることをすぐに知り、2人はかろうじて逃げ出します。パリから地中海まで、死んだ男の車に乗って犯罪の旅に出るのでした。

■おわりに

ジャン=リュック・ゴダールは1930年、フランスのパリに生まれた映画監督であり、トリュフォーやシャブロルと並ぶヌーヴェル・ヴァーグの旗手としてフランス映画界を牽引した人物です。独創的なカメラワークや大胆な編集技法はその後の映画表現に革命をもたらすことになり、20世紀におけるもっとも重要な映像作家のひとりといわれています。

現在でもほぼ2年に1本のペースで作品を発表し続けており、旺盛な創作意欲を保ち続けているゴダール。ぜひゴダールの世界観に浸り、そのクリエイティビティを感じてみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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