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ノーベル生理学・医学賞 2007年 マーティン・エヴァンズ:ES細胞の培養法を樹立し、再生医療の未来を照らした研究者

マーティン・エヴァンズはイギリス出身の生物学者です。2007年にノックアウトマウスの作製に成功した功績によりノーベル生理学・医学賞を受賞しました。ノックアウトマウスとは特定の標的遺伝子だけを選択して機能を停止させた実験動物のことです。同じくノックアウトマウスに関する研究を行った遺伝学者であるマリオ・カペッキと遺伝学者であるオリヴァー・スミティーズも同時受賞しています。そんなマーティン・エヴァンズの受賞までの道のりについて詳しく解説していきます。

◆彼の生年月日と生まれた町について

マーティン・エヴァンズは1941年1月1日にイギリスのグロスタシャー州にあるロングボローで生まれました。

グロスタシャー州はイギリスの南西部にある都市で、ロングボローはグロスタシャー州の中心地から車で約40分のところに位置している小さな村です。この村は別荘やセカンドハウスとしても利用されており、教会や学校、レストラン、ショップなどの設備も整っています。またオペラハウスが有名で毎年6月と7月に「ロングボロー・フェスティバル・オペラ」が開催されており、静かで美しい田園の中で行われるオペラは観光客を魅了しています。

◆幼少期や学生時代

エヴァンズは機械工房を経営する父と教師をしていた母との間に生まれ、好奇心旺盛であった彼はさまざまな本を読み化学に興味を持ちます。そして大学入試のための予備校に通い動物や科学、宇宙論などを教える牧師のクラスで学びを深めました。その後、ケンブリッジ大学クライスツ・カレッジへ入学しますが、植物学と生化学に注力するようになり生物学者であったシドニー・ブレンナーのセミナーに参加し、なかでも分子生物学の創設者の一人であるジャック・モノーの講義には大きな影響を受けたと語っています。

1963年にエヴァンズはケンブリッジ大学の学士号を取得し卒業しますが、腺熱に罹っていたために大学院進学と助成金獲得のチャンスを逃してしまいます。しかし「脊椎動物の発生の遺伝的制御を研究したい」という希望を叶える道を探していきました。

◆受賞に至るまでの逸話など

その後、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンでエリザベス・M・デューチャー博士の研究助手として勤務することが決まり、研究技能を学びながら博士号を目指すこともできる幸運な環境であったとのちにエヴァンズは語っています。

当時のエヴァンズの目標は「発生制御されたm-RNAの分離」でしたが、生化学的に分析するための材料が不足していることや予見可能な遺伝学の知識が少ないことから、マウス奇形癌を調べることを提案されます。そして精力的に研究を行い1969年に博士号を取得しました。

その後、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで解剖学と発生学部門の講師として勤務しますが、研究者としての将来を考えた結果1978年にケンブリッジ大学の遺伝学部に移る決意をします。そしてケンブリッジ大学で遺伝学者のマシュー・カウフマンに出会い、1980年からカウフマンとともにマウスの胚芽(胚盤胞)から幹細胞(ES細胞)を分離する研究を始めます。カウフマンは「幹細胞(ES細胞)の分離に遅延胚盤胞を使用する」というアイデアを提案しました。

さらに1981年にはマウス胚盤胞から胚性幹細胞を分離し細胞培養を繰り返すことで、正常核を維持したまま無制限に増殖しつづける幹細胞(ES細胞)の確立に成功します。この幹細胞(ES細胞)は特定の遺伝子を改変したマウスの作製や再生医療への応用に繋がる大きな希望となりました。

実験の成功後にはカウフマンがエジンバラ大学の教授に就任するためケンブリッジ大学を去りましたが、エヴァンズは共同研究者たちと研究を継続させます。そして遺伝子組み換え(培養した胚性幹細胞に新しい遺伝子を導入)を行うことで、キメラ胚を作ることが可能であると確認しました。

エヴァンズは1990年代にケンブリッジ大学のセント・エドマンズ・カレッジの講師となり、カーディフ大学生物科学部のディレクターや同大学の学長を務めるなど、後進の育成に励みました。

そして2007年にES細胞の培養法など、ノックアウトマウスに関わる研究でノーベル生理学・医学賞を受賞しました。同時受賞したのはエヴァンズの発表した遺伝的組換えを用いてノックアウトマウスの作製に成功したマリオ・カペッキとオリヴァー・スミティーズでした。またエヴァンズは1999年に発生生物学マーチ・オブ・ダイムズ賞を始めとして、2001年にアルバート・ラスカー基礎医学研究賞を、2006年にトムソン・ロイター引用栄誉賞を、さらに2009年にはコプリ・メダルなどを受賞しています。

◆終わりに

マーティン・エヴァンズはES細胞の樹立に成功した生物学者です。ES細胞は再生医療への応用が期待されており、また彼の研究がノックアウトマウスの作製に大きく影響したことは、現在の病気の治療開発にも繋がっているのです。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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