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ノーベル生理学・医学賞 2007年 マリオ・カペッキ:ノックアウトマウスの作製により、さまざまな治療法の開発に貢献した研究者

マリオ・カペッキはイタリア出身の遺伝学者です。2007年にノックアウトマウスの作製に成功した功績によりノーベル生理学・医学賞を受賞しました。ノックアウトマウスとは特定の標的遺伝子だけを選択して機能を停止させた実験動物のことです。同じくノックアウトマウスに関する研究を行った生物学者のマーティン・エヴァンズと、遺伝学者のオリヴァー・スミティーズも同時受賞しています。そんなマリオ・カペッキの受賞までの道のりについて詳しく解説していきます。

◆彼の生年月日と生まれた町について

マリオ・カペッキは1937年10月6日にイタリアのヴェローナで生まれました。

ヴェローナはイタリア共和国にあるヴェネト州の西部にあり、アディジェ川沿いに広がる都市です。先史時代末期に集落が存在していたことが出土品からわかっており、歴史の古い街として知られています。中世の街並みが特徴的なヴェローナ市街は、2000年にユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録され、13世紀から14世紀に最盛期を迎えたとされるローマ時代の遺跡が数多く残っています。代表的な構造物としてヴェローナ円形闘技場やエルベ広場、ランベルティの塔、そしてスカラ家の廟などがあります。

また、シェイクスピアの戯曲である「ロミオとジュリエット」の舞台としても有名で、映画や舞台でお馴染みの「ジュリエットの家」にあるバルコニーは人気のスポットであり、庭にはジュリエットの像が設置されています。

◆幼少期や学生時代

カペッキはイタリア空軍の将校であった父と詩人の母との間に生まれました。彼はオハイオ州のアンティオキア大学に進学し政治学を専攻しますが、次第に物理学と化学を受講するようになります。そして分子生物学と遺伝学に出会ったのをきっかけに精力的に研究を行っていき、1961年に化学と物理学の学士号を取得した後ハーバード大学の大学院課程で分子生物学を学ぶことを決意しました。

ハーバード大学ではアメリカの分子生物学者であるジェームズ・ワトソンの指導を受け論文を執筆しますが、その経験がのちのキャリアに大きな影響を受けたといいます。ワトソンはDNAの分子構造を発見した一人として知られ、1962年にイギリスのフランシス・クリックとモーリス・ウィルキンスとともにノーベル生理学・医学賞を受賞した人物です。

カペッキは1967年に生物物理学の博士号を取得し、大学院在学中の1967年から1969年までハーバード大学のフェロー協会のジュニア・フェローに招待され多くの会員と交流を持っていきます。

◆受賞に至るまでの逸話など

大学院修了後の1969年にカペッキはハーバード医科大学で生化学部の講師となり、1971年には助教授に昇進するなど順調にキャリアを積んでいきました。しかし研究者同士の交流が少ないハーバード大学の体制に不満があり、「当時のハーバードはそれぞれの研究チームが孤島のようであった」とのちに彼は語っています。

そして1973年にカペッキはユタ大学に移り働き始めます。ユタ大学は科学者であるカール・G・ラークが新しい研究部門を作っており、そこでは優秀な研究者がそれぞれの知識や経験を出し合ってさらなる成果を目指すことを目的としていたため、カペッキの望む環境が揃っていたのです。また1988年からはハワード・ヒューズ医学研究所の研究員を務め、国立科学アカデミーのメンバーにも加わるようになりました。

研究者としてはDNAを人工的に改変することをテーマに精力的に実験を行っていました。1980年代初頭に、「哺乳動物の細胞核に挿入されていたDNAの一部が細胞のゲノムに組み込まれる可能性」に気付きます。この説をもとに開発されたのがES細胞を応用したジーンターゲティング法(標的組み換え法)です。

さらに1986年にはジーンターゲティング法によって、マウスの遺伝子を操作して特定の変更を加えることに成功します。その結果、特定の遺伝子を不活性化(ノックアウト)したマウスを作製し、正常マウスと比べることで遺伝子異常や病気を研究する道を築きました。

そして、ノックアウトマウスの作製に関連する遺伝子の研究により2007年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。またカペッキは1969年のイーライリリー生物化学賞を始めとして、1993年にガードナー国際賞を、2001年にアルバート・ラスカー基礎医学研究賞を、さらに2001年にはアメリカ国家科学賞などを受賞しています。

◆終わりに

マリオ・カペッキはノックアウトマウスの作製に成功した遺伝学者です。ノックアウトマウスは遺伝子の働きの調査や新薬の効果実験などに使用され、さまざまな病気の治療法の開発に役立っています。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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