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ノーベル生理学・医学賞2014年 マイブリット・モーセル:夫と共に脳における空間認知システムを構成する細胞を発見したノルウェーの心理学者・神経学者

マイブリット・モーセルはノルウェーの心理学者・神経学者です。2014年ジョン・オキーフと夫であるエドバルド・モーセルとともに脳における空間認知システムを構成する細胞(格子細胞と場所細胞)の発見によりノーベル生理学・医学賞を受賞しました。そんなマイブリット・モーセルの受賞までの道のりを詳しく解説していきます。

◆生年月日・生まれた町・生まれた町の概要

マイブリット・モーセルは1963年1月4日ノルウェーの西海岸にある小さな島の町フォスナヴォグで生まれました。ノルウェーの西海岸はとても自然が豊かな地域です。

ノルウェーの西海岸は美しいフィヨルドがあることで知られています。別名「フィヨルドランド」とも呼ばれています。
ノルウェーの西海岸はこの水と氷が織りなす自然の素晴らしい景観であるフィヨルドを見るためのクルーズが観光として大変人気があります。

◆幼少期・学生時代

モーセルは5人兄妹の末っ子として生まれました。モーセルの父の職業は大工で、母は小さな農場を所有しておりその農場を経営しながら片手間にモーセル含む5人の子供達を育てていました。

モーセルはとても好奇心旺盛でおてんばな女の子でよく近所の男の子と外を駆けずり回って遊んでいました。子供が多いモーセル一家の家計はとても苦しく、よその子供が夏のバカンスに行っている間モーセル一家は家で過ごしていました。

モーセルの母はよく彼女におとぎ話を聞かせていました。その話は、頑張れば夢が叶うという内容でした。その影響を受けてモーセルは幼いながらに世界中を飛び回る医者になりたいと夢見ていました。

高校時代になると仲のいい友人と多くの時間を過ごすようになります。その結果、今までしていた医学部へ行くための勉強に身が入らなくなります。それを見かねたモーセルの母はしっかり勉強して学校へ行くようにと促しました。

モーセルはオセロ大学へと進学しましたが、自分の中で何を勉強したいのかがまだ決まっていませんでした。そして高校の同級生でありのちに夫となるエドバルト・モーセルと一緒に心理学を学び、脳科学を勉強することにします。最初の論文の発表の後、教授から社会心理学を学ぶことをすすめられますが、脳科学を勉強することにします。二人は1985年、大学在学中に学生結婚をしました。

モーセルは博士号を取得した直後の1991年と1995年に女の子を生みました。そして子育てと研究の両立させるため子供たちを実験室や科学的な会議などに一緒に連れていきました。連れていけないときは夫であるエドバルドと交代で子どもの面倒を見ました。この時期モーセルはエジンバラに住んでいました。

その後モーセルはロンドン大学にいたジョン・オキーフと共に研究をすることをすすめられます。ジョン・オキーフとともに研究したことがのちに格子細胞の発見へ繋がっていくことになりました。

◆受賞に至るまでの逸話など

ジョン・オキーフは場所細胞を発見しましたが、どのようにして場所細胞が情報を受け取っているのかはまだ解明できていませんでした。
そしてマイブリッド・モーセルは夫と共にジョン・オキーフが発見した場所細胞はどのようにして場所の情報を入手しているかを研究することにしました。

モーセル夫妻が注目したのは海馬の隣にある嗅内皮質(きゅうないひしつ)でした。嗅内皮質は海馬より解剖学的に一段階手前に位置し、電極の届きにくい場所にあります。そのため嗅内皮質はあまり生理学的な研究が行われてはいない部位でした。

モーセル夫妻はネズミの嗅内皮質に電極を刺して実験をすることにします。すると空間内を自由に歩き回るネズミは、海馬では場所細胞が一点でだけで活動しますが、嗅内皮質の神経細胞は部屋の複数の場所で活動することを発見しました。

しかも嗅内皮質で発見された神経細胞は、空間の中で同じ間隔を持った場所で発火することがわかりました。モーセル夫婦が発見したのは空間が正三角形で埋め尽くされており、しかもそのすべての頂点で発火が起こっているということになります。モーセル夫妻は、嗅内皮質内で発見したこの神経細胞を「格子(グリッド)細胞」と名付けました。

海馬と嗅内皮質は隣り合っています。その中にある場所細胞と格子細胞は隣り合って存在し、つながりを持っています。格子細胞が蜂の巣のように作り上げた地図のようなものを場所細胞が受け取り位置を判断することで自分がどこにいるのかを判断しているということがわかりました。モーセル夫妻はさらに格子細胞について研究を続けその性質を明らかにしていきます。ジョン・オキーフが場所細胞を発見してから初めて位置情報がどこから入手しているのかが分かったのです。

ジョン・オキーフとモーセル夫妻はネズミを使って実験し、場所細胞と格子細胞を発見し場所を判断する仕組みを発見しました。そしてこの場所細胞と格子細胞は人の脳の中にも発見されています。

カント以来多くの哲学者や脳科学者が悩んでいた「私はどこにいるのだろう?どうやってどこにいるのかがわかるのだろう?」という大きな問題の一端がジョン・オキーフとモーセル夫妻によって脳科学的に明らかにされたといえるでしょう。

終わりに

マイブリット・モーセルは夫エドバルド・モーセルとともに2014年にノーベル生化学・医学賞を受賞しました。夫婦でノーベル賞を受賞したのは5組目です。さらにノーベル生理学・医学賞を受賞した夫婦はキュリー夫妻以来2組目となります。

出典(The Nobel Prise 引用): May-Britt Moser – Biographical – NobelPrize.org (06.2021)
出典(Wikipedia、引用): May-Britt Moser (06.2021)

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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