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安徽料理(あんきりょうり):医食同源の考え方が発展し、生薬を使用した薬膳の誕生に繋がった料理

安徽料理(あんきりょうり)は、中国の安徽省周辺で発祥した郷土料理で、中国八大料理(八大菜系)の1つです。内陸に位置し海を持たない安徽省は、山や川の恵みが豊富で山菜や淡水魚を使った料理が基本です。そして現在は「徽州(きしゅう)」「沿江(えんこう)」「沿淮(えんしゅん)」という3つの料理の系統に分類されています。そんな安徽料理の歴史と特徴について解説していきます。

◆安徽料理の歴史

安徽省は美しい自然と豊かな歴史を持ち、景勝地としても知られています。安徽省の南部に位置する徽州はもともと、土地の名産物を売り歩く「徽商(きしょう) 」という商人によって栄えてきました。徽商は「黄山(こうざん)」という山の植物や生薬を売ったお金で布地や塩などを仕入れ、安徽省の流通を活性化させていきました。
当時、都市として発展しつつあった徽州には、技術者や文化人、生薬の知識が豊富な人々などが集まってくるようになりました。そして次第に医学が発達し薬食同源(健康な体は食事から作られる)という思想が生まれ、薬膳料理が考案されました。

◆安徽料理の特徴

山の多い南部と河川や湖の多い中部や北部など、地域ごとの地理的特徴が料理にも大きな影響を与えています。山の多い地域ではキノコ・野草・山菜・タケノコ・野生動物などの食材、河川や湖の地域では淡水の魚やスッポンなどの食材に恵まれています。

安徽料理は全体的に砂糖と醤油をつかった濃い目の味わいが特徴で、多めの油を使い味も色もしっかり濃く付くように調理されます。しかし現在でこそこってりとしたものになっている安徽料理ですが、元々は煮物や蒸し物が中心的な調理法でした。安徽料理ならではの調理法に「滑焼(ふあしゃお)」というものがあり、しっかりと熱した中華鍋に下味や油通しを一切していない食材と調味料を入れ数分で一気に火を通すというやり方です。また、古くから保存食を多く作る地域でもあり、干し筍や干豆腐といった栄養価が高く長持ちする食品を数多く発明してきました。

安徽料理の分類

安徽料理は地域によって使用する材料や調理の技術が異なり、現在は主に3つの系統に分類されています。

徽州料理(きしゅうりょうり)』

徽州料理は、安徽省南部の黄山市徽州で発祥し発展してきました。雨の多い温暖な気候が特徴で、名山・黄山には1000以上の食用にも用いられる植物が自生しているといわれています。古くから山の恵みを存分に活かした料理が作られてきたこの地域は、濃い味付けで比較的油を多めに使用し、とろみをつけたこってりした料理で知られる一方で、カエルのスープなどのあっさりしたメニューも有名です。

『沿江料理(えんこうりょうり)』

沿江料理は、安徽省中央に位置する合肥市(ごうひし)周辺で発祥しました。河川や湖や池が密集した地帯であるため新鮮な水産物に恵まれている他、家禽(かきん、家畜としての鳥のことを指す)の調理にも定評があります。隣の江蘇省の淮揚料理と重なるところも多く、優しい甘みと塩気が絶妙に合わさった味わいです。調理法は砂糖の扱いに長けていることで有名で、蒸し煮やスモークを得意としています。

『沿淮料理(えんしゅんりょうり)』

沿淮料理は、安徽省北部の蚌埠市(ほうふし)周辺で発祥した料理です。肥沃な土地で採れる豊富な野菜と家禽と河川からの水産物を使用した料理が主で、絶妙な塩辛さと味の濃さが特徴で、唐辛子や辣油などを多用します。

◆代表的な安徽料理

徽州料理

・火腿燉甲魚(ハムとスッポンの煮込み)
・黄山燉鴿(黄山で狩った鳩の煮込み)
・冬筍麂絲(タケノコとキョン肉を醤油ベースの味付けで炒めたもの)
・徽州丸子(もち米の中に豚肉を入れて蒸したもの)

沿江料理

※黄山毛峰茶

・毛峰熏鰣魚(この辺りの固有種シギョをオイル漬けにして、「黄山毛峰茶」という黄山で採れる高級なお茶で燻製し、酢と生姜で食べる)
・李鴻章大雜燴(李鴻章という政治家の名がついたごった煮スープ)
・包公魚(醤油と酢でフナを煮込み、冷まして食べる煮込み料理)

沿淮料理

・符離集燒鷄(丸揚げした鶏を薬草で煮込んだ料理)
・葡萄魚(アオウオというコイの一種を揚げ、ブドウのソースをかけたもの)

◆終わりに

安徽料理は中国の安徽省周辺で発祥した中華料理の八大菜系のひとつで、現在は世界遺産にも登録されている黄山で採れる様々な食材を使用した料理として発展してきました。しかし安徽料理は中国国内でもなかなかお目にかかれない、ディープな食文化です。そのため国外で出会うことはあまりないかもしれませんが、もし見つけた場合は是非チャレンジしてみてください。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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