グレッグ・L・セメンザ:HIF-1(低酸素誘導因子)を発見し、新たな薬剤開発に貢献した医学者

グレッグ・L・セメンザはアメリカの医学者です。『細胞による酸素量の感知とその適応機序の解明』という内容で2019年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。酸素が不足している環境に細胞が適応できるHIF-1(低酸素誘導因子)を発見したことでも知られています。そんなグレッグ・L・セメンザの受賞までの道のりについて詳しく解説していきます。

◆幼少期、学生時代

グレッグ・L・セメンザは1956年7月12日にアメリカのニューヨークで生まれました。彼はワシントンアーヴィング中学校、スリーピーホロウ高校に通い、卒業後はハーバード大学で遺伝医学を中心に学びました。その後ペンシルベニア大学で劣性遺伝病であるβサラセミアに関連する遺伝子の配列を決定し、1984年に博士号を取得しています。その後デューク大学で小児科研修を行ったセメンザは、ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンズ大学でポスドクと呼ばれる任期付き研究員として勤めました。

◆受賞に至るまでの逸話など

1980年後半、セメンザは酸素に対する細胞応答のメカニズムに興味を持ちました。過去の研究から低酸素症(低酸素状態)に反応した細胞によってエリスロポイエチン(Erythropoietin、略称:EPO)が産生されるということは分かっていましたが、この反応を制御する遺伝的な仕組みについてはまだ解明されていませんでした。彼は同僚と共に低酸素レベルに反応した細胞を制御する遺伝的因子について調べ、「HIF」というタンパク質を発見。そしてHIFレベルが低酸素状態で大幅に増加するのに対し、HIF発現は通常の酸素条件下で減少することも分かったのです。セメンザはさらにHIF-1αの過剰産生ががんにつながる可能性があることを明らかにしました。
これらの研究は酸素の利用に応答して遺伝子を制御するHIF-1(低酸素誘導因子)の画期的な発見となり、彼は医学界から大きな評価を受けました。そしてセメンザの研究はダナ・ファーバー癌研究所のウィリアム・ケリン、オックスフォード大学のピーター・ラトクリフの研究と繋がり、三人は合同で2019年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。セメンザノーベル賞の他にガードナー国際賞、ワイリー賞、アルバート・ラスカー基礎医学研究賞、マスリー賞なども受賞しています。彼らの研究は、貧血および腎不全の薬剤開発にも繋がっています。
セメンザは多くの場所で教授としても勤めており、1990年以降ジョンズ・ホプキンズ大学で小児科、放射線腫瘍学、分子放射線科学、生化学、医学、腫瘍学の教授。2003年からはジョンズ・ホプキンズ大学の血管研究プログラム長を務め、2012年~2016年には、アメリカがん学会研究の教授を務めました。

◆おわりに

細胞応答メカニズムについて探求し、医学の進歩に大きく貢献したグレッグ・L・セメンザ。彼の研究のおかげでいまも多くの人が救われています。セメンザはノーベル賞受賞の数か月前、自宅の階段から落ちて4本の椎骨を骨折したといいます。受賞直後、元気な姿で記者会見に臨んだ彼は、「このようなひどい年に受賞するとは思わなかった」と笑顔で語りました。現在も様々な分野で活動し精力的に研究を続けるセメンザは、これからも多くの病気治療に貢献しながら、人々に明るい未来を見せてくれるのでしょう。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

関連記事一覧