ピーター・J・ラトクリフ:低酸素症に関する研究により病気治療の新たな道を開いた医学者

ピーター・J・ラトクリフはイギリスの医学者です。『細胞による酸素量の感知とその適応機序の解明』という内容で2019年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。彼はがん抑制遺伝子であるVHLの低酸素応答の仕組みについて研究したことでも知られています。そんなピーター・J・ラトクリフの受賞までの道のりについて詳しく解説していきます。

◆幼少期、学生時代

ピーター・J・ラトクリフは、1954年5月14日にイギリスのイングランド西北部にあるランカシャーという街で生まれました。11歳からランカスターロイヤルグラマースクール(Lancaster Royal Grammar School、通称:LRGS)に通い、18歳でケンブリッジ大学ゴンヴィル・アンド・キーズ・カレッジに進学して医学を学びます。24歳のときには聖バーソロミュー医学学校で学位を取得し、その後オックスフォード大学で『腎臓の酸素化』に焦点を当て、腎臓医学の訓練を受けています。

◆受賞に至るまでの逸話など

1989年、ラトクリフは腎臓から放出されるホルモン『エリスロポエチン(Erythropoietin、略称:EPO)』の調節について探究するため、オックスフォード大学に自身の研究室を設立しました。エリスロポエチンは低酸素レベルに反応した腎臓によって産生されることがすでに分かっており、彼が行った研究は腎臓が低酸素(血液中の酸素レベルの低下)を検出する仕組みの解明を目的としていました。この研究によりエリスロポエチン産生経路の一部である腎臓由来のmRNAが、ヒトと動物両方の脾臓、脳、精巣を含むいくつかの器官にも存在することを発見。そしてこれらの臓器細胞から酸素が奪われたときエリスロポエチン生産が開始されると結論づけたのです。さらにラトクリフは特定のmRNAを使用して他の細胞を改変し、その細胞に酸素感知機能を与えることにも成功しています。
これらの研究はダナ・ファーバー癌研究所のウィリアム・ケリン、ジョンズ・ホプキンス大学細胞工学研究所のグレッグ・セメンザの行っていた研究と繋がり、細胞が酸素を感知するために使用する詳細な分子連鎖を解明するのに役立ちました。
そしてこの功績が認められ、ラトクリフはケリン、セメンザと共にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。ノーベル賞以外にもルイ=ジャンテ医学賞、ガードナー国際賞、ワイリー賞、アルバート・ラスカー基礎医学研究賞、マスリー賞などを受賞しています。製薬業界ではラトクリフらの研究をもとに体の酸素感知機構を活性化、または遮断する薬剤を開発しています。これにより慢性腎臓病患者の貧血治療が可能となり、がんをはじめとした多くの治療に対しても活用できると期待が込められています。

◆おわりに

細胞と酸素について解明し、医学や医療の発展に大きく貢献したピーター・J・ラトクリフ。彼が低酸素応答の仕組みを研究したことにより、難病の原因究明や新たな医薬品の開発などさまざまな医療が進化を遂げています。ラトクリフが研究を行なっていなければいま確立されている治療法はまだ存在しなかったかもしれませんね。彼の信念とその成果に心から敬意を表したいと思います。

出典:(Wikipedia、PeterJRatcliffe)(7,2021)

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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