巻き寿司:江戸時代に生まれ、現在では世界各国で愛される日本料理

巻き寿司は、海苔や昆布などで酢飯や具材を細長く巻いた寿司の一種です。「巻き物」や「海苔巻き」と呼ばれることもあります。巻き方・具材は地域や家庭・店舗によって異なり、様々な種類の巻き寿司が生まれました。そんな巻き寿司の歴史と特徴について詳しく解説していきます。

巻き寿司の歴史

日本の寿司は1千年以上前の奈良時代にはすでに存在しており、平安時代の法令である延喜式(えんぎしき)「主計寮(しゅけいりょう) 」や説話集「今昔物語集」で記述を確認することが出来ます。

最初の寿司は、魚を塩と米で乳酸発酵させた「なれずし」だと考えられており、臭いの強さが特徴でした。鎌倉時代になると残った魚を加工する方法として使用されるようになり、室町時代に米食文化が広まるとおかずの1種として親しまれます。その後、作る工程で酢や酒・酒粕・糀などを用いて寿司の発酵を早めるようになり、1600年代ごろから酢の使用が主流となりました。

江戸時代に入ると握り寿司が文献に登場し、江戸っ子たちにもてはやされた様子を知ることが出来ます。関東だけでなく、関西でも江戸前寿司をふるまう店が出来ました。寿司文化が広がるなかで、いなり寿司や巻き寿司といったお手頃な商品も開発されるようになります。

戦後は海外にも進出し、1960年代にはアメリカ合衆国に出店した東京會館がカリフォルニアロールを売り出しました。現在では日本だけでなく世界各国で様々な種類の巻き寿司が食されています。

巻き寿司の特徴

巻き寿司はその名の通り、具材をくるっと巻いた寿司のこと。巻き簾(まきす)の上に海苔や昆布を広げて米と具材を入れるのが一般的で、太さの違いによって「細巻」「中巻」「太巻」と呼び方が変わります。

細巻…江戸前寿司の海苔巻きの基本形で、具材は干瓢(かんぴょう)が標準です。直径3㎝程度で具は1種類。鉄砲巻きという呼び方でもお馴染みです。

中巻…海苔を1枚または半分を使用します。細巻と太巻の中間の太さで、具は2・3種類です。

太巻…海苔を1枚もしくはそれ以上使用します。直径5㎝以上で多種類の具材を入れるのが特徴です。

具材に厳格な決まりが無いため、地域や店によってオリジナルの巻き寿司があります。また、握りずしと比べると一般家庭でも作りやすいため、家庭料理やお弁当としても定番のメニューです。近年では巻き寿司を作る専用機械も販売されており、大手チェーン寿司店やスーパーで活躍しています。

・巻き寿司の主な材料

酢飯

海苔

具材…マグロ・干瓢(かんぴょう)・ツナ・イカ・エビ・納豆・紫蘇(しそ)・たくあん・卵焼き・きゅうり・ねぎとろ・わさび・穴子など

・巻き寿司の主な調理法

お好みの具材を用意します。

炊いた米に合わせ酢(酢・砂糖・塩)を入れ、しゃもじで混ぜて酢飯を作ります。混ぜ終わったら、うちわで急速に冷やすのがポイントです。

海苔は強火から遠い位置で手早く焼きます。

巻き簾に海苔の表面(光沢あり)を下にして置きます。

海苔の上に酢飯を広げ、好きな具材をのせます。

巻き簾の手前から持ち上げるようにぎゅっと巻けば完成。

巻き寿司の主な種類

『日本の巻き寿司』

・玉子巻き

海苔の代わりに卵焼きで巻いた寿司。伊達巻や玉巻(ぎょくまき)とも呼ばれます。

・軍艦巻き

一口サイズの酢飯を海苔で巻き、具材を乗せた寿司。

1941年に東京銀座の有名寿司屋・銀座九兵衛の主人が、イクラやウニなど形の崩れやすい物を寿司にするために考案しました。

当初、保守的な寿司業界では非難を浴びましたが、現在は定番のスタイルとなっています。

・サラダ巻き

野菜を中心にサラダのような具材を入れる巻き寿司。

元祖は宮崎県の寿司屋がレタスを具に入れた「レタス巻き」です。マヨネーズが寿司に入ったのも初だと言われています。

・手巻き寿司

巻き簀を使用せずに、手で海苔に酢飯と具材はさむ寿司。昭和46年に築地の寿司店が始めたもので、現在では日本のホームパーティーの定番料理となりました。具材は生の海鮮はもちろん、焼いた肉や天ぷら・フライなど店舗や家庭によって様々です。

『西洋巻き寿司』

・カリフォルニアロール

1963年にロサンゼルスのレストラン・東京會館で寿司職人・真下一郎が考案した寿司が発祥。当初はタラバガニ・アボカドをマヨネーズで和えた巻き寿司でした。

その後、海苔の見た目が現地で気味悪がられたため、米の内側に海苔を巻く「裏巻き」が考案されます。1980年代にはアメリカ各地に広まり、日本にも逆輸入の形で伝わりました。

・シアトルロール

アメリカ・シアトル発祥の巻き寿司です。考案者については、シアトルの複数のレストランが名乗りを上げておりはっきりしていません。

具材には、キュウリ・アボカド・サーモン・トビコが入るのが一般的で、クリームチーズを入れることもあります。

・フィラデルフィアロール

ベーグルにクリームチーズ・サーモン・トマト・玉ネギなどを挟む「ベーグル・アンド・ロックス」という食べ方を基に考案された寿司。

具材にはスモークサーモン・クリームチーズを使用し、きゅうりやアボカド・玉ネギを入れることもあります。

・ブリティッシュコロンビアロール

カナダ最西端のブリティッシュコロンビア州で生まれた巻き寿司。

具材には甘いソースで焼いたサーモンとキュウリを使用するのが定番です。サーモンはマヨネーズ焼きで使用することもあります。

・スパイダーロール

スパイダーとは、英語圏の寿司業界でソフトシェルクラブ(ワタリガニの唐揚げ)を意味する隠語です。

具材には、ソフトシェルクラブ・キュウリ・アボカド・かいわれダイコンが入るのが一般的で、マヨネーズやスパイシーマヨネーズで味付けします。店舗によっては、かにかま・レタスなどが入っています。

・寿司ブリトー

アメリカ・サンフランシスコの寿司店「スシリート」発祥の寿司です。トルティーヤに具材を乗せて巻くメキシコ料理であるブリトーと、日本の寿司をブレンドしたもの。巻き寿司を包み紙で巻くことで、素手でも食べやすいように考案されました。

具材はアジアの味付けだけでなく、ラテン料理の要素が入ることもあります。

終わりに

巻き寿司は、日本全国の店舗で販売され、家庭でも作られるポピュラーな日本料理です。中身の具材を変えるだけで全く違った味わいになるためアレンジし易く、現在では世界各地で食されています。ぜひご自宅でも自分だけのオリジナル巻き寿司を作ってみてくださいね。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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