ディジー・ガレスピー:ひとつの時代を築いたジャズの巨匠

ディジー・ガレスピーは1976年にグラミー賞Best Improvised Jazz Solo賞を受賞した、アドリブ演奏を得意とするトランペット奏者です。受賞作の『Oscar Peterson and Dizzy Gillespie』ではピアニストのオスカー・ピーターソンと共演し、世界中の音楽ファンを魅了しました。モダン・ジャズの原型を築き、ビバップを創設したミュージシャンの一人としてジャズ界に大きな変革をもたらした巨匠と言える人物です。そんなディジー・ガレスピーの経歴や代表曲を紹介していきます。

◼︎ディジー・ガレスピーとは

ディジー・ガレスピー、本名ジョン・バークス・ガレスピーは1917年にアメリカのサウスカロライナ州チーローで生まれました。ガレスピーはしばしばジャズのひとつの時代を築いたと言われ、ユーモアに富んだメロディーとテクニカルかつダイナミックな音楽性から高い評価を獲得しています。そしてディジーといえば、途中からベルが折れ上を向いたトランペット“アップベル”が有名で、これには誰もが目を引かれます。

アルト・サックス奏者のチャーリー・パーカーとの共演はジャズ界に大きなうねりを起こしました。ジャズというジャンルをスイングからモダンへと変革させ、モダン・ジャズの原型となる“ビバップ”を生み出し、後世のアーティストに多大な影響を及ぼしたことは間違いありません。また、ラテン・ジャズの推進に尽力したことでも有名です。

ディジーの音楽の才能は、アマチュアのミュージシャンとして活動していた父親譲りのものでした。14歳頃にはトロンボーンを始めますが、その後すぐにトランペットに転向し18歳頃にはバンドを結成し、本格的に音楽の道を進み始めました。音楽の才能をみるみるうちに開花させていったガレスピーはいくつかのバンドに所属しますが、彼の音楽性やスタンスは周囲とは合わないことが多く、1941年までに2つのバンドを脱退します。

そしてその頃からディジーは、ジャズの新しいスタイルを模索していくようになりました。後に著名なアーティストとなるドラマーのケニー・クラークやジャズ・ギターの開祖といわれるチャーリー・クリスチャン、ピアニストのセロリアス・モンクらとセッションを繰り返し、ジャズの可能性を開拓していきます。リズムを重視した上で、どうしたらより自由でより斬新な音楽が生まれるのかを、日夜模索していたのです。

そして彼とサックス奏者のチャーリー・パーカーの出会いが、ジャズ・シーンの新しい潮流を生み出したのでした。彼らの音楽は力強いうねりとなり、時代を変えるほどの大きな波を生み出しました。その後ディジーは1945年以降ソロ活動を開始し、チャーリー・パーカーと共にジャズ界の中心に躍り出て、ジャズ界を牽引する人物の1人となっていったのでした。

ディジーは1993年に75歳でこの世を去るまで、音楽を愛し続けました。彼の美しく巧みで魂の込もった作品の数々が、色褪せることはありません。次章からは、そんなディジーの代表曲を紹介していきます。

◼︎ディジー・ガレスピーの代表曲

ジャズのひとつの時代を築いた巨匠ディジー・ガレスピー。彼の頬を大きく膨らませて演奏する独特のスタイルは特異的な体質によるもので、医学的な研究対象にもなっていたそうです。彼の超絶技巧から次々に生み出されるメロディーの魅力は、代表作『Hot House』をはじめ、陽気な雰囲気が伝わってくる名盤『Groovin’ High』、“鍵盤の皇帝”と呼ばれるピアニスト、オスカー・ピーターソンとの共演が話題をさらった『Oscar Peterson and Dizzy Gillespie』などの作品を聞いてもらえればすぐに納得してもらえるのではないではしょうか。

Hot House(ホット・ハウス)

ジャズのスタンダード・ナンバーとして現在も愛されている名曲『Hot House』。ピアニストのチャーリー・パーカーとの共演によるアップテンポで楽しげなメロディーに、心も体も癒されるはずです。しかしそれを支えるのは几帳面で正確なリズムと演奏技術であり、これはビバップというものを体感できる曲と言えるでしょう。とてもシンプルな演奏なので、是非1つ1つの音にじっくりと耳を傾けてみてください。

Groovin’ High(グルーヴィン・ハイ)

『Hot House』が含まれるアルバム『Groovin’ High』は1940年代のジャズを凝縮したような一枚であり、ジャズという音楽の原点を思わせる曲が集まっています。13の陽気な曲たちは、流れるようなリズムと自由で豊かなトランペットの演奏が特徴で、ウィットに富んだ彼の音楽の才能が溢れて留まることを知りません。アップテンポの曲調のものからバラードライクのしっとりした曲調のものまで、ディジーの巧みな演奏を体感できます。

Oscar Peterson and Dizzy Gillespie(オスカー・ピーターソン・アンド・ディジー・ガレズビー)

1976年のグラミー賞を受賞したアルバム『Oscar Peterson and Dizzy Gillespie』。タイトルの通りディジーとオスカー・ピーターソンによる共演です。オスカー・ピーターソンは“鍵盤の帝王”とも呼ばれる技巧派ピアニストで、超絶的な技巧で大勢のファンを魅了してきました。彼のピアノの滑らかかつ力強いメロディーと、ディジーの閃光のようなトランペットが独特なグルーヴを生んでいます。8曲、合計54分間の演奏が収録され、破綻しそうな部分を持ちつつもどこにも隙がなく、名盤の一言につきます。ジャズの1つの深淵に達し、音楽の喜びそのものが詰まっているような美しいアルバムです。

おわりに

ジャズ界の巨匠の一人、ディジー・ガレスピーの経歴や代表作を紹介してきました。ジャズの新境地を拓いた彼の演奏は、どれも目が眩むほどにすばらしいものばかりです。また、ユニークな演奏スタイルも是非、動画などを通して確認していただきたいところです。そして、彼を様々な音楽の新境地に連れて行ったのは、チャーリー・パーカーをはじめとした数々のミュージシャンとのセッションであったということには間違いありません。

Hot House (you tube音源)

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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