
虫屎茶(チュウシチャ:中国語 チョンシーチャー):希少価値の高い驚きの素材を使った中国茶
虫屎茶は蛾の幼虫の糞を乾燥させて作られた、中国茶の中でも希少価値の高いお茶です。善玉菌やアミノ酸が多く含まれ、健康や美肌に役立つお茶でもあります。そんな虫屎茶の歴史と特徴について詳しく解説していきます。
◆虫屎茶の歴史
虫屎茶は中国茶の一種で、特定の植物の葉を食べる蛾の幼虫の糞を乾燥させて作られたものであり、「虫糞茶(ちゅうふんちゃ)」とも呼ばれます。他にも、虫茶(ちゅうちゃ)、龍珠茶(りゅうしゅちゃ)、茶精(ちゃせい)という別名があり、虫が食べる植物や茶の種類、および虫の種類によってタイプが異なります。

主に、中国の広西チワン族自治区桂林市の竜勝各族自治県周辺や湖南省の南部で生産され、貴州省や四川省などでも自家消費用として製造されています。もとは、ミャオ族(中国の少数民族の一つで、お茶に関係の深い苗族)が飲んでいたもので、その香りの良さや特異性で広く知られるようになりました。現在は「化香蛾茶(かこうがちゃ)」と言われるタイプのものが東南アジアなどに少量輸出されています。
中国の光緒年間(1875年~1908年)に著された『城歩郷土志』で「虫茶」について触れられています。また、中国本草学の集大成である1578年の『本草綱目』にはすでに記載があり、時代が合っておらず実際の歴史は曖昧なようです。

◆虫屎茶の特徴
蛾の幼虫の糞から作られるということで抵抗がある人も多くいますが、基本的に虫屎茶に使う虫には茶葉しか食べさせていないため、排出される糞も100%茶葉になります。虫屎茶に茶葉とハチミツを混ぜて乾燥させた製品もあります。
できた茶葉には糞の異臭はなく、黒茶に近い味わいで高い香りがします。ハチミツを混ぜたものは甘みを含み、葉が幼虫によって酵素分解されることにより、必須アミノ酸(とりわけリジンを多く含む)やうま味が増加します。また、善玉菌も多く含んでおり健胃作用や整腸作用、止瀉作用、止血作用もあるといわれています。
幼虫が数か月間にわたり葉を食べ続け、糞として排出されたものを取ることになるので、その量は少量です。成虫にしてから数世代で糞の採取を行う場合もあり、2年程の期間をかけることもあるため、このお茶は希少で高価なのです。
<虫屎茶の飲み方>
茶葉1~2gに100度前後のお湯を入れ、通常のお茶と同じように飲みます。
この茶葉の量で10煎程度できるといわれます。

<虫屎茶の主な種類>
(原料植物となるもの)
・トウチャ(野藤)…ブドウ科
・コナシ(三葉海棠)…バラ科、「三葉虫茶」の原料
・ノグルミ(化香樹)…クルミ科、「化香蛾茶」の原料
<昆虫のタイプ>
コメシマメイガ(米縞螟、米黒虫)…メイガ科シマメイガ亜科。コナシなどを食べます。
ヒロオビウスグロアツバ(化香夜蛾、黄紋淡墨夜蛾)…ヤガ科クルマアツバ亜科。ノグルミなどを食べます。
◆終わりに
虫の糞からできていると知ると、なかなか手を出しにくいお茶かもしれませんが、その希少価値は高く、美容や健康にも非常に良いとされています。手に入れられる機会があればぜひ一度、虫屎茶を飲んでみてはいかがでしょうか。
※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。