ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ:『ロゼッタ』や『少年と自転車』を制作した兄弟監督

ジャン=ピエール・ダルデンヌとリュック・ダルデンヌはベルギーのリエージュに生まれた映画監督です。映画業界ではめずらしく兄弟で制作活動をしている映画監督であり、『ロゼッタ』や『少年と自転車』といった作品を制作したことで知られています。そんなジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌの人生と作品について詳しく解説していきます。

■ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ

兄のジャン=ピエールは1951年4月21日、弟のリュックは1954年3月10日にリエージュ近郊で生まれました。ジャン=ピエールは舞台演出家を志してブリュッセルにわたり、原発で働いた資金で機材を購入したのち、都市計画などの社会問題をテーマとしたドキュメンタリー作品を制作するようになっていきました。

1987年にはルネ・カリスキーの戯曲を元にした初の長編映画を発表。2作目の『あなたを思う』は制作側の反対によって満足した完成にはこぎつけなかったものの、1996年に制作した3作目の『イゴールの約束』では第49回カンヌ国際映画祭の監督収監部門に出品されるなど世界的な注目を浴びるようになっていきました。

1999年には『ロゼッタ』で第52回カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞。また2002年には『息子のまなざし』でオリヴィエ・グルメが第55回カンヌ国際映画祭男優賞を受賞しています。また2008年の『ロルナの祈り』では第61回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞し、2011年の『少年と自転車』では第64回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したことで映画祭史上初となる5作品連続の主要部門受賞を果たしました。

■ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ作品の特長

ダルデンヌ兄弟の作品の特長は、ドキュメンタリー映画を経験したことによる深い人間洞察にあるといえるでしょう。登場人物たちの内面を豊かに描くことで、不法労働や生への執着といった問題を鮮やかに描き切っており、その作品は世界の人々を魅了しています。

そんなダルデンヌ兄弟の作品には、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品についてご紹介します

・『イゴールの約束』 1996年

※画像はイメージです

本作品は1996年に制作された作品で、父に盲従していた少年が精神的に独立していく姿を描いた作品です。本作はダルデンヌ兄弟の3作目にあたる作品であり、不法移民問題を扱ったことも話題となりカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で上映されました。

イゴールは自動車の見習い工として働いていたものの、父ロジェに盲従しており、その命令には逆らえずにいました。ロジェは不法移民のあっせんが仕事であり、イゴールは重要な助手だったのです。ある日訪れた不法移民宿泊施設では、ブルキナファソ出身のアミドゥとその妻アシタが赤ん坊を連れてやってきます。そかし突然移民局の抜き打ち査察が行われることとなり、アミドゥは建設現場でけがを負ってしまいます。ロジェは警察沙汰を恐れて医者を呼ばず、アミドゥはイゴールに妻子の世話を頼んで亡くなってしまいます。

その夜ロジェはイゴールに手伝わせてアミドゥの遺体をコンクリートの土台に埋め込み、事実隠蔽を図ったものの、アシタのもとにはアミドゥがギャンブルで作った借金の取り立てが来ており、アシタはイゴールに夫のことを問い詰めます。そんなアシタを疎ましく思ったロジェはアミドゥの名前で偽電報を打ち、娼婦として売り払ってしまおうと考えていました。

そんなロジェのたくらみを知ったイゴールはアシタと赤ん坊を連れて家出。イゴールが務めていた修理工場に泊まり、イタリアの叔父さんのもとに向かうことを決意します。翌朝工場に訪れたロジェはイゴールに家に戻り、アシタと子どもを引き渡せと命令するものの、イゴールは父親の言いつけをはじめて拒絶し、ロジェを鎖でつないで、駅へと急ぐのでした。

・『息子のまなざし』 2002年

※画像はイメージです

本作品は2002年に制作された作品で、2002年のカンヌ国際映画祭主演男優賞やエキュメニック賞特別賞、ベルギー・アカデミー最優秀作品賞などを受賞したことで話題になりました。

職業訓練所で大工仕事を教えているオリヴィエのもとにフランシスという少年が入所したものの、オリヴィエは手一杯であり、フランシスは溶接のクラスに回されてしまいます。しかしオリヴィエはどうしてもフランシスが気になっていました。実はフランシスはオリヴィエの息子を殺害し、少年院に入っていた過去を持っていたのでした。

しかし徐々にオリヴィエとフランシスは打ち解け合うようになり、ある日ともに材木の仕入れに行くことになります。そんな時オリヴィエはついにフランシスが殺害したのは自分の息子だったと告げ、フランシスは逃げ出します。オリヴィエはフランシスを捕まえて首に手をかけたものの、すぐに手を放してしまい、結局2人は一緒に材木を車に積むことになるのでした。

・『少年と自転車』 2003年

※画像はイメージです

本作品は2003年に制作された作品で、2003年に日本で開催された少年犯罪のシンポジウムで耳にした育児放棄の実話から着想を得た作品です。第64回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、審査員特別グランプリを受賞したことで話題になりました。

施設に預けられている11歳のシリルは、父親に捨てられたという現実を受け入れられず反抗的な態度を撮り続けていました。そんなシリルと偶然知り合った美容師のサマンサはシリルに週末の里親になってほしいと頼まれるとそれを引き受け、シリルの父親探しの行方も手伝ってくれるようになります。ようやく父ギイと再会したものの、二度と会いに来るなと追い返されてしまい、激しいショックを受けてしまいます。

その後はサマンサの家で穏やかに過ごしていたものの、近所の不良少年ウェスに気に入られたことからウェスに言われるままに強盗を働いてしまいます。しかしシリルが被害者に顔を見られたことを知ったウェスは激昂し、すべての罪をシリルに擦り付けようとしたことから、シリルはようやくウェスがシリルを利用していただけだったと悟り、サマンサと共に警察に出頭することになります。

事件はサマンサが被害者に損害を賠償し、シリルが被害者に謝罪することで示談に納まったものの、被害者の息子で自身もシリルに殴られたマルタンは襲い掛かり、シリルはマルタンが投げた石が当たって気を失ってしまいます。慌てたマルタンとその父親は救急車を呼ぼうとするものの、そこでシリルの意識が戻り、シリルは自転車に乗ってその場を後にするのでした。

■おわりに

ダルデンヌ兄弟はベルギー・リエージュに生まれた映画監督であり、映画業界ではめずらしく兄弟で活動している映画監督です。その作品は社会問題をテーマとしており、登場人物の内面を丁寧に描いていることから、国際的に高く評価されています。

今後ダルデンヌ兄弟どのような作品を私たちに届けてくれるのでしょうか。今後が期待されます。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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