シルヴァン・ショメ:『ベルヴィル・ランデブー』を制作した映画監督

シルヴァン・ショメは1963年11月10日にフランスのメゾン=ラフィットに生まれた映画監督です。美術を学んだ後、アニメーターとしての仕事をするようになり「バンド・デシネ」の作品を数多く残しています。そんなシルヴァン・ショメの作品とは、どのようなものなのでしょうか。主要な作品についてご紹介します。

■シルヴァン・ショメとは

1984年に美術学校に入学し、在学中には初のコミック作品となる『Secrets of the Dragonfly』で作話を担当しました。このころからアニメーターにも興味を持ち、1988年にはリチャード・パードン・スタジオでアニメーターの仕事をするためにロンドンに移り住みます。そこでは、プリンシパリティー、ルノー、スウィントン、スイス航空などの企業のコマーシャルを制作しました。

こうした商業的な仕事に取り組む一方で、1991年には初の短編アニメーション作品『老婦人とハト』を制作し始めます。また、SFコミック『The Bridge In Mud』や『Leon la Came』などの作話を担当し、『Leon La Came』は1996年にルネ・ゴシニー賞を受賞。アニメーターとして実力を着実に獲得していきます。

1993年にはカナダに移転し1996年にかけて『老婦人とハト』が完成します。この作品は、アヌシー国際アニメーション映画祭と広島国際アニメーションフェスティバルで大賞を受賞しました。また、英国アカデミー賞の最優秀短編アニメ賞やカートゥーン・ドール、アンジェ・プレミエ・プラン・フェスティバルの観客賞と審査員賞を受賞します。

2004年にはエディンバラにアニメーションスタジオ「ジャンゴ・スタジオ」を創設し、現在もそこで様々なアニメーションを作っています。

■シルヴァン・ショメの作品

シルヴァン・ショメは、バンド・デシネと呼ばれる作風のコミック作品を数多く手がけています。バンド・デシネはベルギーやフランスなどを中心に盛んになった漫画のジャンルであり、作話と作画はそれぞれ別の人が担当することが一般的です。

そんなシルヴァン・ショメの主要な作品をご紹介します。

『老婦人とハト』 1998年

多くの人が行き交うエッフェル塔の広場で、1人の老婆がハトに餌をやっていました。その周りをパトロールする警官は痩せ衰えていて、観光客が落としていったスナック菓子にも手を出してしまうほどでした。彼はカフェでパンを食べている人を横目に仕事に行きますが、公園のハトはパンをもらいブクブクと太っています。

その夜警官は、あの老婦人の夢を見ます。ベンチにいる老婦人の前に行くと、老婦人はなんと彼に豚の丸焼きを出してくれるのです。彼は喜び勇んでかぶりつくと、後ろから服を着た大柄なハトたちが怒りながら身体に食らいついてくるのでした。

翌日警官は、老婦人の後をつけてアパートの場所を確認。彼女の部屋の窓の外にも丸々と太ったハトがおり、落ちてきた一匹の鳩を警棒で殴り持ち帰ります。警官はハトの羽をちぎって被り物を作り、その被り物を被って老婦人の部屋を訪れます。老婦人はお茶と食事を出してくれ、彼はそれを食べてどんどん太っていきました。

ついに警官は、ドアに入るのもやっとというほど太ってしまいます。そしてクリスマスの日、警官は老婦人が別の部屋で研いだばかりのはさみを使って太ったネズミを処分しようとしているのを目撃します。彼は慌てて逃げ出そうとするものの、老婦人に見つかってしまいます。何とか逃げ出しますが、彼は気が触れてしまい、エッフェル塔の下で上半身裸になってハトとともに餌に群がるのでした。

・『ベルヴィル・ランデブー』 2002年

本作品はショメの初長編アニメーションであり、人物や街、船などに過剰なまでのデフォルメが加えられていることが、作品の大きな特長です。

舞台は第二次世界大戦後のフランス。寂しい思いをしていた孫のシャンピオンを元気づけようと、彼のおばあちゃんはテレビで人気歌手トリオ「トリプレット」の番組を見せたり、ピアノや犬のブルーノを与えたりするものの、シャンピオンはどれにも興味を示しません。

そんなある日、おばあちゃんはシャンピオンのベッドで自転車の写真や新聞記事がスクラップされたノートを見つけ、彼に三輪車をプレゼントします。シャンピオンは大喜びで三輪車を乗り回し、やがて成長した彼はツール・ド・フランスに出場することになります。しかし大会の途中で、シャンピオンと2人の選手がマフィアによって連れ去られてしまうのです。おばあちゃんはシャンピオンたちを追って大都市ベルヴィルに辿り着き、彼を助けるために奔走するのでした。

・『イリュージョニスト』 2010年

本作品は、フランス人映画監督ジャック・タチが生前に執筆した脚本をショメが脚色したものです。2010年のベルリン国際映画祭で初上映され、アニー賞をはじめとした数々の国際映画祭でノミネートされました。

舞台は1950年代のヨーロッパ。旅をしながら各地の劇場で舞台を行う時代遅れの奇術師タチシェフは、ある日スコットランドの離島にある小さな村の酒場でショーを行います。電気もほとんど通らない田舎町であったため、時代遅れのタチシェフの手品でも村人たちは大喜び。そしてその酒場で働いていた少女アリスは、タチシェフが本物の魔法使いだと信じ、彼を追ってエディンバラまでついてきてしまいます。

タチシェフはそんなアリスに驚きつつも追い払わず、エディンバラの安宿を拠点とした同居生活を始めます。タチシェフはアリスに故郷の娘の面影を重ねており、アリスに求められるままに衣服や靴を買い与えます。しかしアリスが徐々に大人の女性に成長していく一方、タチシェフの安宿の仕事仲間たちは徐々に歳を取り、皆どこかに去っていくのでした。そして彼自身も、姿を消すべきということを悟るのです。

■おわりに

シルヴァン・ショメはバンド・デシネの作話の仕事を経て、数々のアニメーション作品を制作してきました。そのどれもがユーモアや悲しみ、狂気などさまざまな人間の感情に満ちています。また、音楽や作画がどれも最高におしゃれで、それだけを切り取っても楽しめてしまいそうです。

『ベルヴィル・ランデブー』予告編

『ベルヴィル・ランデブー』公式サイト

『イリュージョニスト』予告編

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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