チャン・イーモウ:『HERO』『グレイトウォール』を制作した映画監督

チャン・イーモウは1950年4月2日中国の陝西省西安で生まれた映画監督です。中国映画界の第五世代の監督として知られており、『HERO』や『グレイトウォール』といった映画史に残る作品を制作しました。そんなチャン・イーモウの人生と作品について詳しく解説していきます。

■チャン・イーモウとは

チャン・イーモウは1950年4月2日に陝西省西安で生まれました。1966年から起きた文化大革命によって農民として3年間、工場労働者として7年間働いたものの、北京電影学院撮影学科に入学。卒業後は西安映画製作所に配属され、チェン・カイコ監督の『黄色い大地』や『大閲兵』で撮影監督をつとめています。

1987年には『紅いコーリャン』で映画監督としてデビュー。同作は1988年の第38回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したものの、中国国内では賛否両論を呼ぶ作品となりました。1990年には『菊豆』 で第63回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、1991年の『紅夢』では第48回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞するなど、国際的にも高い評価を得るようになっていきます。

2000年にはジャコモ・プッチーニのオペラ『トゥーランドット』の演出を担当し、同作は北京の紫禁城において野外上演が行われたこともあり大きな話題になりました。その後も2016年には万里の長城を舞台としたアクション映画『グレイトウォール』を制作、また2018年には平昌オリンピックの閉会式で行われた2022年北京オリンピックへの引継ぎ式の総合演出を担当するなど、映画のみならずさまざまな分野で活躍を見せています。

■チャン・イーモウの作品

チャン・イーモウの作品は『紅いコーリャン』、『紅夢』、『上海ルージュ』などは「紅三部作」とよばれ、赤をはじめとする特定の色を強調する色彩構成を用いました。また一定のテーマに基づいた制作方法やワイヤー・アクションを用いるなど、新しい方法を常に模索している映画監督といえるでしょう。

そんなチャン・イーモウの作品には、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品についてご紹介します

・『紅いコーリャン』 1987年

※画像はイメージです

本作品は1987年に制作された作品で、チャン・イーモウの初監督作品となった作品です。「紅」を基調とした映像美が特長的な作品であり、国外では1988年にベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したものの、中国国内では賛否両論となりました。

1930年代末の山東省。語り手である「私」の祖母九児はラバ一頭で父に売られ、親子ほど年の離れたハンセン病患者の男のもとに嫁ぐことになります。御輿で嫁入りに向かう途中九児は強盗たちに襲われたものの、御輿の担ぎ手である余占鰲に救われます。お互い惹かれ合った2人はコーリャン畑で結ばれ、夫が行方不明になった九児は余と結婚。幸せな日々が続くかのように見えたもの、そこに日本軍が侵攻してきてその生活は一変することになります。

・『菊豆』 1990年

※画像はイメージです

本作品は1990年に制作された作品で、20世紀初頭の中国の因習やエロス、因果応報などをテーマにした作品です。第63回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、第43回カンヌ国際映画祭ルイス・ブニュエル賞を受賞したことで話題になりました。

1920年代の中国。50歳を過ぎた染物屋である楊金山のもとに売られて嫁いできた菊豆は、子どもができないことで毎日のように夫から折檻を受けていました。実は金山にこそ子どもをつくる能力がなく、同居する金山の甥天青は菊豆に同情するようになっていきました。徐々に二人は惹かれ合っていき、やがて菊豆は天青の子どもを身ごもってしまいます。生まれた男の子は「天白」と名付けられ、金山と菊豆の子どもとして育てられることになります。

穏やかな日々が続いていたものの、ある日金山が脳卒中のために体が不自由になったことから、菊豆は天白が彼の子どもではないことを明かしてしまいます。金山は怒り狂ったものの、次第に愛情が芽生えていきました。しかし金山は天白とあそんでいる最中に染料の池に落ちて溺死してしまいます。金山亡きあと菊豆と天青は内縁の夫婦となり天白を可愛がったものの、事実を知った天白は実の父親である天青を殺害。ショックのあまり錯乱した菊豆は自ら家に火をつけ、燃え盛る炎の中に立ち尽くすのでした。

・『王妃の紋章』 2006年

※画像はイメージです

本作品は2006年に制作された作品で、曹禺の代表作『雷雨』を原作とする作品です。第79回アカデミー賞衣装デザイン賞にノミネートされたことでも話題になりました。

時は西暦928年、五代十国の時代。後唐では民は平和に過ごしていたものの、王と王妃の中は冷え切っており、王宮の中ではさまざまな思惑が駆け巡っていました。王は医官に命じて王妃に毒を盛り、王妃は血のつながらない皇太子と密通。しかし皇太子は医官の娘を愛していました。

さまざまな人間の愛憎が渦巻く中、王の王妃への殺意を知った実直なことで知られる第二皇子は白一面が菊の花で覆われ、豪華な宴が催される重要の節句に父への謀反を企てることになります。

・『グレイトウォール』 2016年

※画像はイメージです

本作品は2016年に制作された作品で、万里の長城を舞台に繰り広げられる壮絶な戦いを描いた作品です。

宋王朝時代の中国。黒色火薬を求めて宋にたどり着いた欧州の傭兵ウィリアムとバールは途中馬賊に襲われたものの、命からがら脱出。しかしその夜2人は正体不明の怪物に襲われ、なんとかウィリアムは怪物の腕を切り落とすことに成功。翌朝馬賊に発見された2人は逃亡の途中で万里の長城にたどり着き、頂上を守護する禁軍に捕縛されてしまいます。禁軍はウィリアムの切り落とした怪物の正体を知っており、2人の話から怪物が万里の長城に迫っていることを知り、迎え撃つことになります。

怪物の正体は「饕餮」とよばれる怪物であり、禁軍は襲来した怪物を迎え撃ったものの、シャオ将軍は怪物の罠にかかって命を落とし、腹心のリン隊長が次の将軍に任命されることになります。そして再度怪物が襲来し、ウィリアムとトバールは禁軍とともに怪物を迎え撃つことになります。

■おわりに

チャン・イーモウは中国の西安に生まれた映画監督で、中国映画界の「第五世代」を代表する映画監督として『HERO』や『グレイトウォール』といった作品を制作したことで有名な映画監督です。イーモウの作品はその華麗な映像美で知られており、特に「紅三部作」や『王妃の紋章』の宮廷のシーンなどは映画史に残る名シーンといえるでしょう。

北京オリンピックへの引継ぎ式の総合演出を担当するなど、中国を代表する芸術家としても活躍しているチャン・イーモウ。今後はどのような作品を私たちに届けてくれるのでしょうか。今後が期待されます。

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