トム・ティクヴァ:『ラン・ローラ・ラン』を制作した映画監督

トム・ティクヴァは1965年5月23日に西ドイツのヴッパータールに生まれた映画監督です。ベルリンの映画館で8年間映写技師として働いたのち、映画製作の仕事に携わるようになり、1998年に制作した『ラン・ローラ・ラン』はその年でもっとも成功したドイツ映画となりました。そんなトム・ティクヴァの人生と作品について詳しく解説していきます。

■トム・ティクヴァとは

トム・ティクヴァは1965年5月23日西ドイツのヴッパータールに生まれました。子どものころから映画に関心を持ち、11歳のころには8mmで映画製作を始めるなど、映画製作にかける熱意は並々ならぬものでした。しかし高校卒業後に申し込んだフィルムスクールはすべて不合格となってしまい、ベルリンの映画館で8年間映写技師として働くことになります。

その後ローザ・フォン・ブラウンハイムと出会ったことをきっかけに短編映画製作に乗り出すようになり、1993年には長編映画デビュー。また1994年にはヴォルフガング・ベッカーやシュテファン・アーント、ダニ・レヴィらと映画製作会社を設立しました。

■トム・ティクヴァの作品

トム・ティクヴァの作品の特長はさまざまな国の映画表現を取り入れていることにあるといえます。特に大ヒットとなった『ラン・ローラ・ラン』はそうした傾向が堅調であり、フィルムやビデオ、モノクロ、カラー、アニメなどあらゆる技術を駆使して制作された映画である点が高く評価されました。

そんなトム・ティクヴァの作品には、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品についてご紹介します

・『ラン・ローラ・ラン』

※画像はイメージです

本作品は1998年に制作された作品で、恋人を救うためにベルリンを駆け抜ける主人公をさまざまな映画技法を用いて表現したことが話題になった作品です。1999年サンダース映画祭においてワールドシネマ観客賞を受賞したことで話題になりました。

恋人のマニを救うために20分で10万マルクを用意しなく手はならなくなったローラ。まず車もないローラは父親の働くドイツ外為銀行まで走っていき父親から金を借りようとするものの、拒否されてしまいます。仕方なくマニとの待ち合わせの場所まで行くものの、約束の時間に間に合わなかったため、マニはすでにスーパーに押し入っていました。ローラは仕方なくマニに加担し金を奪って逃走するものの、警察に包囲され、ローラは胸を撃たれてしまいます。

そこで時間が巻き戻され、ローラは序盤のシーンに戻ります。銀行についた後父親を脅して10万マルクをごうだつしたローラは銀行の外で警官隊と鉢合わせ。奇跡的に脱出した人質と勘違いされたローラは保護され、現場から離れることに成功します。ローラはマニの強盗を止めることにも成功するものの、マニは車にはねられ、またも失敗に終わってしまいます。

また時間が巻き戻され、ローラは同じように父親の銀行にたどり着くものの、すでに父親は知り合いの車に乗って去った後でした。再び走り出したローラは所持金をはたいて100マルクのチップを買い、ルーレットの同じ番号に二回続けて賭け、二度とも見事に引き当て10万マルクいじょうの現金を手に入れます。その一方マニは金を取り戻すことに成功。無事に依頼主に金を返し球にはカジノで大金を手に入れたローラと再会し、見事ハッピーエンドとなります。

まるでゲームのようにうまくいかなかったら初めからやり直すというストーリー仕立ての表現はリフレイン・プレイヤーを描いたのではないかという指摘もありますが、作中ではリフレインに関する指摘は一切ありません。

・『ヘブン』 2002年

※画像はイメージです

本作品は2002年に制作された作品で、ポーランドの映画監督クシシュトフ・キェシロフスキの遺作となった三部作の内、唯一脚本が完成していた「天国」編を映画化したものです。また「地獄」編についてはダニス・タノヴィッチによって映画化されました。

イタリア・トリノで英語教師をしているふぃりっぱは大企業の社長ヴェンディーチェのオフィスに時限爆弾をしかけ、ヴェンディーチェ殺害を試みます。実はヴェンディーチェは麻薬売買の黒幕であり、教え子たちが何人も身を滅ぼした上に、ふぃりっぱの夫は中毒死していたのでした。しかし策略は失敗に終わり、たまたまその場を訪れていた父と幼い2人の娘たち、そして掃除婦という罪のない4人が犠牲になってしまいます。逮捕されたフィリッパは自分の罪の重さから気絶してしまい、そんなフィリッパに牽かれた取り調べの通訳者フィリッポはひそかに逃亡の助けを申し出ます。

・『パフューム』 2006年

※画像はイメージです

本作品は2006年に制作された作品で、18世紀パリを舞台にしたパトリック・ジュースキントの『香水 ある人殺しの物語』を映画化した作品です。

舞台は18世紀のフランス・パリ。悪臭漂う魚市場で、ある男の子が産み落とされます。身寄りのないその男の子、ジャン=バティスト・グルヌイユは生まれながらにして数キロ先のにおいも感じ取れるほどの超人的な嗅覚を持っていました。

成長したグルヌイユはある日素晴らしい香りに驚き、その香りをたどっていくと一人の赤毛の少女がいました。少女の体臭にこの上ない心地よさを感じるグルヌイユであったものの、誤ってその少女を殺害してしまいます。少女の香りは永遠に失われてしまったものの、その香りが忘れられないグルヌイユは少女の香りを再現しようと考え、調香師バルディー二に弟子入りし、香水の生成法を学びます。

グルヌイユの天才的な嗅覚で作り上げられた香水は評判となり、バルディー二の店は人気店となったものの、グルヌイユはいまだ満足していませんでした。さらなる調香技術を学ぶため香水の町グラースに旅に出たグルヌイユは、裕福な商人の娘ローラを見つけ、以前街角で殺してしまった赤毛の少女にそっくりな香りであることに気が付きます。この匂いを香水にしたいという欲望にかられたグラースは、恐ろしい香水作りに着手するのでした。

・『王様のためのホログラム』 2016年

※画像はイメージです

本作品は2016年に制作された作品で、デイブ・エガーズの小説を映画化した作品です。

アラン・クレイは大手自動車メーカーの取締役だったものの、会社の業績の悪化の責任を押し付けられ、妻にも去られてしまいます。娘の養育費を稼ぐためどうにかIT企業の営業職に転職し、3D立体ホログラムを使ったテレビ会議システムを売り込むためサウジアラビアに派遣されたものの、そこには傷んだテントが張られているだけであり、上司からのプレッシャーにアランは悲鳴を上げるのでした。

■おわりに

トム・ティクヴァは西ドイツのヴッパータールに生まれた映画監督で、『ラン・ローラ・ラン』や『ヘブン』、『パフューム ある人殺しの物語』といった話題作を制作したことで知られている映画監督です。子どものころから映画に関心を持ち、映写技師として数多くの映画に触れたティクヴァの作品は、古今東西さまざまな映画作品の表現技法を取り入れており、観客を魅了する作品に仕上がっています。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

関連記事一覧