アトム・エゴヤン:戦争や別離、犯罪をテーマとした作品を制作する映画監督

アトム・エゴヤンは1960年7月19日アラブ連合共和国のカイロに生まれた映画監督です。トロントで国際関係学を学ぶと映画製作に関心を持つようになり、以降戦争や別離、犯罪などをテーマとした作品を制作してきました。そんなエゴヤンの人生と作品について詳しく解説していきます。

■アトム・エゴヤンとは

アトム・エゴヤンは1960年7月19日アラブ連合共和国のカイロに生まれました。父親は画家、母親は劇作家という芸術一家であり、亡命したアルメニア人でもありました。3歳の時に一家でカナダに移住し、トロント大学に進学して国際関係学を学ぶと映画製作に関心を持つようになり、1977年には短編映画を制作しています。

1980年代では何点かの短編映画を制作したのち、1984年に『Next of Kin』で長編映画監督デビュー。1987年の『ファミリー・ビューイング』は1988年の第38回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に出品されインターフィルム賞を受賞。またジニー賞でも作品賞をはじめ8部門にノミネートされたことにより、国際的にも名前を知られた映画監督となっていきました。

1994年に発表した『エキゾチカ』は第47回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、国際映画批評家連盟賞を受賞。また1997年の『スウィート・ヒアアフター』は第50回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、またジニー賞の作品賞・監督賞も受賞しています。

2002年には自らのルーツであるアルメニアの歴史におけるオスマン帝国によるアルメニア人虐殺を主題とした『アララトの聖母』を発表。同作で3度目の作品賞を受賞しています。2013年の『デビルズ・ノット』は批評家に酷評され、2014年に発表した『白い沈黙』が第67回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映されたものの評価はよくありませんでした。

■アトム・エゴヤンとは

アトム・エゴヤンの作品は戦争や別離、人間の破滅といったテーマが多く、静かな展開の中で登場人物たちの心情が丁寧に描かれていることが特長です。そんなエゴヤンの作品には、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品についてご紹介します。

・『エキゾチカ』 1994年

※画像はイメージです

本作品は1994年に制作された作品であり、カンヌ国際映画祭において国際批評家賞を受賞。またジニー賞においても8部門を受賞しました。

トロントのナイトクラブ「エキゾチカ」。そこではDJのエリックと税務調査員のフランシスがダンサーのクリスティーナを奪い合っていました。ある日フランシスはエリックに騙されてクリスティーナに触れてしまいます。それは店で禁じられた行為であり、フランシスは店の出入りを禁じられてしまいます。フランシスは人を雇ってクリスティーナと連絡を取ろうとしますが、その一方でエリックを殺害する計画をたてます。

・『スウィート・ヒアアフター』 1997年

※画像はイメージです

本作品は1997年に制作された作品で、カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞。またジニー賞においても作品賞、監督賞、撮影賞を受賞しました。

舞台はカナダの小さな田舎町。子どもたちを乗せたスクールバスが転落死、多数の死傷者を出すという自己が起きます。弁護士のミッチェルは犠牲者の親たちを説得し、集団訴訟を起こす準備を進めていたものの、唯一の生存者であり事故の後遺症で車いす生活を強いられている15歳のニコールが証言したことで、思わぬ結末を迎えることになります。

・『秘密のかけら』 2005年

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本作品は2005年に制作された作品で、カナダ・イギリス合同で制作されました。

人気コメディコンビであるヴィンス・コリンズとラニー・モリスが宿泊する予定だったニュージャージーのホテル「パレス・デル・ソル」の一室のバスルームで一人の女性が亡くなっているのが発見されます。女性はモーリーン・オフラハティといい、ヴィンスとラニーがマイアミで知り合ったジャーナリストを志望の大学生でした。死体発見時ヴィンスとラニーの両方にアリバイがあったため、モーリーンは自殺したと結論付けられたものの、この事件がきっかけでヴィンスとラニーはコンビを解消することになります。

そして15年後。若手ジャーナリストのカレン・オコナーはこの未解決事件の真相を突き止めるべくヴィンスとラニーの二人に近づきます。ラニーは自堕落な自伝を送り付け、またヴィンスにいたってはカレンに薬物を飲ませてみだらな写真を撮って脅迫するものの、シャンパンと睡眠薬を飲んでマイアミのホテルで自殺してしまいます。

事件の真相はモーリーンがヴィンスとラニー双方と関係をもったことをネタに脅迫したことにより、ヴィンスがモーリーンを殺害し、二人で死体をロブスターと一緒に氷の箱に詰めてニュージャージーに送ったというものでした。しかしこの2人を裏で操っていたのはモリスの秘書ルーベンだったのです。

・『デビルズ・ノット』 2013年

※画像はイメージです

本作品は2013年に制作された作品で、1993年に実際に起きた事件を元にマーラ・レヴァリットが執筆したノンフィクションを原作にしています。

1993年のアメリカ合衆国アーカンソー州、ウェスト・メンフィス。3人の児童が行方不明になったのち、無残な死体となって発見されます。捜査した地元警察はオカルトとヘヴィメタルが好きな地元の問題児たちを逮捕し、悪魔崇拝者による猟奇殺人と決めつけて強引な方法で彼らを追い詰めていきます。しかしその手法に疑念を抱いた私立探偵のロン・ラックスは独自に調査に乗り出し、被害者児童の母親のひとりであるパム・ホッブスもまた真犯人は別にいるという疑念を抱くようになります。

・『手紙は覚えている』 2015年

※画像はイメージです

本作品は2015年に制作された作品で、ホロコーストを題材とした作品です。

主人公のゼヴは90歳。ニューヨークの介護施設で暮らしています。ゼヴは認知症を患っており、最愛の妻ルースが亡くなったことも思い出せないほどになっていました。ある日ゼヴはアウシュビッツ収容所からの生還者で友人でもあるマックスから一通の手紙を渡されます。その手紙にはゼヴとマックスの家族を殺害したナチスの兵士に関する情報が記されていました。

その兵士の名前はオットー・ヴァリッシュといい、現在は「ルディ・コランダー」という偽名を使って暮らしているらしく、身体が不自由なマックスに代わってゼヴは復讐を決意。一通の手紙と残された記憶を頼りにオットー・ヴァリッシュを探す旅に出ることになります。

■おわりに

アトム・エゴヤンはアラブ連合共和国カイロに生まれた映画監督で、戦争や別離、犯罪などを主題とした作品を制作してきました。作品は静かなタッチで物語が進んでいくものの、登場人物たちの心情は細やかに描かれており、見るものをひきつけるところがあります。

エゴヤンは2015年の『手紙は覚えている』を最後に新しい作品を発表していませんが、今後どのような作品を発表することになるのでしょうか。今後が期待されます。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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