アラン・レネ:『夜と霧』『二十四時間の情事』を手掛けた映画監督

アラン・レネは1922年6月3日フランス、ヴァンヌに生まれた映画監督です。幼いころから映画に関心を持つようになり、映画編集者として働き始めたのち短編映画を制作するようになり、1955年にはナチスによるアウシュヴィッツ強制収容所を扱った『夜と霧』を発表。その後も戦争や芸術家などをテーマとして作品制作を続けていきました。そんなアレン・レネの人生と作品について詳しく解説していきます。

■アラン・レネとは

アラン・レネは1922年6月3日フランス・ヴァンヌに生まれました。持病の喘息のためあまり学校に通うことは叶わず、家庭で教育を受けながらありとあらゆる書籍を読み漁る子ども時代を過ごしていたといわれています。10歳の頃には映画に関心を持つようになり、12歳の誕生日には両親からもらった8mmカメラで短編映画を制作するようになり、次第に俳優になることを志すようになっていきます。

1940年ごろには演技の勉強をしていたものの、1943年にはフランスの高等映画学院に入学。1945年には兵役につくも、戦後パリに戻ると映画編集者として働き始め、短編映画の制作を再開。1948年にはヴァン・ゴッホをテーマとした短編映画を制作し、1950年の第22回アカデミー賞では35ミリにリメイクした作品が短編映画賞を受賞。絵画はレネにとって重要なテーマであり続け、その後も『ゲルニカ』や『ゴーガン』といった作品を制作し続けました。

1955年にはナチスによるアウシュヴィッツ強制収容所を扱った『夜と霧』を発表。現在同作は映画史に残る傑作と称されているものの、1956年の第9回カンヌ国際映画祭の際には西ドイツ大使の要請を受けたフランス外務省から出品を取り下げるよう命令され、コンペティション部門外の上映となりました。

1959年には日本の広島を舞台に制作した『二十四時間の情事』を制作。「フランス人は日本人が体験した被害をどこまで知りうることができるのか」というテーマのもと制作された同作は、第12回カンヌ国際映画祭への出品は『夜と霧』と同じ理由で見送られたものの、映画批評家クロード・モーリアックから「この年最大の衝撃作」と称され、現在では「ヌーヴェル・ヴァーグのもっとも重要な作品のひとつ」に位置付けられています。

その後もヌーヴェル・ヴァーグのセーヌ左岸派のひとりとして数多くの作品を制作していたものの、2014年3月1日にはパリ市内で死去。91歳の生涯を閉じることになります。

■アラン・レネの作品

アラン・レネの作品の特長は戦争や個人の精神や記憶にもたらす影響をテーマとして取り扱った作品を数多く制作している点でしょう。『二十四時間の情事』や『ミュリエル』『戦争は終わった』などはそうした作品の一つであり、戦後フランス映画界で大きく注目されました。

そんなアラン・レネの作品には、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品についてご紹介します。

・『夜と霧』 1955年

※画像はイメージです

本作品は1955年に制作された作品で、アウシュヴィッツのユダヤ人強制収容所で行われたホロコーストを告発したドキュメンタリー作品です。題名は1941年12月7日に出されたヒトラーの総統命令「夜と霧」に由来しており、全32分という短い作品であるものの、ニュースフィルムと写真を交互に映し出すコラージュの方法を取り上げ、全世界に大きな衝撃を与えました。

・『二十四時間の情事』 1959年

※画像はイメージです

本作品は1959年に制作された作品で、広島を舞台に第二次世界大戦により心に傷を持つ男女が織りなすドラマを描いた作品です。フランス人が原爆をどこまで知ることができるのか、というテーマに基づいて制作された本作品は個人の内面にある戦争を描いた作品であるとして大きな話題になりました。

広島で反戦映画のロケに訪れたフランス人女優。彼女は日本人男性と知り合い、深い仲になっていったものの2人はともに第二次世界大戦で悲劇的な経験をしていました。日本人男性はアメリカ軍の原爆投下によって家族全員を失っており、フランス人女性もまた故郷ヌヴェールでナチス将校と恋仲だったため周囲から糾弾や迫害を受けた過去を持っていました。

・『ベトナムから遠く離れて』 1965年

※画像はイメージです

本作品は1965年に制作された作品で、北ベトナムへの空爆やアメリカ国内での戦争抗議の焼身自殺といった反戦運動を背景に、クリス・マイケルが呼びかけオムニバス映画として制作された作品です。レネはもちろん、アニエス・ヴァルダ、クロード・ルルーシュ、ジャン=リュック・ゴダール、アメリカのウィリアム・クラインといった早々たるメンバーが参加したことで大きな話題になりました。

・『風にそよぐ草』 2009年

※画像はイメージです

本作品は2009年に制作された作品で、クリスチャン・ガイイの小説『風にそよぐ草』を映画化した作品です。2009年5月20日には第62回カンヌ国際映画祭で初上映され、審査員特別賞を受賞しました。

ある日マルグリットは買い物の帰りにひったくりに会い、財布ごとバッグを奪われてしまいます。バッグはそのまま行方知れずになったものの、金が抜かれた財布が落ちているのを見つけた初老の男ジョルジュは財布に入っていた自家用機操縦免許のマルグリットの写真を見て心惹かれるようになっていきます。

いろいろと思いあぐねているうちに財布を警察に届けることにしたジョルジュだったものの、後日マルグリットからお礼の電話を受けた際そっけない態度に失望して、無礼な態度をとってしまいます。反省して謝罪の手紙を書き、わざわざ直接ポストに入れたものの、返事は「気にしていない」だけ。ジョルジュの行動はどんどんエスカレートしていき、毎晩マルグリットの家の留守電に「話がしたい」と吹き込んだり、車のタイヤを切り裂くといった行動を犯すようになっていきました。

警察から注意されたことによりジョルジュからの連絡は来なくなったものの、マルグリットはジョルジュを傷つけてしまったのではないかと思い悩むようになっていきます。そしてある夜ジョルジュの家に電話し、彼の妻スザンヌから居場所を聞き出して会いに行ったものの、それはジョルジュとはスザンヌを含めて友人関係を築きたいというものであり、さらにジョルジュは失望することになるのでした。そして3人は思いがけない結末を迎えることになります。

■おわりに

アラン・レネはヌーヴェル・ヴァーグの映画監督の一人で、戦争と人々に及ぼす影響をテーマとした数々の名作を描いた人物です。『夜と霧』や『二十四時間の情事』といった作品は、映画史に残る作品の一つに数えられており、後世の映画監督たちにも多大な影響を与えたといえるでしょう。これを機にレネの作品を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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