オーストラリア自然遺産西オーストラリア・シャークベイ:豊かな海洋世界と古代生物ストロマトライト

西オーストラリア・シャークベイはオーストラリア西海岸に位置する自然保護区である。1991年に世界自然遺産に登録された。2つの異なる主要植物類の境界線に位置することから、他では見ることのできない多種多様な動物が同じエリア内に生息している。海面下では海草種の活躍により豊かな海洋環境が築かれており、特にストロマトライトという古代生物の存在が注目されている。

シャークベイってどんなところ?

西オーストラリア・シャークベイ(Shark Bay, western Australia)はオーストラリア連邦・西オーストラリア州中心部、オーストラリア大陸最西部に位置する自然保護区です。州都のパースからは車で10時間、飛行機で2時間ほどの場所に位置しています。

陸上環境・海洋環境共にその美しさと、地球及び生物の歴史的進化過程を示す顕著なサンプル、そこに生きる生物の多様性 、絶滅危惧種を多く含むことから、地球を代表して保護するに値すると認められ、1991年にユネスコの世界自然遺産に登録されました。

エリア内には、主に5つの島、3つの陸上保護区、2つの海洋保護区が含まれており、その総面積は2300平方kmに及びます。

乾燥した荒涼な大地であったことから、ヨーロッパ系移民の入植は活発に行われておらず、手つかずのままの自然が残されています。オーストラリアの先住民であるアボリジナル・ピープルには古くからこの地で生活を営んでおり、現在も3つの部族が伝統的な土地の所有者として認められています。エリア内にはアボリジナル・ピープルにとって重要なポイントが多数存在し130箇所が先住民遺産として登録されています。

貴重な陸上生態系

エリア内では西地区とエレミヤン(Eremaean)地方の異なる2つの主要な植物種が隣りあい、小さなエリア内に様々な植物が混在することが特徴的です。オーストラリアに生息する維管束系植物の25%の(283種)がシャークベイの限られたエリアに生息しており、科学的に新種とされる51種の固有植物の生息が確認されています。フレシネ川河口(Freycinet Estuary)の南には、樹木のヒース(Heath)と呼ばれる固有種の種類が多く確認されています。

シャークベイ地域には半島や島が多く外環境からの影響が少なかったため、珍しい動物も多く生息しています。絶滅の危機に瀕しているオーストラリアの哺乳動物26種のうち、ブーディー(boodie) 、カクレネズミカンガルー(burrowing bettong)、ルフォウスワラビー(rufous hare wallaby)、バンデッドワラビー(banded hare wallaby),シャークベイマウス(Shark Bay mouse)、ウェスタンバッレッドバンディクート(the western barred bandicoot)の5種はベルニエ・ドルレ諸島(Bernier Dorre islands)で確認されています。

シャークベイには豊富な鳥類が生息しており、オーストラリアの鳥類のうちの230種(全体の35%以上)が記録されています。オグロインコ(regent parrot)、 ニシキバラヒタイ(western yellow robin)、ブルーブレスフェアリーレン(blue-breasted fairy wren)、ミドリホウセキドリ(striated pardalotega)などの多くの鳥にとってシャークベイが最北の活動エリアとなっています。

また、この地域は両生類と爬虫類の多様性としても注目されており、約100種が確認されています。この乾燥した地域はサンドヒルフロッグ(sand hill frog)などのあまり水分を必要としない種にとっても重要な産卵地です。シャークベイ内では3つの固有種のトカゲが確認されており、オーストラリアに生息する30種類のトカゲ種のうち10種類が確認されています。

海草の活躍

シャークベイは海草類の多さでも有名であり、湾内の4,000平方km以上は海草に覆われています。1,020平方kmのウーアメル海草盆地(Wooramel Seagrass Bank)は世界でも最大級の規模を誇っています。同湾内で12種と

多様な海草類が確認されており、これは世界的に見ても珍しいことです。

海草類はシャークベイの進化に大きく貢献しています。物理的・化学的に生物の生活環境を変え、フォーレ岩床(Faure Sill)などの主要な海洋地形の開発にも繋がりました。フォーレ島(Faure Island)はペロン半島(Peron Peninsula)から本土東部のシャークベイを横切るフォーレ岩床の振興部分です。

5,000年にわたる海草の成長により非常に塩分濃度の高いハメリン池(Hamelin Pool)とレハリドン入江(L’haridon Bight)が誕生しました。この塩分濃度の高い条件(海水の約2倍)はシャークベイで有名なストロマトライト(stromatolite)を生成するシアノバクテリア(cyanobacteria)を増殖させました。

ウーアメル海草盆地(Wooramel Seagrass Bank )は、塩分濃度の高い海水からの塩分が沈殿しており、地質学の研究に役立っています。シャークベイの大部分が手付かずのまま残されており、そこでは生物学・地形的進化のプロセスをはっきり確認することができます。これらは湾内の水文学系の進化やハンメリ池の高塩分濃度の理由、現在起こっている新種の誕生過程、氷河期時代の生態系の調査に利用されています。

緑豊かな海草のベッドは絶滅危惧種を含む海洋生物の避難所であり、特にミドリガメ(Green Turtle)やアオウミガメ(Loggerhead Turtle)の繁殖地として重要視されています。シャークベイは絶滅危惧種であるジュゴンのオーストラリア最大級の生息地でもあり、湾内では約1万頭が確認されています。またザトウクジラ(Humpback whale)がインド洋から南極海へ移動する際に湾に立ち寄ることでも有名です。ザトウクジラは1962年に約2万頭が訪れていたと推定されていますが、過去の搾取によって800頭まで減少しました。個体数は回復しており、現在は3,000頭ほどが確認されています。モンキーマイア(Monkey Mia)周辺ではバンドウイルカ(Bottlenose Dolphin)が頻繁に目撃されています。また個体数の減っているマンタ(Manta)も観察されています。

ストロマトライト

シャークベイでは原生するストロマトライト(stromatolite)が大量に確認できる世界でも貴重な場所です。ストロマトライトは光合成によって酸素を生み出すシアノバクテリア(cyanobacteria)と呼ばれる真正細菌です。藍藻類や

海水の石灰砂や泥粒などが何層にも積み重なりドーム状の形をしています。成長速度は非常にゆっくりで1年に1mm程度しか成長しません。日中は光合成を行い、夜間は泥などの堆積物を粘液で固め、表面に付着した藍藻類が呼吸のために上に上に分裂しながら、日が昇ると再び光合成を繰り返すという珍しい生態系を持っています。何十億年も前の太古の時代から生きながらえており、世界最古の生命体ではないかと言われています。

化石となったものは世界各地で発見されていますが、シャークベイ内のハメリン池(Hamelin Pool)のストロマトライトは、原生したものが多く確認されています。また、原生代の生息地に匹敵する形態的多様性と豊富さを維持しており、地球の生物圏の性質や進化をカンブリア紀初期まで遡って研究できる「生きた標本」として扱われています。

シェルビーチ

シャークベイの海岸線は打ち上げられた真っ白な貝殻で覆われた美しい「シェルビーチ」としても有名です。中には4000年以上も前に蓄積した貝殻が侵食を受け徐々に結晶化したものもあります。ビーチの長さは100km以上あり、その絶景を見に多くの人が足を運んでいます。

保護活動

シャークベイはその荒涼な環境から元々人間が住んでおらず、人間の経済活動の影響をあまり受けていませんでしたが、1991年の世界遺産登録時に牧畜や野生動物からの影響を含むいくつかの影響が出ると懸念されました。

エリア近辺では塩の採掘業や石膏鉱業などの産業活動が環境に与える影響などが事前に懸念され、環境を優先するための管理が始まりました。また観光業や人口増加に伴う影響を抑えるために環境保護への配慮がなされています。より広範囲の環境を保護するために世界遺産指定エリアの拡大も検討されています。

保護区内では特定の地域への一般のアクセスを制限したり、トロール漁業を管理したり、レンジャーの数を増やすなどして、環境の保護を進めています。

気候変動は自然遺産にとって多大なるダーメジを与えるものとして危惧されています。中でも火災は分布が制限されている種族に深刻な影響を与える可能性があり、オーストラリアはこれらの潜在的な脅威に対処するために国家レベルでさまざまな措置を導入しています。

オーストラリア・環境エネルギー省公式ホームページ

アボリジナル・ピープルについて

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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