高齢化:世界に迫りくる高齢化、どのように立ち向かっていくべきかを考える

日本は世界に先駆け超高齢社会に突入し、日本の動向に世界中が注目している。しかし、高齢化してくるのは日本だけに限らず、一人っ子政策を敷いていた中国などは、恐るべきスピードで高齢化を迎えると言われている。その対策として、中国の公的医療保険制度は、2020年までに「皆保険」の実現を目指している。
世界的に医療・介護人材の確保合戦(?)が予想されるなかで、理想的で効率的な医療・介護の仕組みを社会保障先進国のスウェーデンに探ってみた。

世界は高齢化している

国連は2016年6月に「高齢化する世界人口:1950-2050」を発表し、高齢化について警鐘を鳴らしました。73億4,947万人(2015年時点)の世界総人口は、2060年になると101億8,429万人まで膨れ上がると予想されており、世界規模で「高齢化」が急速に発展している状況です。世界でも人口の多い中国では、2030年には総人口が約14億5,000万人となり、そのうち65歳以上が占める割合は20.2%、さらに2055年には27.2%となる予想です。

「高齢」に関する言葉の定義

「高齢化」や「超高齢社会」という言葉を使用していますが、高齢化にも基準があり、WHO (世界保健機構)と国連は以下のように定めています。 

  • 65歳以上人口の割合が総人口の約7%超で「高齢化社会」 
  • 65歳以上人口の割合が総人口の約14%超で「高齢社会」 
  • 65歳以上人口の割合が総人口の約21%超で「超高齢社会」 

※ 高齢化率 = 老年人口(高齢者人口)÷ 総人口 × 100

というのが、「高齢」に関する言葉の定義になっています。「超高齢化社会」などと言いたくなりますが、間違った使い方だということがわかります。ニュースなどでは言葉の定義は触れられませんが、しっかりと使い分けていきたいですね。

21世紀後半には、さらに世界人口の高齢化が急速に発展していくことが予想されています。

アジアにも忍び寄る高齢化の波

前述した通り2015年の世界の総人口は73億4,947万人ですが、45年後の2060年には、101億8,429万人になると見込まれています。加えて、世界の総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率 = 老年人口<高齢者人口>÷ 総人口 × 100)は、1950年の5.1%から、2015年には8.3%、2060年になると18.1%まで上昇し、21世紀後半を迎える頃にはさらに世界人口の高齢化が急速に発展することが予想されています。

そもそも高齢化問題は先進国地域を中心とした問題と捉えられがちですが、それは21世紀前半のケースであり、今世紀の後半ともなると、高齢化の波は途上国にも押し寄せてくると想定されています。2030年になれば、ヨーロッパの主要国は軒並み「超高齢社会」になり、大国であるアメリカ、中国、ロシアは「高齢社会」、世界の人材センターとして期待されるアジアの諸国タイ、インドネシア、インドも「高齢化」を迎えるのです。

では、地球レベルで進む高齢化にどう対応するかを考える前に、医療・介護の先進国であるスウェーデンについて一概してみようと思います。なぜスウェーデンかと言いますと、スウェーデンは先進国のなかでも高齢化が早く、高齢化率が1950年代には既に10%を超え、1980年代には17%に達していました。こうした事態に対し、①高度成長から安定・低成長下へと経済基調が変化する中で、限られた医療資源を有効かつ効率的に使用する、
②サービスを受ける高齢者のQOLの向上を図る、という2つの観点から制度改革を行っていました。これらが「エーデル革命」といわれる医療・介護の制度改革であり、日本の介護保険制度も大いに参考としています。
これには日本のみならず中国も皆保険を掲げてこれからの急激な高齢化に対応しようとしています。加えて中国の介護に関する仕組みは、日本の介護保険制度を参考にしています。しかし、日本の介護保険もまだまだ試行錯誤を繰り返している真っただ中にあるのは日本国民としては周知の事実です。

これからは地球上にある資源、特に人的な資源を共有していかなければならない時代に突入し、今後の地球レベルの高齢化には「競争」ではなく「共創」で制度を作りあげて、さらに持続可能にしていかなければならないのです。

スウェーデンを参考にした制度の整備について日本の医療・介護の現状への提案

スウェーデンにおける高齢者医療・介護に関する改革の現状から、高齢化する世界各国はインプリケーションが得られるかを以下の4つの視点で考察したいと思います。

1点目は、どのような観点から高齢者医療・介護の連携のあり方を整理するかという点である。スウェーデンの経緯を鑑みれば、「制度面」ではなく「機能面」から整理した方が良いのではないかと考えます。すなわち、予算などの制度面から先に整理していくのではなく、患者やサービスが提供される地域・現場の実態を中心にサービスのあり方を組み立てるべきです。訪問看護・訪問介護・訪問リハビリテーションといった日々必要とされる医療・介護サービスは、一体となって提供されるべき社会システムの構築が急務であると考えます。日本で、療養病床の転換が進むとともに、後期高齢者の増加に伴うサービスニーズの高まりを在宅中心で対応していくためには、これまで療養病床で抱え込んでいた看護師等の医療スタッフをいかにして円滑に介護と連携させつつ、在宅サービスに移行していけるかが最大のポイントです。また同時に、医療保険側では、難病患者、ガンの疼痛管理を必要とする患者等への訪問看護について、整備を進める必要があるのではないでしょうか。

2点目としては、医師をいかに在宅(在宅化された介護施設を含む)に関与させるかという点について考えてみます。スウェーデンのサービス提供体制で注目に値するのは、看護師の役割です。エーデル改革に伴い、医療における看護師の自立性が増し、大幅なコスト上昇をもたらすことなく高齢者が在宅で生活をできるだけ長く続けることを可能にしました。同時に、在宅等が症状の重い者も最後まで看取る場に変容をしています。また、初期医療・病院における入院医療では、財源の増加が困難な中、医師が真に診るべき医療に特化することで、医療の効率性を高めてきています。そして、特に医療ニーズの高い人についてはナーシングホームで看護師が中心に看ており、医師については地区診療所等のプライマリ・ケア医(家庭医)が訪問診療を行っています。在宅の場合も、看護師がサービスの中核という構図は同じように行われています。近年日本でも在宅医療の効率的な展開を図るという観点から、診療看護師といった新しい分野が進出してきています。特定医行為を行える診療看護師の拡大と地域での更なる活躍を待ちたいところです。

実際、スウェーデンでは医療・介護の接着点(時としてマネジメント面でも)として、看護師が中間層として存在することが、在宅等での円滑な医療・介護の提供を可能にしています。また、医師の活動をより高度な医療面に集中することにより、医療のパフォーマンスが上げられれば、現在相当にハードな医師の労働状況も改善され、結果的に在宅医療に対する医師の関与の可能性も高めることができると思います。昨今の働き方改革に合わせて病院医師の働き方を検討する一助になるのではないでしょうか。

3点目としては、上記を踏まえ、在宅・施設における医療・介護サービスをどのような「場所」で構築していくかという点について考えてみます。既にスウェーデンでは日本でいう施設系サービスはなく、社会サービス法上は「特別な住居」があるのみとなっています。また、スウェーデンでのサービスは24 時間常駐する医療・介護スタッフが存在するか否かによって区分されているのみです。スウェーデンでは、「自宅・シニア住宅」と「特別な住居」の役割分担をより明確化する方向で進むものと考えられています。今後、日本においても「施設とは何か」、「在宅とは何か」という問いが生じてくることは間違いありません。本人が希望する終の棲家を「在宅」と位置づけるべきではないかと思います。

最後に、リハビリテーションと日本の老人保健施設について鑑みてみます。周知の通りスウェーデンには老人保健施設に該当する中間施設はありません。老人保健施設が、在宅復帰支援のためのリハビリテーションを行う施設として、本来の役割を十分に果たすことが必要になります。この点においては日本が世界をリードできるリハビリテーションが重要ではないでしょうか。リハビリテーションのイメージが「運動すること」という概念から日常生活そのもの自体がリハビリテーションとなることを期待していきたいと思います。

以上、4つの視点から日本の医療・介護について考察してきました。2060年ご自身が何さになっているのかを想定し、幸せで住みやすい世界がそこにあるのかをぜひ想像してみて、高齢社会に自分の役割が何かを考えながら今を生き抜いてほしいと思います。

世界の高齢化に伴い、持続可能な対策について

前述したスウェーデンと同じような道を今後アジア諸国が辿り着くとすれば、施設という概念を維持する実益も、在宅という概念を「自宅」に限る実益も乏しいかもしれません。現行のような「施設」か「在宅」かという区分ではなく、日本においてもまだまだ進まないプライマリ・ケア医療を内包して24時間対応するサービスなのか否かで大きく二分すべきであるとここで提案したいと思います。そして24 時間対応型の主な担い手としては現在の特別養護老人ホームが役立つと考えています。こうした24 時間対応の施設では、在宅ではケアできないような症状の重いにも関わらず、医療機関では受け入れられない高齢者に対するサービスを積極的に行うのはどうでしょう。スウェーデン以上に高齢化し、後期高齢者の増加も見込まれる日本・中国において、今からケアハウス等の整備を図っておくことが持続可能な政策になるのではないでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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