ウィルキー・コリンズ:『白衣の女』『月長石』を執筆した小説家

(Public Domain/‘Portrait of British writer Wilkie Collins (1824-1889). Picture by Elliott and Fry of 55 Baker Street, taken possibly in 1871. Library of Congress, who state “No known restrictions on publication.”’ by Elliott & Fry. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

ウィルキー・コリンズは1824年1月8日イギリスのロンドンに生まれた小説家で、『白衣の女』や『月長石』などの推理小説を執筆。その作品は大ベストセラーとなり、ヴィクトリア朝を代表する推理小説家の一人に数えられています。そんなウィルキー・コリンズの人生と作品について詳しく解説していきます。

■ウィルキー・コリンズとは

※イギリスのロンドン

ウィルキー・コリンズは1824年1月8日イギリスのロンドンに生まれました。父親はロイヤル・アカデミーの風景画家ウィリアム・コリンズであり、その名前は父親にちなんで名づけられました。1835年からはメイダベール・アカデミーの学校に通い始めたものの、1836年から1838年までは両親と共にイタリアとフランスに滞在。コリンズは語学に優れていたため、すぐにイタリア語とフランス語を話せるようになったといわれています。

1838年からは1849年まではコール牧師の私立寄宿学校に学んだのち、1840年には父の友人が所有する茶の販売会社に就職。コリンズは事務的な仕事を好まなかったものの、5年近く仕事を続けました。その後法律家を志したこともあったものの、父の宗教的な几帳面さや保守的な考えに反発したコリンズは文筆家として生計を立てることを決断。1843年にはイルミネーション・マガジンで執筆をはじめ、1850年には処女作となる『アントニア』の出版を果たしています。

その後出版された『白衣の女』は記録的な大ヒットとなり、書店には購入を求める人々が列をなすほどでした。また当時の政治家グラッドストーンがその続きを読みたいがために知人とのオペラ鑑賞をすっぽかすなど、イギリスの人々の熱狂ぶりは大変なものであり、たちまちコリンズはベストセラー作家の仲間入りを果たすことになります。また1868年には『月長石』を出版。同作は最初期の長編推理小説として名高い作品で、T・S・エリオットからは「最初の最大にして最良の推理小説」と絶賛されるほどでした。

こうした作家としての活動の一方、晩年は関節炎の鎮静剤として服用した阿片中毒に陥り、ドッペルゲンガーなどさまざまな厳格に悩まされることとなりました。またこのころには執筆も上手くいかず、1889年9月23日に65歳の生涯を閉じることとなります。

■ウィルキー・コリンズの作品

ウィルキー・コリンズの作品は、当時「センセーショナル小説」と呼ばれ、今日の推理小説やサスペンス小説の先駆けと見なされています。また国内の社会問題にも強い関心を寄せており、作中に聴覚障碍者を描写していることも注目されました。またその一方で晩年悩まされることとなった阿片の幻覚症状から見たと思われる奇妙な人物が登場することもあり、コリンズの作品は当時のイギリス社会に対するコリンズの観察眼を示している一方、コリンズの個人的な問題も示唆しているといえるでしょう。

そんなウィルキー・コリンズの作品には、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品をご紹介いたします。

・『白衣の女』 1859年

(Public Domain/‘Wilkie Collins (British, 1824-1889): The woman in white, front cover published in 1890’ by Cover art 1889 Chatto & Windus yellowback. Image via WIKIMEDIA COMMONS)

本作は1859年に発表された作品で、ディケンズの雑誌All the Year Roundに連載された作品です。発売と同時に大ブームを起こし、書店には行列ができる騒ぎになりました。

画家のウォルター・ハートライトはリマリッジ館で働くことになります。働く前に家族に挨拶した帰り、深夜にもかかわらず突然前進白い服を着た不思議な女性と出会い、ハートライトはロンドンまで一緒に向かうことになります。

翌日リマリッジ館では姉で快活なマリアン・ハルカム嬢と美しく優しいローラ・フェアリー嬢が待っており、ローラとハートライトは次第に惹かれつつありました。しかしローラの婚約者であるパーシヴァル・グライド協が登場したことで、ハートライトはローラの幸せを祈りながらロンドンに戻ることになります。一方のローラはパーシヴァル卿と結婚し、姉のハルカム嬢と一緒にブラックウォーター・パークに引っ越し新婚生活が始まるものの、ハルカム嬢パーシヴァル卿がローラのお金目当てで結婚したことを偶然知り、ローラの命が危ないとハートライトに助けを求めます。

物語はパーシヴァル卿とその友人のフォスコ伯爵、そしてハートライトが出会った白衣の女の謎が複雑に絡み、そして次々と謎が明かされることとなります。

・『月長石』 1868年

※画像はイメージです

本作は1868年に出版された作品で、19世紀後半のイギリス小説家で大ベストセラーとなった作品です。その後もたびたび映画化やドラマ化がなされ、イギリスを代表する推理小説の一つとされています。800ページ近くの大長編であり、T・S・エリオットからは「最初の、最長の、最上の探偵小説」「最大にして最良の推理小説」と絶賛されたことでも有名です。

ジョン・ハーンカスル卿は非合法の手段でインドの秘宝と呼ばれる宝玉「月長石」を奪い、イギリスに持ち込んでしまいます。ハーンカスル卿は月長石をヴェリンダー卿未亡人である妹の娘レイチェルの誕生日プレゼントにするべくその旨を遺言書に記し、遺言執行人をヴェンダー卿未亡人の姉の息子フランクリン・ブレークに指名。しかしそのころ月長石を追ってきたと思わしきインド人がハーンカスル卿に付きまとい始めていました。

そして誕生日会の晩餐会。月長石が盗まれる事件が発生。スコットランド・ヤードから部長刑事が派遣され、調査が始まるものの、そこで判明したのは意外な事実でした。

■おわりに

ウィルキー・コリンズは1824年1月8日イギリス・ロンドンに生まれ、初期の長編推理小説作家として活躍した人物です。『白衣の女』や『月長石』をはじめとする作品は、当時のイギリスで大ベストセラーとなり、書店には列が並び、時の政治家グラッドストーンは続きを読みたいがために友人との約束をすっぽかすほどでした。

コリンズの作品をより魅力的にした要因は、コリンズの観察眼にあるといえるかもしれません。コリンズは作中に女性や障碍者など当時のイギリス社会における社会問題を取り入れており、そのことがより作品を現実的なものにさせることとなりました。初期の推理小説に関心のある方は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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