ウェイン・ワン:『スモーク』『千年の祈り』を手掛けた映画監督

ウェイン・ワンは1949年1月12日に香港に生まれた映画監督です。アメリカで教育を受けたのち一度香港に戻るも、再渡米してサンフランシスコに移住。1987年には映画監督としてデビューし、『スモーク』や『千年の祈り』で高い評価を得ました。そんなウェイン・ワンの人生と作品について詳しく解説していきます。

■ウェイン・ワンとは

ウェイン・ワンは1949年1月12日香港に生まれました。当初はアイルランド系のイエスズ会宣教師の学校で基礎教育を受け、17歳の時アメリカの医学部に進学するべく渡米したものの、やがて芸術に関心を寄せるようになり、カリフォルニア・カレッジでファインアーツを学ぶようになります。卒業後は香港のテレビ局に就職したものの、香港のシステムが肌に合わず再渡米してサンフランシスコに移住。以降はサンフランシスコを拠点として、制作活動にあたることになります。

1987年には映画監督としてデビュー。また1995年には『スモーク』でベルリン国際映画祭銀熊賞、2007年には『千年の祈り』でサン・セバスティアン国際映画祭金貝賞を受賞し、アメリカを代表する映画監督の一人に数えられています。

■ウェイン・ワンの作品

ウェイン・ワンは作家のポール・オースターと親交が深いことで知られており、『スモーク』と『赤い部屋の恋人』では共同で脚本を執筆。そのためオースターとかかわりのある作品も多いのが特長です。またアメリカにおける人々の悲喜こもごもを描き出しており、コアなファンが多いことでも知られています。

そんなウェイン・ワンの作品には、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品についてご紹介します。

・『ジョイ・ラック・クラブ』 1993年

※画像はイメージです

本作品は1993年に制作された作品で、20世紀初頭のサンフランシスコを舞台に中国から移住してきた4人の女性たちと、アメリカ人として生まれ育った彼女たちの4人の娘たちの世代間の相違を描いた作品です。

舞台はロサンゼルス。賢いスーユアン、リーダーのリンド、芯の強いアンメイ、気品のあるインインの4人はマージャン卓を囲んで食事したりおしゃべりをする会「ジョイ・ラック・クラブ」を作り、交流を重ねていました。彼女たちには同じ年ごろの娘がおり、娘たちはみなアメリカ人として育てられていました。

しかし徐々に娘たちが育つにつれ、母と娘の間には世代間の相違が生じるようになり、娘は母が歩んできた歴史を知ることでその絆を保とうとしていきます。

・『ブルー・イン・ザ・フェイス』 1995年

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本作品は1995年に制作された作品で、『スモーク』の姉妹編的な作品にあたります。劇部分の基本的な設定を俳優たちと決め、即興演出を行ったことから、よりリアルな作品に仕上がっています。

オーギー・レンはブルックリンでタバコ屋を営む中年男性。そんなレンの店には、多くの客が訪れます。常連客のジム・ジャームッシュは禁煙を決意し、最後の一本をオーギーと吸いたいと持ち掛け、店のオーナーの妻であるドットは夫がラスヴェガス行きの約束を破ったとしてオーギーに愚痴り、当のオーナーのヴィニーは恋人のヴァイオレットとコンサートに行く約束の日に別の用事を入れてしまい、ヴァイオレットからは別に女がいるんじゃないかと疑われる始末。

そんなレンの店に、ラップを奏でながら時計を売る行商がやってきて人種意識の強さのあまりイタリア系と黒人の混血のトミーに言いがかりをつけたことでちょっとした騒動になってしまいます。しかしヴィニーが出てきてカントリー音楽を歌ったことで丸く収まるのでした。

・『スモーク』 1995年

※画像はイメージです

本作品は1995年に制作された作品で、アメリカ、日本、ドイツ合作で制作された作品です。ポール・オースターが脚本を担当し、第45回ベルリン国際映画祭審査員特別賞を受賞したことでも話題になりました。

ブルックリンの街角で小さなタバコ屋を営むオーギー・レンは10年以上毎日同じ時刻の同じ場所で写真を撮影していました。そんなレンのタバコ屋の常連でオーギーの親友でもあるポール・ベンジャミンは作家であるものの、数年前に銀行強盗の流れ弾で妻を亡くして以来仕事が手につかず、思い悩む日々を送っていました。

そんなベンジャミンはオーギーの写真集に亡き妻の姿を見つけて号泣。ぼんやりとしながら街をうろつき、車に轢かれそうになってしまいます。そんなベンジャミンを助けたのはラシードという少年で、ベンジャミンは彼を家に泊めてやることにします。2泊した後ラシードは家を出ていったものの、その数日後ラシードの叔母を名乗る女性が現れ、ラシードの本名はトーマス・コールといい、偽名を使って各地を転々としていることを明らかにします。

・『チャイニーズ・ボックス』 1997年

※画像はイメージです

本作品は1997年に制作された作品で、中国返還に揺れる故郷香港を描いた作品です。

中国返還を半年後に控えた香港。15年香港に住み続けているイギリス人ジャーナリストのジョンは、ヴィヴィアンという中国人女性に心寄せるようになったものの、彼女からは拒絶されてしまいます。実は彼女にはチャンという名前の婚約者がいたのです。

そして数日あったある日、ジョンは白血病で余命いくばくないことを知り、大きなショックを受けます。そんなジョンは白いマフラーで顔の傷を隠す物売り女ジーンと知り合い、またヴィヴィアンが高級娼婦だったことも知るところとなります。中国から移住してきたヴィヴィアンにとってはそうするしか生きていく術はなく、その過去のためにチャンは結婚に踏み切れずにいたのでした。

そして交流を重ねたヴィヴィアンとジョンは徐々に交流を深めていき、2人は結ばれることになります。そして中国返還の日、ヴィヴィアンが看取る中、ジョンは息を引き取るのでした。

・『女が眠る時』 2016年

※画像はイメージです

本作品は2016年に制作された作品で、スペイン人作家による短編小説の舞台を日本に置き換えて映画化した作品です。

作家の健二は妻とともに訪れた郊外のリゾートホテルで、初老の男佐原と若く美しい美樹のカップルと出会うことに。依頼2人を見かけるたびに後をつけるようになった健二は、部屋で美樹の体の産毛を剃刀で丁寧に剃り、眠る美樹を撮影し続ける佐原の姿を覗き見るようになり、その行動はエスカレートしていくのでした。

■おわりに

ウェイン・ワンは香港出身の映画監督で、アメリカを拠点として移民や差別の問題をテーマとして作品を制作している映画監督です。登場人物たちの感情も豊かに描かれており、アメリカと香港という二つの国をまたにかけるワンだからこそ描ける作品であるといえるでしょう。これを機に、ワンの作品を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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