ジェームズ・アイヴォリー:文化の衝突に焦点を当てた作品を制作する映画監督

ジェームズ・アイヴォリーは1928年カリフォルニア州バークレーに生まれた映画監督で、『眺めのいい部屋』や『モーリス』といった名作を制作したことで知られています。そんなジェームズ・アイヴォリーの人生と主要な作品について詳しく解説していきます。

■ジェームズ・アイヴォリーとは

※カリフォルニア州のバークレー

ジェームズ・アイヴォリーは1928年6月7日アメリカ合衆国カリフォルニア州のバークレーに生まれました。オレゴン州で建築とファインアートを学んだ後、映画製作に関心を抱くようになり、南カリフォルニア大学のフィルムスクールで映画製作を学んでいます。在学中はインドの細密画についての短編を制作していますが、これがきっかけとなりイスマイル・マーチャントと知り合うようになります。アイヴォリーとマーチャントは1961年に「マーチャント・アイヴォリー・プロダクション」を設立し、マーチャントが40年にわたって公私ともにパートナーとなり映画製作を続けました。

マーチャントがパートナーとなったことによりアイヴォリーはインドを舞台とした作品を制作するようになります。ドイツ出身でインド人と結婚したルース・プラワー・ジャブヴァーラの小説を映画化した『新婚生活』や『インドのシェイクスピア』などは高い評価を受け、第15回ベルリン国際映画祭の正式出品作品となっています。こうした評判もあってアイヴォリーのもとにはBBCのドキュメンタリー番組の仕事も舞い込むようになっていきました。

1972年には『野蛮人たち』 を制作。この際には友人であったアンディ・ウォーホルのファクトリーのメンバーも参加しており、大変な評判となりました。そのほかにも1977年にはミュージカル『グリース』のスタッフとダンスエイガを制作するなど、太陽な観点から作品を制作するようになっていきます。

1979年にはヘンリー・ジェイムズの『ヨーロッパの人々』を映画化した『ヨーロピアンズ』を制作。また1981年にはジーン・リースの『カルテット』を映画化すると、主演のイザベル・アジャーニが第34回国際映画祭主演女優賞を受賞。1986年には『眺めのいい部屋』が第59回アカデミー賞3部門を受賞し、名実ともに国際的な映画監督となっていきました。

■ジェームズ・アイヴォリーの作品

※画像はイメージです

アイヴォリーの作品は当初パートナーとなったマーチャントの影響を受けてインドを舞台とした作品を制作していましたが、その後はさまざまなテーマや観点の映画を撮影するようになっていきました。そうした作品に共通するテーマは文化の衝突や違い、そして選択を迫られる登場人物といったものであり、見るものに問題提起を投げかけるものとなっています。

そんなジェームズ・アイヴォリーの作品には、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品についてご紹介します。

・『眺めのいい部屋』 1986年

※画像はイメージです

本作品は1986年に制作された作品で、エドワード・モーガン・フォースターが1908年に執筆した小説を映画化した作品です。

舞台は1907年のイタリアのフィレンツェ。イギリスの両家の令嬢であるルーシー・ハニーチャーチは従姉シャーロットともにやってくるも、イギリスの観光客が多く滞在する宿屋「ベルトリーニ」で案内された部屋は眺めのいい部屋ではありませんでした。シャーロットが苦情を言っているのを聞いた宿泊客のエマソンは息子のジョージと共に止まっていた眺めのいい部屋との交換を申し出、シャーロットは躊躇するも申し出を受けることにします。

翌日ルーシーはエマソンに出会い、ともに街を観光しますが、広場でけんかに出くわしたルーシーは驚き気絶してしまい、ジョージの介抱を受けることになります。2人はお互いを意識するようになり、キスを交わしてしまいますが、二人の仲を知ったシャーロットはルーシーをイギリスに連れ帰ってしまいます。

帰国したルーシーはシシル・ヴァイスからプロポーズを受け婚約するものの、ジョージと再会し、ジョージはルーシーに愛を打ち明けます。しかし婚約してしまったルーシーはその想いを拒絶するしかなく、悲嘆にくれることになります。しかしその一方でシシルの家庭との齟齬を感じ始めていたルーシーは自分の気持ちに正直になることを決意し、シシルとの婚約を解消します。結ばれたルーシーとジョージが秋に訪れたのは、初めて出会った「ベルトリーニ」の眺めの良い部屋でした。

本作品は第59回アカデミー賞に最多8部門にノミネートされ、脚色賞や衣装賞、美術賞の3部門を受賞したことから、大変な評判となりました。

・『モーリス』 1913年

※画像はイメージです

本作品はエドワード・モーガン・フォースターが1913年に執筆した小説を原作として制作された映画作品であり、同性愛をテーマとしたことから大きな話題となりました。

舞台は同性愛が犯罪とされていた20世紀初頭のイギリス・ケンブリッジで、モーリスは知的な青年クライヴと親密になり、お互いに恋愛感情を抱くようになります。結局肉体関係を持つことはないまま大学を卒業し、社会に出てからも友人関係は続いていたものの、抑えきれない衝動は二人の心に渦巻いていました。しかしクライヴの若い猟場番に性的思考を見抜かれたことをきっかけに、二人の人生は大きく動いていくことになります。

本作品はヴェネツィア国際映画祭で男優賞、監督賞、音楽賞を受賞、第60回アカデミー賞には衣装デザイン賞にノミネートされました。20世紀初頭のイギリスを忠実に表現した世界観はもちろん、同性愛という繊細なテーマが鑑賞者に大きなインパクトを与えたことは言うまでもないでしょう。

・『ハワーズ・エンド』 1992年

※画像はイメージです

本作品はエドワード・モーガン・フォースターが1910年に執筆した小説を原作として制作された作品です。アイヴォリーは『眺めのいい部屋』『モーリス』に続いて3度目のフォースター作品となりました。

舞台は20世紀初頭のイギリス。理想主義的なシュレーゲル家と現実的なウィルコックス家がウィルコックス家の別荘「ハワーズ・エンド」をめぐって繰り広げる人間模様を描いています。

第65回アカデミー賞においては作品賞をはじめとする最多9部門でノミネートされ、主演女優賞や脚色賞、美術賞の3部門で受賞を果たしました。そのほかにも第46回英国アカデミー賞や第50回ゴールデングローブ賞、第45回カンヌ国際映画祭などにも出品されており、国際的にも高い評価を受けた作品といえます。

■おわりに

ジェームズ・アイヴォリーはアメリカ合衆国カリフォルニア州のバークレーに生まれた映画監督であり、キャリアのはじめにはインドをテーマにした作品を、その後は文化の衝突や違い、また選択を迫られる登場人物の心情などをテーマに数多くの作品を制作してきました。アイヴォリーの作品は世界観から衣装のデザインまで繊細に構成されていますが、それに加えてこうしたテーマを扱うことで鑑賞者に対して問題提起を促すという点が大きく評価されているのでしょう。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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