シェリダン・レ・ファニュ:怪奇小説とミステリーを得意としたゴシック小説家

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シェリダン・レ・ファニュは1814年8月28日アイルランドのダブリンに生まれた小説家です。特に怪奇小説やミステリーを得意としており、19世紀以降の短編小説に大きな影響を与えました。そんなシェリダン・レ・ファニュの人生と作品について詳しく解説していきます。

■シェリダン・レ・ファニュとは

※現代のアイルランド・ダブリン

シェリダン・レ・ファニュは1814年8月28日アイルランド・ダブリンに生まれました。一家はユグノー貴族であり、祖母や大伯父は劇作家という家庭でレ・ファニュもまた幼い頃から文学に親しんで育ったといわれています。

その後ダブリンのトリニティ・カレッジで法を学び、1839年には大学歴史協会の監査役として法廷で仕事を行うようになったものの、法律家になることはなく、ジャーナリストの道を歩むことになります。レ・ファニュの作品が発表されたのは「ダブリン大学マガジン」という雑誌であり、レ・ファニュの作品が発表されたことにより「ダブリン大学マガジン」は大きく発行部数を伸ばすことになりました。

1861年には「ダブリン大学マガジン」を買収し、執筆の傍ら編集の仕事にも関わり、数々の作品を発表し続けました。その後「ダブリン・イヴニング・メール」などにも作品を発表することもあったものの、1873年には故郷のダブリンでその生涯を閉じることになります。

■シェリダン・レ・ファニュの作品

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シェリダン・レ・ファニュが執筆活動を行った19世紀は合同法撤廃運動や大飢饉、蜂起などアイルランドの歴史の中でも激動といえる時代でした。そのためレ・ファニュの作品には支配階級であることの罪悪感に加え、支配権を喪失することの不安も描かれていると指摘されており、このころのアイルランド文学を研究する上では重要な作家の一人に数えられています。

また特に怪奇小説やミステリーで手腕を発揮した小説家の一人であり、怪奇や犯罪、陰謀などを題材として長編小説15篇、短編小説約80篇を発表。そのスタイルはブラム・ストーカーの『ドラキュラ』をはじめとして後世の小説家たちに大きな影響を与えたといわれています。

そんなシェリダン・レ・ファニュの作品には、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品をご紹介いたします。

・『カーミラ』 1872年

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『カーミラ』はレ・ファニュによって1872年に発表された怪奇小説で、「カーミラ」とは作中に登場する吸血鬼の名前を指しています。吸血鬼伝承は古くからヨーロッパにあり、吸血鬼を題材として数点の作品が執筆されていたものの、『ドラキュラ』をはじめとしたその後の吸血鬼作品に大きな影響を与えた作品と言われており、貴族的、棺桶で眠る、心臓に杭を打たれて死ぬといった特長は本作品がもとになったと考えられています。

本作は主人公ローラが19歳の頃に起きた事件を回想し手記にしたためたという形式ではじまります。ローラはオーストリアのシュタイアーマルクで父と共に城で暮らしていました。幼い頃に母を亡くし、父と娘のほかには数人の使用人だけで、もっとも近い村まで7マルクも離れていたことからローラはひとり寂しく過ごす日々を過ごしていました。

ある晩ローラがふと目を覚ますと、そこには見知らぬ美しい女性がいました。女性はローラのベッドに入り、ローラを優しく抱きしめ、安心したローラはそのまま眠ってしまいます。しかし眠った途端に胸を刺されたような痛みが走り、その痛みのあまり泣き叫んでしまいます。驚いた女中たちがやってきたものの、ベッドの下に逃げたはずの女性はいくら探しても出てこず、ローラはその後不安な日々を過ごすことになるのでした。

それから何日か経ったのち、近所に住むスピエルドルフ将軍からローラの父へと手紙が届き、将軍の姪が亡くなったことを知らされます。将軍は姪を溺愛していたことから、取り乱しており、加えて怪物を退治するという要領を得ない決意が描かれていました。

城の中でローラが考えを巡らせていると、突然暴走した馬車が城にやってきて横転。中からは気絶した美しい少女が運び出され、少女の母らしい貴族然とした女性は急ぎの旅の途中であるため倒れた少女をどこかに預けたいと言い出し、結局ローラの城で預かることになります。このことをきっかけとしてローラはまたしても不可思議な事件に巻き込まれていくのでした。

・『大地主トビーの遺言』 

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本作は財産をめぐって兄弟と親子の確執を描いた小説で、亡くなった父親が犬の姿を借りて現世に戻ってくるというストーリーが語られる作品です。

ジリングデンの大地主トビー・マーストンには2人の息子がおり、兄のスクループに比べ弟のチャーリーを溺愛していました。代々長男が相続するはずの権利をチャーリーに相続させるという遺言が残されたため、トビーの死後兄弟は長年にわたり争うことになってしまいます。

そんな中チャーリーは屋敷の前に現れた奇妙な犬を気に入り飼うことに。しかしそれからその犬が夢にたびたび現れ、亡き父親の声で話しかけてくるようになるのでした。

・『判事ハーボットル氏』

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本作は不当な判決で死刑に追いやった男から復讐されるという老判事を描いた作品です。また夢の中のハーボットルが裁かれる法廷は裁判長トゥーフォールドが巨大化するなど、奇怪な描写が特長的な作品です。

利己的で横暴な老判事ハーボットルは、偽造罪で入獄しているパインウェックの審理を担当していました。その後パインウェックの妻から嘆願があったのにもかかわらず、ハーボットルはパインウェックを死刑にしてしまいます。ハーボットルはパインウェックを不当に裁いた罪での告発状を受け取ったものの、その後ハーボットルの近辺では不可思議な事件が起きるようになっていきます。

■おわりに

シェリダン・レ・ファニュは1814年8月28日アイルランドに生まれた小説家で、怪奇小説やミステリー小説を数々発表し、その後の短編小説に大きな影響を与えたといわれる人物です。その作品にはのちのブラム・ストーカー『ドラキュラ』やシャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』に影響を与えたといわれる『カーミラ』などが含まれており、19世紀の文学史を考える上でも重要な人物といえるでしょう。

アイルランド文学はもちろん、吸血鬼を題材とする作品に関心のある方は、ぜひこれを機にレ・ファニュの作品を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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