シドニー・ルメット:『十二人の怒れる男』『オリエント急行殺人事件』を手がけた映画監督

シドニー・ルメットは1924年6月25日アメリカ合衆国フィラデルフィアに生まれた映画監督です。ニューヨークを舞台とした社会派作品を手がけたことで知られており、特に『十二人の怒れる男』や『オリエント急行殺人事件』は映画史に残る名作となりました。そんなシドニー・ルメットの人生と作品について詳しく解説していきます。

■シドニー・ルメットとは

※ペンシルバニア州のフィラデルフィア

シドニー・ルメットは1924年6月25日ペンシルバニア州のフィラデルフィアに生まれました。両親はポーランド系ユダヤ人で演劇人として活躍していたこともあり、ルメットは徐々に演劇に関心を持つようになっていきました。ニューヨークに居を移してからは、4歳でラジオドラマに出演。5歳の時にはイディッシュ劇場の舞台を踏み、10代からはブロードウェイの舞台に立つなど子役としてのキャリアを積んでいきます。

1942年にはコロンビア大学に入学するものの、同時に陸軍に入隊し第二次世界大戦に従軍。戦後はオフ・ブロードウェイで活躍していたものの、徐々に俳優活動に満足できなくなったルメットは1950年代になって演出家に転向。CBSでテレビドラマの制作で手腕を発揮したこともあり、人気演出家として5年間で500本もの作品を演出。テレビ局を退職したのちは、1957年に初の劇場映画『十二人の怒れる男』を制作し、同作はベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞しました。

1960年代に入ると『夜への長い旅路』や『質屋』といった文芸作品の映画化で力を発揮、また冷戦時代における核戦争の危機を描いた『未知への飛行』は大きな話題となりました。その後も『オリエント急行殺人事件』や『狼たちの午後』といった話題作を発表。アメリカ映画界を代表する名監督となっていきます。

その後も精力的に制作に携わっていったものの、2011年4月9日にはリンパ腫のためニューヨークの自宅で死去。86歳の生涯を閉じることとなります。

■シドニー・ルメット

※画像はイメージです

シドニー・ルメットの作品の特長は、ニューヨークを舞台として社会派作品を制作し続けたことでしょう。特にニューヨーク市警の汚職を描いた『セルピコ』や銀行強盗犯を描いた『狼たちの午後』などは高く評価されています。

そんなシドニー・ルメットの作品には、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品についてご紹介します。

・『十二人の怒れる男』 1954年

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本作品は1954年に制作された作品で、もともとテレビドラマ版として制作された作品を映画化した作品です。本作でルメットは1957年度の第7回ベルリン国際映画祭金熊賞と国際カトリック映画事務局賞を受賞しました。

父親殺しの罪に問われた少年の裁判が行われる法廷。提出された証拠や証言は被告人である少年に圧倒的に不利なものであり、陪審員たちは少年の有罪を確信しつつありました。しかし陪審員8番だけが少年の無罪を主張し、他の陪審員は証拠の疑わしい点をひとつひとつ再検証することになります。そして徐々に陪審員たちの心にも変化が訪れるのでした。

・『セルピコ』 1973年

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本作品は1973年に制作された作品で、ニューヨーク市警に蔓延する汚職や腐敗に立ち向かう警察官の実話に基づいた作品です。原作はジャーナリストのピーター・マースが執筆したフランク・セルピコの伝記「セルピコ」であり、1973年度のゴールデングローブ賞を受賞しました。

雨の降る夜、救急病院に一人の重症の警察官が運び込まれ場は騒然に。警察官の名前はフランク・セルピコといい、ニューヨーク市警の麻薬課刑事をつとめていました。セルピコは捜査中に同僚の警察官によって銃撃され負傷。しかしそのニュースを聞いたセルピコの上司は、「セルピコを撃ち殺したいといっていた警察官を6人知っている」と部下に語るのでした。

・『オリエント急行殺人事件』 1974年

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本作品は1974年に制作された作品で、アガサ・クリスティーの『オリエント急行殺人事件』を映画化した作品です。第47回アカデミー賞では、主演男優賞、助演女優賞、脚色賞、撮影賞、作曲賞、衣装デザイン賞の6部門でノミネートされ、イングリッド・バーグマンが助演女優賞を受賞しました。

イスタンブールで事件を解決した私立探偵エルキュール・ポワロはオリエント急行でロンドンに向かうことになったものの、一等寝台車は満席。しかしホテルでオリエント急行を所有する国際寝台車会社の重役である旧友ビアンキの計らいにより、なんとかオリエント急行に乗り込むことに成功します。

イスタンブールを出た2日目、列車は雪のためにバルカン半島で停車することになった挙句、その翌朝には一等車に宿泊していた裕福なアメリカ人ラチェット・ロバーツが死体で発見される事件が発生。ポワロとビアンキはギリシャ人医師コンスタンティンやフランス人車掌ピエール・ミシェルとともに捜査を開始していきます。

捜査を進めるうち、ラチェットはアメリカに移住した裕福なイギリス人アームストロング大佐の子どもデイジーを誘拐した犯人カセッティであったことが判明します。デイジーは身代金が支払われたのちに死体で発見され、アームストロング夫人は死産の末に命を落とし、アームストロング大佐も自殺に追い込まれてしまったのでした。その後カセッティの共犯者は逮捕されたものの、カセッティ本人は国外逃亡して罪を免れていたのです。

・『狼たちの午後』 1975年

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本作品は1975年に制作された作品で、1972年ニューヨークのブルックリン区で発生した銀行強盗事件を題材にしている作品です。

うだるような暑さが続くニューヨークのブルックリン。小さな銀行に3人の男が押し入る事件が発生。その目的は金庫の金を強奪することにあったものの、決してその手際はいいとは言えず、1人は逃亡。そして手間取っているうちに警官隊に現場を取り囲まれてしまいます。追い詰められた2人は人質をとって銀行に籠城するという最悪の選択肢を選ぶことに。猛暑のなかいつ終わるともいえない膠着状態のなか緊迫の時間が過ぎていくのでした。

■おわりに

シドニー・ルメットは1924年アメリカ合衆国フィラデルフィアに生まれ、俳優、演出家としてキャリアを積んだのち、映画監督として知られるようになった人物です。その作品は徹底的なリアリズムで描かれていることで知られており、『十二人の怒れる男』や『セルピコ』といった作品はルメットの代表作となりました。社会派映画に関心のある方は、ぜひルメット作品を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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