ジャン=ジャック・アノー:『薔薇の名前』を制作した映画監督

ジャン=ジャック・アノーは1943年フランスのジュヴィシー=シュル=オルジュに生まれた映画監督です。『人類創世』や『薔薇の名前』など映画史に残る作品を制作したことで知られており、そのミステリアスな演出は後世の映画作品に多大な影響を与えました。そんなジャン=ジャック・アノーについて詳しく解説していきます。

■ジャン=ジャック・アノーとは

※画像はイメージです

ジャン=ジャック・アノーは1943年フランスのジュヴィシー=シュル=オルジュに生まれました。ソロボンヌ大学を卒業したのちパリの高騰映画学院で学び、1964年に卒業。1960年代後半から1970年代初頭にかけてはテレビコマーシャルの監督としてキャリアをはじめました。

1976年にはカメルーン従軍中の個人的な経験を主題とした『ブラック・アンド・ホワイト・イン・カラー』を制作。この作品はアカデミー最優秀外国語賞を受賞、その後イタリアとドイツの修道院で撮影された『薔薇の名前』を制作し、大きな話題となりました。

■ジャン=ジャック・アノーの作品

ジャン=ジャック・アノーの作品は戦争や人類、宗教などの壮大なテーマに焦点を当てたものであり、またそのミステリアスな演出が大きな特徴です。そんなアノーの作品には、どのような作品が含まれているのでしょうか。主要な作品についてご紹介します。

・『ブラック・アンド・ホワイト・イン・カラー』 1976年

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本作品は1976年に公開された作品であり、アノーの監督としてのデビュー作にあたります。第一次世界大戦時のアフリカを描いた作品であり、第49回アカデミー賞の外国語映画賞ではコートジボワール代表として出品され、受賞しました。

舞台は第一次世界大戦勃発時の西アフリカ。フランス系の移植者たちとドイツ系の移植者たちの間では抗争が起こり、それが大きな問題を引き起こしておきます。アノーは本作品を通して白人同士での抗争や愛国主義に焦点を当てており、非常に辛辣な表現で本作品を制作しました。すべてアフリカで撮影された点も高く評価されています。

・『人類創世』 1981年

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本作品は1981年に公開された作品で、フランスとカナダの合作で制作されました。フランス語のタイトルは”La Guerre du feu”で、陽の戦争を意味します。原作はJ・H・ロニー兄の同名小説であり、旧石器時代を舞台に火を作り出す手段を持たない種族の青年たちが失われた火を求めて旅に出る様を描いています。

セリフは一切なく、特殊メイクによって原始人に扮していることから、見るものを戸惑わせるような作品になっていますが、リアルなシーンと淡々と進んでいく物語が逆にドラマチックな作品に仕上がっています。

原始人を演じるのは「コマンドー」などでコメディー作品の出演が多いレイ・ドーン・チョン。『薔薇の名前』でも公演することになるロン・パールマン。加えて「ツイン・ピークス」のエヴァレット・マッギルとセリフがまったくない役でありながら繊細な表情の好演を見せています。

・『薔薇の名前』 1986年

本作品は1986年にフランス、イタリア、西ドイツ合同で制作された作品で、ウンベルト・エーコによる同名小説『薔薇の名前』を映画化した作品です。バスカヴィルのウィリアムにショーン・コネリー、その弟子にクリスチャン・スレーターなどを配したことで大きな話題になりました。

物語は北イタリアの山にそびえる修道院の建物を見上げるシーンから始まります。バスカヴィルのウィリアムとその弟子メルクのアドソは修道院の巨大な門をくぐり、個室に通され、そこに修道院長アッボーネが訪れラテン語で歓迎のあいさつを述べます。しかしアッボーネはどこか不審な様子を見せていたためウィリアムが尋ねると、若い修道士が図書館から飛び降りて死亡したものの、図書館には窓がないため修道士たちが不安がっていると伝えます。

以来を受けたウィリアムは修道士の遺体が発見された場所を調べる一方、アドソは貧しい服装の女を見つけ、2人はしばし見つめ合います。その後ウィリアムとアドソは写字室に入り、挿絵画家であった死んだ修道士の作業机を調べます。こうしてウィリアムとアドソは真相に近づいていくもの、そこには思いがけない結末が待っていました。

本作品では中世修道院での生活や慣習などを忠実に再現するため衣服から小道具にいたるまで詳細に復元が行われました。映画化にあたってのドキュメントも出版されており、その細部にまでこだわった撮影は高く評価されています。

・『小熊物語』 1988年

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本作品は1988年に制作された作品で、ロッキー山脈を舞台に母親を亡くした1匹の子熊が成長する姿を描いた作品です。子熊はハンターに傷つけられた手負いの雄熊と出会い、人間とも交流しながら大自然を生き抜いていきます。アノーは本作品を制作するために6年もかけて撮影を行っており、まるで 役者が演じているような驚異的な作品に仕上がっています。

アノーは本作品でセザール賞の監督賞、編集賞を受賞しました。撮影にあたっては『大自然の中で/小熊物語ロケ現場から』というドキュメンタリーが制作されています。

・『ラマン』 1992年

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本作品は1992年に制作された作品で、1984年に出版されたマルグリット・デュラスの時点的な小説を原作とする作品です。

舞台は1929年のフランス領インドシナ。貧しいフランス人の少女は母親と二人の兄と共にベトナムで暮らしていました。母親は現地で教師をしていたもの、役人に騙され、面積のほとんどが海水に浸ってしまう土地を交わされてしまいます。母親は長兄ばかりを可愛がり、兄は母親からもらった金でアヘンを買うという暮らしを送っていたため、家族の生活はどんどん苦しいものになっていきました。

少女は現地のフランス人女学校に通っていましたが、ある日メコン川のボート売り場で華僑の生年に話しかけられ、やがて2人は愛人関係を持つようになります。少女はお金稼ぎを割り切って青年と関係を持つようになり、母親も最初はその関係を心よく思うことはなかったものの、娘が青年から金をもらっており、フランスへ帰国するための資金のあてにするようになります。しかしその後二人はお互いに愛情を抱くようになっていきました。

本作品は1992年のアカデミー賞にノミネートされ、またセザール賞の音楽賞を受賞しました。官能的でありながらも不思議と純粋な美しさを感じさせる表現は、大きな話題となりました。

■おわりに

アノーは戦争や人類、愛情や宗教など壮大なテーマに挑戦した映画監督であり、そのミステリアスな表現は後世の映画作品に多大な影響を与えました。中にはまったくセリフを用いていない作品や6年も撮影期間をかけた作品もあり、アノーが映画作品にかける情熱は並々ならぬものといえるでしょう。

アノーは2015年に『神なるオオカミ』を制作し、その後も新しい表現を模索し続けており、今後の活躍が期待されます。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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