ボビー・マクファーリン:多彩な声色を駆使したジャズ・ボーカリスト

声のみのパフォーマンスで聴衆を常に驚かせてきたボーカリストがボビー・マクファーリン。まるで楽器のようにさまざまな音色を奏でる歌声は、多彩そのものです。1993年のグラミー賞Best Jazz Vocal Album部門を受賞した『’Round Midnight』では、天才ジャズ・ピアニストのチック・コリアとすばらしいインタープレイを披露しました。2000年代を迎えてからも、その歌声は円熟味を増しています。ボビー・マクファーリンの経歴や代表作品を紹介しましょう。

◾︎ボビー・マクファーリンとは

ボビー・マクファーリンは1950年生まれ。アメリカのニューヨーク出身のジャズ・ボーカリストです。父親はオペラ歌手のロバート・マクファーリン。名門メトロポリタン歌劇場でパフォーマンスを披露した、歴史的な歌手でした。その才能を受け継いだボビー・マクファーリンは、ジョン・ヘンドリックスやアル・ジャロウを彷彿とさせるさまざまな“声”のパフォーマンスで、世界からの支持を獲得しています。また胸や肩を叩くことによって声質を変化させたり、ライブで観客と共に作品を歌ったり、アドリブ的なパフォーマンスも魅力のひとつです。

ボビー・マクファーリンは幼少期からピアノやクラリネットに親しみ、その才能を存分に育てていきました。高校時代にはジャズ・バンドを結成して音楽活動をスタートさせています。1970年からプロとして音楽活動を開始。苦労を重ねながらも人気と実力を着実に獲得していきました。1979年になると活動拠点をサンフランシスコに変更して、自身の音楽をさらに追求していきます。サンフランシスコでは著名なミュージシャンと共演を重ね、人気を博しました。

1982年にはデビュー・アルバムを発表。ジャズ・ボーカリストとして世間からの注目を獲得しています。続くセカンド・アルバムではジャズに捉われない世界観を披露して話題を集めました。ジャンルを超えたボーダレスな音楽表現は、現在のマクファーリンに通じています。1986年に発表したサード・アルバムではジャズ・ピアニストのハービー・ハンコックと共演。高い評価を獲得しました。マクファーリンの歌声は円熟味を増してより魅力的になっていきます。

※画像はイメージです

そして1988年。マクファーリンはキャリアを代表する名曲『Don’t Worry Be Happy』を発表します。『Don’t Worry Be Happy』は音源のすべてをマクファーリンの“声”のみで表現した衝撃的な内容が話題を呼びました。ビルボード・チャートで2週間連続の首位を獲得。世界的なヒットを記録します。グラミーでは3部門を受賞。アカペラ作品では異例の快挙を達成しました。

ボビー・マクファーリンは“声の魔術師”とも呼ばれる史上最高のボーカリストの一人として、世界的な人気を獲得しています。また、ボーカリストの才覚のみならず、オーケストラの指揮者やアレンジャーとしての活躍も話題でしょう。40歳のときにサンフランシスコ交響楽団を指揮したことは有名な話です。その後もロンドンやニューヨークなど、世界の名だたるオーケストラを指揮。マクファーリンならではの声を駆使したアレンジは、現在でも注目の的です。

圧倒的なボーカル・パフォーマンスを披露してきたボビー・マクファーリンは、今後も注目を集めるボーカリストの筆頭でしょう。ボビー・マクファーリンの代表作を次章で紹介します。

◾︎ボビー・マクファーリンの代表作品

まさに“声の魔術師”という形容詞がピッタリ似合うボビー・マクファーリンは、その歌声ひとつでさまざまな音楽を表現してきました。特に音源すべてを自身の声のみで収録した『Don’t Worry Be Happy』は必聴でしょう。また、オリジナル曲のほかカバー曲も収録されたアルバム『Simple Pleasure』では、マクファーリンの火花の散るような歌声が楽しめます。ジャズ・ピアニスト、チック・コリアとの共演が収録された『Play』も絶対に聴いておきたい名盤です。ボビー・マクファーリンのキャリアを代表する代表作たちを、詳しく紹介していきましょう。

・Don’t Worry Be Happy(ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー)

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ボビー・マクファーリンといえば本作品『Don’t Worry Be Happy』は欠かせません!1988年のビルボードで2週間続けて首位を独占。同年公開されたトム・クルーズ主演の映画『Cocktail』に使用されたことでも話題に上がりました。多重録音を駆使して収録された音源は、すべてマクファーリンの声から生まれています。その息を飲むほどのパフォーマンスは必聴でしょう。

・Simple Pleasure(シンプル・プレジャー)

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『Simple Pleasure』は1988年に発表され、翌年のグラミーも受賞しました。収録曲は全部で10曲。再生時間は約33分です。世界中でスマッシュヒットを記録した代表曲『Don’t Worry Be Happy』を収録しているほか、往年の名曲のカバー版も収録されています。また、表題曲の『Simple Pleasure』もしっとりとした世界観の名曲。マクファーリンの朝の日常を歌にした曲で、日常の何気ない喜びを教えてくれます。ジャズよりもポップ寄りの作品かもしれません。

・Play(プレイ)

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ジャズを代表する天才ピアニスト、チック・コリアとの共演は、ボビー・マクファーリンのキャリアで幾度も繰り返されてきました。そのうちのひとつのライブを収録して音源化したのが、アルバム『Play』です。収録された6曲のインタープレイは、例外なく感動的でしょう。

アルバム冒頭に収録された『Spain』は、1972年にチック・コリアが作曲して発表したジャズのスタンダード・ナンバーです。冒頭の曲ながら最高潮にまで達する緊張と興奮は、一流のアーティストの邂逅があってこそでしょう。ライブならではの即興パフォーマンスも注目です。

5曲目に収録された『’Round Midnight』は、ジャズ・ピアニストのセロニアス・モンクが1944年に作曲をおこなった普遍的な名曲。ジャズのうち最も録音されてきた永遠のスタンダード・ナンバーです。こちらも二人の天才アーティストによって独特の解釈が加えられており、鳥肌が立つような見事な演奏が楽しめます。アルバム通しての感動をぜひ味わってみてください。

◾︎おわりに

声の持つ限界を感じさせないパフォーマンスが魅力のボビー・マクファーリン。その経歴や代表作品を紹介してきました。ソロでのパフォーマンスのほか、著名なミュージシャンとの共演も注目の的でしょう。刺激的なスタイルの音楽表現を、楽しんでみてはいかがでしょうか?

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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