潰瘍性大腸炎:潰瘍性大腸炎の症状と原因、治療法

潰瘍性大腸炎は治癒しにくい原因不明の炎症性腸疾患です。30歳以下の成人によく発症しますが、小児や70歳以上の成人にも発症します。長期に渡って炎症が生じると大腸癌を発症する可能性もあります。年々、患者数は増加傾向にありますが、その原因はわかっていません。長年、苦しんでいる人も多く、1日でも早く根治治療法の開発が望まれています。
潰瘍性大腸炎とはどのような病気かご紹介したいと思います。

潰瘍性大腸炎の疫学

日本での患者数は約17万人、米国では約50~100万人と言われています。北米やイギリスで患者数が多いが、最近ではアジアの患者数も増加傾向にあります。男女による差異はありません。
20代の発症率が最も高いですが、10代や70代でも発症することがあります。毎年患者数は5000~10000人増加しています。

潰瘍性大腸炎の原因

潰瘍性大腸炎の原因はまだわかっていません。遺伝的要因、食生活の欧米化、ストレス、腸内細菌、異常な自己免疫反応など色々な要因が複合して関与していると考えられています。

病変のできる部位

潰瘍性大腸炎は直腸から炎症が起こることが一番多いです。その後S状結腸、下行結腸、横行結腸へと炎症が広がっていきます。
炎症の広がりにより3つのタイプに分類できます。

  • 直腸炎型:炎症が直腸だけにみられるもの
  • 左側大腸炎型:炎症が左側だけにみられるもの。(横行結腸は炎症していない)
  • 全大腸炎型:炎症が大腸全体にみられるもの

潰瘍性大腸炎の症状

潰瘍性大腸炎は、寛解と再燃を繰り返す特徴があります。
下痢、粘液便、血便、腹痛、食欲不振などが主症状です。重症化すると排便回数が増え、発熱、腹痛、鉄欠乏性貧血、体重減少がみられるようになります。
合併症は、大量出血、狭窄、穿孔、中毒性巨大結腸症が現れることもあります。狭窄している部分で内容物が詰まってしまうと、腸閉塞と同じ状態になって、激しい腹痛や嘔吐がみられます。長期間に渡り炎症が生じると大腸癌が生じることもあります。
中毒性巨大結腸症:腸の粘膜の強い炎症のため、腸管運動が低下して、腸内にガスや毒素が溜まり大腸が膨張して、発熱や頻脈がなどの中毒症状がみられる病気です。
関節炎、虹彩炎、膵炎、結節性紅斑、歯肉炎、アフタ性口内炎など腸管以外に合併症が生じることもあります。

潰瘍性大腸炎の検査

経過観察と病歴の聴取から始め、血性下痢を引き起こす感染症と区別することが必要です。
その後、採血、便培養、内視鏡検査、注腸検査(造影剤をいれて見る)をして確定診断をします。
潰瘍性大腸炎の肉眼的所見は、粘膜はびまん性に発赤し、表面は粗糙(ざらざらしている)、絨毛状を呈しています。
大腸の粘膜の一部を採取して病理診断を行うこともあります。
潰瘍性大腸炎の病理像の特徴は、粘膜固有層全層に及ぶリンパ球・形質細胞のびまん性浸潤です。

潰瘍性大腸炎の治療

現在は、潰瘍性大腸炎を完治する治療法は存在しません。内科的治療の目的は、炎症のコントロールです。
原則的には重症度に応じた内科的治療を行いますが、内科的治療で効果がみられないときや、重症の場合は外科手術を行うこともあります。
また、潰瘍性大腸炎は寛解と再燃を繰り返すので、それぞれの時期で治療法は異なります。

内科的治療

寛解期は、その状態を維持するための薬を服用し、再燃期は炎症を抑え寛解期に導くための薬を服用します。代表的な薬を紹介します。

メサラジン(ペンタサ、アサコール、リアルダ)

軽症~中等症の潰瘍性大腸炎の炎症を抑える抗炎症薬です。ペンタサは直腸部分の炎症を抑える効果が弱く、アサコールは直腸部分の炎症にもある程度は効果があります。ペンタサで直腸部分の炎症を抑えたい場合は、坐薬を使うと効果があります。寛解期、再燃期両方で使用することができます。

副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン)

中等症~重症の潰瘍性大腸炎の炎症を抑える抗炎症薬です。ペサラジンを服用しても効果がない時にも使用します。主に再燃期に使用し寛解導入を行います。

免疫調整薬(アザチオプリン、メルカプトプリン)

主に寛解期に使用し寛解維持療法に用いられます。ステロイド薬の服用をやめると悪化してしまう人に用いられます。

免疫抑制剤(タクロリムス、シクロスポリン)

ステロイドが効かない人の寛解導入療法に用いられます。肝不全、腎不全、多毛、血圧上昇、振戦、高血糖、歯肉肥厚など多くの副作用があるので、使用には十分注意しなければいけません。

抗TNFα受容体拮抗薬(インフリキシマブ、アダリムマブ)

TNFαは炎症を引き起こす物質です。TNFα受容体拮抗薬は炎症を強力に抑える作用があります。インフリキシマブは初回投与後、2週間後、6週間後に点滴投与しそれ以降は8週間隔で点滴投与する。

JAK阻害剤(トファシチニブ)

中等症~重症の潰瘍性大腸炎に使用します。サイトカイン受容体からの刺激を伝えるJAKという酵素を阻害し刺激が伝わるのを遮断して炎症を抑えます。

抗α4β7インテグリン抗体剤(ベドリズマブ)

中等症~重症の潰瘍性大腸炎に点滴静注します。リンパ球の浸潤を阻害することにより炎症を抑えます。免疫調整薬や抗TNFα受容体拮抗薬を使用しても効果がなかった患者が使用する場合があります。

血球除去療法(セルソーバ、アダカラム)

透析で血液中から炎症を引き起こす活性化した白血球(顆粒球、単球、リンパ球)を取り除く治療法です。副腎皮質ステロイドで効果がない再燃期の患者に、寛解導入法として使用されます。

外科手術

内科的治療が基本ですが、外科手術を行うこともあります。

  • 内科的治療で効果がない場合
  • 内科的治療が行えない場合(副作用が表れるなどで)
  • 大量の出血や穿孔、急性劇症型、中毒性巨大結腸症、癌がみられる場合

術式は、直腸大腸全摘出術と回腸肛門吻合術です。以前は人工肛門を作っていましたが、現在は小腸で便を貯める袋を作り、それを肛門につなげる術式がよく行われています。これによって、術後も普通の人とほぼ変わらない生活が送れるようになり、QOLが向上しました。

潰瘍性大腸炎患者の食事

潰瘍性大腸炎の原因がはっきりとわかっていないので、予防法はありませんが、炎症を悪化させないための食事はあります。
炎症を悪化させないためには腸を休ませることが一番です。腸に刺激が少ない食事をとるようにしましょう。香辛料、炭酸飲料、柑橘類は腸を刺激するので避けるようにしましょう。
熱い食べ物や冷たい食べ物も腸を刺激するので控えましょう。
腸の狭窄が起こっている場合は、食物繊維を取ると詰まってしまうかもしれないので、なるべく食べないほうがよいでしょう
食生活の欧米化が潰瘍性大腸炎に関係あると考えられているので、肉よりは魚を食べるようにした方がよいでしょう。
激しい下痢のときは十分な水分補給も忘れないように注意してください。

潰瘍性大腸炎の予後

潰瘍性大腸炎は、寛解期と再燃期を交互に繰り返すことが特徴です。寛解期を維持するためには、継続的に薬を服用し炎症のコントロールが必要です。
潰瘍性大腸炎で死ぬ人はほとんどいないので、潰瘍性大腸炎の患者と健常者との生存率はほぼ変わらないという報告があります。しかし、7~8年以上炎症が続くと大腸癌が発生する可能性があります。そのため、長期間に渡り潰瘍性大腸炎に羅患している人は、1年に1度は内視鏡検査を受けておいた方がよいでしょう。

潰瘍性大腸炎は根治治療がないにもかかわらず、患者数は増加しています。現在、潰瘍性大腸炎の治療薬は日々開発されていますが、今後は再生医療を使った外科治療法の開発が期待されています。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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