フィニアスとファーブ:わくわくする夏休み

「フィニアスとファーブ」は、ディズニーが制作しているアメリカのテレビ番組。夏休みを楽しむため、フィニアスとファーブの義兄弟が、自分たちでメカを作り冒険に出かけるというのが大まかなストーリー。世界167カ国、35言語で放送されている。

「夏休み何しよう?」と毎話、さまざまな遊びを思いつくフィニアスとファーブ。たとえ、思いついたとしても実行不可能な遊びを、この2人は実行に移してしまいます。ロケット旅行をしたりにミイラと対決、新種の動物を発見したり……。彼らのアイディアは底をつきません。夏休みを1日たりとも無駄にしないその姿勢に、子どもはもちろん、大人も純粋に楽しめてしまう作品です。
そんな「フィニアスとファーブ」の魅力を紹介していきたいと思います。

二重のストーリーを楽しめる11分間

天才的な頭脳と想像力を持っているフィニアスとファーブは、タイムマシンやジェットコースター、潜水艦などを発明します。しかし、姉のキャンディスは2人が迷惑なイタズラをしていると誤解し、「ママに言いつけなきゃ!」と告げ口に走るのです。買い物や家事で忙しくするママを、なんとか犯行現場に連れていくも、発明品は跡形もなく消え去っていて、2人の弟は「楽しかった」と満足げにしています。ここまでが、ひとつのストーリー。

もうひとつは、ペットのカモノハシ・ペリーのお話なのですが、実は彼、「エージェントP」というアニマルスパイなのです。ドゥーフェンシュマーツ博士の悪事を阻止するべく、奮闘するようすが、フィニアスとファーブの発明と同時進行で進んでいきます。最後はお決まりのように、ペリーと博士の戦った余波で、フィニアスとファーブの発明品が破壊されます(なので、キャンディスの告げ口が成功することがありません)。そして、戦いを終えたペリーは、平凡なペットとして飼い主のもとに戻るのです。

毎回ミュージカルシーンが入るのも、ディズニーならでは。ディズニーらしい“お上品な”アニメーション映画と違い、ふざけた場面や俗世っぽいジョークがこの作品の面白さを引き立てているので、肩の力を抜いて楽しめます。

大人も夢中になれる作品

子どもはもちろん、大人にも人気のあるこの作品。“いい子にしなさい”という教育的な内容ではなく、子どもも大人も“ハチャメチャに楽しんでいる”のが、親しみやすいポイントです。

主人公のフィニアスとファーブが、義兄弟というのも、現代っぽさを演出しています。緑色の髪をしたファーブとパパがイギリス人で、ママとキャンディス、オレンジ色の髪のフィニアスがアメリカに住んでおり、2人を迎え入れました。現代では特に珍しい家族構成ではないため、物語上で重要視されていません。フィニアスとファーブは、そんなことよりも、いかに夏休みを楽しく過ごすのかを大事にしています。

また、毎話挿入されるミュージカルシーンが、どことなく懐かしい曲なのも人気の理由でしょう。ビーチ・ボーイズ風のポップスだったり、クラフトワークを連想させるようなテクノポップだったり。時折、ミュージカルばかりつめこんだエピソードも放送されるほどです。

しかも、「スター・ウォーズ」や「マーベル」、「ショーン・オブ・ザ・デッド」などの人気映画とコラボもしているんです!有名なキャラクターたちが「フィニアスとファーブ」の絵柄と世界観で観ることができるので、普段アニメと縁がない人でも楽しめるのではないでしょうか。

どこか憎めない悪役・ドゥーフェンシュマーツ博士

このアニメを重厚な内容にしてくれるキャラクターが、悪役のドゥーフェンシュマーツ博士です。自称“悪の天才科学者”である彼は、「悪のドゥーフェンシュマーツ社」という、彼ひとりしかいない会社で、ダンヴェルを含む3つの州を征服することを目標に活動しています(世界征服でないところが、すでに小さいですよね)。毎回、さまざまな発明品を作るのですが(発明品には「〇〇ネーター」と名付けています)、エージェントPによって阻止されるのがお約束です。決まり文句は「呪ってやるカモノハシペリー!」。

悪役なのですが、悪事のスケールがものすごく小さいのが笑えます。列に並ぶのが面倒くさいため作った、自分のコピーを列に並ばせる発明品「コピー&ペーストネーター」や、弟を醜くしようとして発明した「不快なやつになっちゃうネーター」など、とにかくやることが小さい!

過去の境遇も残念で、両親に捨てられて野生のヤマネコに育てられたため、法的には「人間」ではなく「ヤマネコ」なんです。幼少時代は、実の両親に庭のノーム人形にされ、学校をドレス姿で通わされた、なんていうかわいそうなエピソードも。

また、離婚した妻に多額の慰謝料をもらっていて、そのお金で発明品を作ったり、生活費を支払ったりしています。同居中の娘ヴァネッサからは毎度冷たい視線を浴びており、さみしさのあまり、敵であるはずのカモノハシペリーに愚痴をこぼすこともしばしば。
「つぎはどんなくだらない発明をしてくれるんだろう」と、毎回期待してしまうキャラクターです。

笑えるエピソードの数々

ここまで作品内容やキャラクターをざっくり解説してきましたが、「約8年間も放送されたエピソードのなかから、どれを観たらいいのかわからない」という人のために、「フィニアスとファーブ」のおすすめのエピソードを紹介していきます。

第1話「夏休みはジェットコースター」

記念すべき第1話。「夏休みはジェットコースターみたいに過ごしたい。そうだ、ジェットコースター作ろう!」と、自分たち好みのマシンを作る回です。子ども向けアニメなのにも関わらず、細かい伏線が敷かれており、はじめにキャラクターが言っていたセリフがこう繋がるのか、と感心してしまいます。

ドゥーフェンシュマーツ博士は「東海岸を西に引き寄せて地球の自転を逆にする」という、意味不明な悪事を実行。見応えのあるエピソードになっています。

第48話「フィニアスとファーブのクリスマス・バケーション」

ドゥーフェンシュマーツ博士が歌う、「クリスマスはキライじゃない」が印象的です。ほかの祝日は台無しにしたいのに、悪役に似合わずクリスマスに悪事を働く理由を思いつかない博士。いつもより長めのエピソードで、内容もクリスマスならでは。ほっこりとさせられます。

第77話「いとこたちとのサッカー対決!」

ミュージカル尽くしのスペシャル篇や、タイムマシンを作ったりするエピソードも良いのですが、「フィニアスとファーブ」は平凡な話も面白いのです。イギリスからきたファーブのいとこたちが、イギリス人っぽくなくなったファーブ相手にサッカー対決を挑みます。

普通のサッカーじゃ嫌だと、「エックス・セブン」というハイテクスタジアムで行う究極のサッカーを始めます。まず、「エックス・セブンってなんだ?」となりますが、こういう、子どもが適当に思いついたような設定も、このアニメの面白いポイントです。

長年にわたる製作背景

いまでこそ、人気アニメとなった「フィニアスとファーブ」ですが、企画当初、まったく相手にされなかったそうです。原因は、複雑で視聴者受けしないだろうから。たしかに、二重、三重と重なるエピソードは子どもには、少し難しいかもしれません。

しかし、16年間諦めずに企画を送り続けたところ、最終的にディズニーが採用。結果、約8年も放送される人気アニメとなったのです。
「夏休み」がテーマのこのアニメですが、きっかけは原作者ダン・ポベンマイヤーが母親に「夏休みだからといって、1日を無駄にしないように」と言われたことでした。彼は母親の言いつけ通り、庭に穴を掘ったり、ホームムービーを制作したりしたそう。

もう1人の原作者ジェフ・“スワンピー”・マーシュも、夏休みは冒険に出かけるなど、いつもと違うことをして過ごしました。
誰もが持っている長期休暇の記憶。長い休みがあると、普段できないことをしたくなりますよね。それがうまく描かれ、視聴者がわくわくするようなアニメになっています。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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