ツェルマット:魔の山の麓

美しいアルプスが有名な国「スイス」。そんなスイスの中でもひときわ有名な観光地が「ツェルマット」である。ツェルマットは「魔の山」とも呼ばれるマッターホルンの麓(ふもと)に位置する街だ。ツェルマットの街からは、天を衝くように鋭くそそり立つマッターホルンの姿を、まじまじと目にすることができる。圧倒的に荘厳な山の玄関口、ツェルマットの魅力を余すところなく、このコラムではお伝えしていこう。

魔の山の麓にある街「ツェルマット

「ツェルマット(Zermatt)」はスイス南部、ヴァレー州に属する街。標高1,600mに位置しており、マッターホルンのちょうど麓に当たります。ツェルマットはマッターホルンへの登山客を相手に、観光業を主として発展を遂げてきました。現在でも環境保護のため、一般車の乗り入れを許可していないというツェルマットの空気や自然は、世界的に見ても美しく澄みきっているといいます。アルプスの山々が持つ美しい自然と、包まれるような雄大な存在感を全身で感じられるツェルマットは、観光地として世界中にその名を馳せています。

ツェルマット観光のベストシーズンといわれるのは7月~9月の間。夏真っ盛りのこの時期は、標高の高いツェルマット周辺でも高山植物が咲き乱れ、美しい山々の自然を存分に堪能することができます。晴れ渡る青空の元、新緑の緑と鮮やかな花のコントラストに心奪われることは、間違いないでしょう。ハイキングをする季節としても最高のシーズンです。

9月には紅葉のシーズンになり、日々変わっていく風景の変化を楽しむこともできるといいます。季節の変化を肌で感じることができることは、チェルマットの大きな魅力です。

季節が変わり寒さが極まる冬になれば、ツェルマットの街はウインタースポーツのシーズンに突入します。スキーやスノーボードなど、世界最高峰のアルプスに囲まれて過ごす時間は、他の場所では味わうことができない圧倒的に濃密で、スケールの大きな時間になることでしょう。リゾート地としてもその名を轟かせるツェルマットは、1年間を通して楽しむことのできるスイス屈指のリゾート地なのです。

スイス屈指の観光地、ツェルマットの見所紹介

アルプス山脈の最高峰ともいわれる「マッターホルン」のお膝元に当たるツェルマットの街。そんなツェルマットには街中や周りに、さまざまな名所や見所があります。ここではその中から、特にオススメしたい見所をご紹介します。

1.アルプス最高峰、魔の山「マッターホルン」

ツェルマットの見所で、この山を紹介しないわけにはいかないでしょう。標高4,478m、通称「魔の山」とも呼ばれる「マッターホルン(Matterhorn)」です。マッターホルンはドイツ語で「牧草地の角」を意味しています。その名前の通り、天を衝くようにそそり立つ姿には神々しさすら感じてしまいます。

マッターホルンは1865年に「エドワード・ウィンパー(Edward Whymper)」のパーティーが登頂に成功するまで、「悪魔が住む山」「魔の山」として恐れられていました。「頂上付近で悪魔が石や岩を投げつけてきた」という逸話も囁(ささや)かれるほどです。現在では登山をする人が目指す山の目標のひとつとしても知られています。マッターホルンの山頂はスイスとイタリアの国境になっており、それぞれの国で異なる名前を与えられています。

そんなマッターホルンの麓に位置するツェルマットからは、さまざまな表情の山の姿を見ることができます。時間帯により異なる雄大なマッターホルンの絶景を、一日中楽しめるのはチェルマットの大きな見所といえるでしょう。特に注目したいのは朝の時間帯です。「ロウソク」と呼ばれる、日の出を受けて輝くマッターホルンの美しさたるや、言葉では尽くしがたいほど。朝の日に徐々に照らされ輝くマッターホルンの姿は、人生で一度は目にしておきたい光景のひとつといえます。

また、街の近辺にある「リッフェル湖(Riffelsee)」では、湖面に映る「逆さマッターホルン」を見ることもできます。夏には湖の周りに咲き乱れる高原植物と一緒に、冬には雪化粧をまとったマッターホルンを見ることもできる絶景スポットです。見られるのは天気がよく、風が弱い日だけと限られますが、ツェルマットに立ち寄った際にはぜひとも行っておきたい名所だといえるでしょう。

2.圧倒的な絶景、「ゴルナーグラート展望台」

標高3.089mに位置する展望台「ゴルナーグラート展望台(Gornergrat)」は、雄大なスイスの4,000m級のアルプスを、一面に見ることができる場所です。展望台からはマッターホルンをはじめ、標高4,634mの「モンテ・ローザ(Monte Rosa)」を見ることも可能。周囲360℃に広がる大パノラマは、人生で見る光景の中でも確実に上位を占める美しさと雄大さを誇るでしょう。

「クルムホテル・ゴルナーグラート(Kulmhotel Gornergrat)」は、展望台すぐそばに位置するホテルです。クルムホテルに宿泊すれば、アルプスの1日の変化を体感することができます。特に注目すべきは、夜の空を彩る満点の星空。静寂の中、眼前に広がる星空はあなただけのもの。朝焼けや日暮れの時間ももちろん絶景です。1日の中でも大きく表情を変えるアルプスの姿は、美しく神々しさを感じることでしょう。一度は泊まってみたい、理想のホテルです。

ゴルナーグラート展望台へのアクセスは、ツェルマットの街から出ている鉄道「ゴルナーグラート鉄道(gornergrat Bahn)」に乗る電車旅です。1898年開通から約100年。変わることなく運行を続ける、レトロな電車に揺られる旅はまるでマッターホルンに向かって電車を走らせているような感覚を起こします。約40分の乗車時間は、意外なほどに短く感じられるはず。徐々にマッターホルンが大きくなっていく光景は、後にも先にもこの時だけの経験となるでしょう。

3.世界最長の吊り橋「チャールス・クオーネン吊り橋」

「チャールス・クオーネン吊り橋(Charles Kuonen Suspension Bridge)」は全長約494m、高さ85mに位置する山間(やまあい)にかけられた世界最長の「吊り橋」です。完成したのは2017年。直径約53mmの鉄鋼ケーブルを用いて作られており、吊り橋の揺れを抑える最新技術が導入されています。吊り橋の足元は格子状になっており、橋を渡りながら足元の崖や山の姿を見ることもできるといいます。橋から見える360℃パノラマは、人によっては心に残るこれ以上ない絶景を、人によってはこれ以上ない恐怖心を植え付けてくることでしょう。

チェルマットの観光局は「橋を渡るスリルは言葉では言い表せないほど」とコメントしており、橋を渡る人は登山者でかつ高所恐怖症ではない人が推奨されています。ツェルマットの街からは徒歩で約6~7時間ほどと距離はあります。しかし、スリルを求めるチャレンジ精神旺盛な人にとって、この吊り橋はスイスでも指折りの名所といえるのではないでしょうか?

マッターホルンのお膝元、ツェルマットで時間を過ごすなら

これまでに紹介してきた名所は、どれもチェルマットから見たり行ったりすることができる場所です。また(チャールス・クオーネン吊り橋を除けば)万人にオススメできる場所といえるでしょう。しかし、チェルマットの街自体で時間を過ごすことも、じつはとてもオススメです。

マッターホルンの壮大さに心を震わせ、展望台での圧倒的に贅沢な風景を楽しみ、吊り橋でのスリルに浸って、体は意外にも疲れを感じているはずです。滞在中に1日くらいはのんびりと時間をとって、ツェルマットの街を散策してみるのもよいでしょう。

ツェルマットの街には、マッターホルンの歴史的な変化を追った「マッターホルン博物館(Matterhorn Museum)」や、メインストリート「バーンホフ通り(Bahnhof Srasse)」など、ゆっくりと時間を過ごせる場所も充実しています。

マッターホルン博物館はドーム状のガラスでできた愛らしい形の建築物。中にはマッターホルンの地理的な研究資料や、マッターホルンに挑んできた登山家たちの歴史が、あらゆる角度から展示されています。魔の山マッターホルンのこれまでの歴史を知るためには、とても重要なスポットだといえるでしょう。

ツェルマットのメインストリートであるバーンホフ通りにはホテルやレストラン、そしてお土産物屋が軒を連ねています。ツェルマットに流れる時の流れを感じながら、時間を過ごすのもよいでしょう。食事にはスイスの名物である「ラクレット(Racrett)」を。ラクレットは牛乳から作るチーズです。ラクレットグリルと呼ばれる専用のヒーターで溶かしたラクレットを、茹でたジャガイモにかけていただきます。

チーズの持つ芳醇な香りと甘みが、ほくほくのジャガイモに絡まった最高に贅沢な一皿。合わせるのは、地産地消のスイスワイン。これ以上ないリッチな時間を、あなたにお約束します。バーンホフ通りには、時折羊の集団も現れるといいます。牧歌的でのどかな風景。自国では味わうことのできない貴重な経験も、ツェルマット滞在の大きな楽しみのひとつです。

魔の山の懐に迷い込む、唯一無二の経験を

アルプスの聖地であるスイスでも、最高峰の山「マッターホルン」。そんなマッターホルンの山間に位置する街がツェルマットです。観光業を生業とする小さな街には、連日観光客や登山客が絶えないといいます。アルプスの雄大な大自然に囲まれた魅力的な街。そのキレイで澄んだ、美しい空気と自然を満喫しに出向いてみるのもよいでしょう。

そんなチェルマットへのアクセスは、スイスの玄関口「チューリッヒ空港(Zürich Airport)」から電車で約3時間半。これまでにない雄大な大自然への出会いにキッカケは、いつでもあなたの手の中にあります。かけがえのない感動的な出会いを求めて、ぜひ一路、ツェルマットを目指して旅に出てみてはいかがでしょうか?

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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