フレーザー島:世界最大の砂丘システム

フレーザー島はオーストラリア東部に位置する世界最大の砂島であり、地質学的価値と生態系の希少性から1992年世界自然遺産に登録された。その砂丘システムは地球の歴史と生命進化を研究するための重要なサンプルであり、また島内では純血のディンゴを含む貴重な動植物が数多く確認されている。現在はメジャーな観光地となっており、人間が環境に与える影響などを懸念して保護活動が積極的に行われている。

フレーザー島ってどんなところ?

フレーザー島(Fraser Island)はオーストラリア・クイーンズランド州に位置する世界最大の砂島です。

その美しさや特殊な生態環境が保護の対象になると評価され、1992年にユネスコの世界自然遺産に登録されました。

クイーンズランド州の州都であるブリスベンから300km北に位置し、飛行機やフェリーでアクセスすることができます。

フレーザー島は長さ123km、幅25km、最大高度は240mで総面積は1840平方kmに及びます。

周辺にはスチュアート島(Stewart Island)、ドリーム諸島(Dream Islands)など小さな島々が点在しており、保護の対象はフレーザー島周辺の高水準標高から海抜500メートルを含んでいます。

フレーザー島の大部分は国立公園に指定されており、周辺の海洋地域はグレートサンディー海洋公園(Great Sandy Marin Park)として保護を受けています。

歴史

考古学の研究によると、5000年ほど前からオーストラリアの原住民であるアボリジナルピープルのバッチュラ族(Badtjala)が住んでいたことが明らかになっており、さらに研究が進めばもっと昔から定住が始まっていたことが明らかになると期待されています。フレーザー島はバッチュラ族の言葉では「クガリ(Kgari):意味はパラダイス」と呼ばれていました。

ヨーロッパ系の入植者が到達しアボリジナルピープルを退けてしまったため、20世紀初頭に姿を消してしまいました。

初期の入植者の報告によると、フレーザー島にはかなり多くのアボリジナルピープルが住んでいたとされていますが、その後の調査では400〜600の小規模な人口だったと推定されています。人口は季節に大きく左右され、冬期など海からの食料が豊富な時期は2000〜3000人に増加したと考えられています。

アボリジナルピープル族はもう残っていないため生身の証言などは失われてしまいましたが、島内には考古学的、社会的、そして文化学的に重要な場所が多数存在し、ゴミ捨場や散布した文化的遺品、漁業用の罠、居住跡から原住民たちの暮らしぶりが研究されています。

1802年にはイギリスの航海師であるマシュー・フリンダース(Matthew Flinders)がフレーザー島に到達していますが、その後のヨーロッパ系移民との接触は不定期であり、探検家、逃亡した囚人、難破船の生存者に限定されていました。

1836年、スターリング・キャッスル号(Stirling Castle)がフレーザー島沖数百キロの地点で難破し、フレーザー島へたどり着いたことが記録されています。

その生存者の11名は救助されるまでの約6週間を島で過ごしました。生存者であったジェームズ・フレーザー船長(Captain James Fraser)の妻・エリザ・フレーザー(Eliza Fraser)は島での滞在中にアボリジナルピープルに捕獲され虐待を受けたと主張しました。その他の生存者はエリザの主張に異議を唱えましたが、情勢の賛同を得られず、結果、アボリジナルピープル部族の大虐殺と離散を引き起こしました。

フレーザー島という名前はこのエリザ・フレーザーから名付けられたとされています。(諸説あり)

現在はクイーンズランド州環境保護庁によって管理されており、観光従事者など100人ほどが定住しています。

希少な環境

フレーザー島では海岸線に続く巨大なドリフト(砂の吹きだまり)を含む、重要な地質学的プロセスが確認されています。

特に島内の巨大な砂丘は世界最長の沿岸砂丘システムであり、また地質学的な時系列を確認するための最も完全な研究対象でもあります。砂丘は現在も進化を続けています。

島の最も高い砂丘は標高240メートルに達し、40の砂丘湖が島内で確認されています。これは世界中で確認されている砂丘湖の半数に当たります。これらの湖は葉や樹皮、死んだ植物などの有機物が徐々に蓄積し、風の侵食によってくぼみを形成しながら徐々に固まっていきました。

また、砂丘が動いて河川がせき止められたことによって形成された湖や、くぼみが地下水面まで掘り下げられ出現した「ウィンドウレイク」という湖など、珍しい起源を持つ湖が数多く確認されています。

ビーチの内陸部には砂丘上に最大50メートルの高さの樹木を持つ熱帯雨林が確認されており、これは地球上で唯一確認されている現象です。

島の土壌形成過程もまた独特な特徴を持っています。砂丘系の連続的な重ね合わせによって生まれたポッドゾル性土壌(上層部の濾過によって生じるしよう樹林地帯特有の酸性土)の時系列は、0.5メートル以下の原始的な断面図から厚さの25メートル以上の巨大な形へと変化している様子が確認されています。これは世界で確認されている中で最も深いポッドソル土壌です。

島を構成する大規模な砂鉱床は、過去70万年にわたる気候変動と海面変動の連続的な記録であり、塩分や水面、砂丘の年齢・栄養状態、火災頻度に応じて、植物群落の明確な帯状分布と連続性が確認できる希少な場所です。

また島内では模様付きの沼地が発見されています。これは近隣のコーローラ(Cooloola)と並んで世界に2箇所しか発見されていません。これらの沼地は、個体数の減っている脊椎動物・無脊椎動物の重要な生息地となっています。

生態系

島内には沿岸の荒れ地から亜熱帯の熱帯雨林に至るまで、驚くほど多様な植生物が生息しています。特にウォルム(wallum)という島の低い部分にある荒地は、進化的にも生態学的にも重要な意味を持ち、春と夏には花が壮大に咲き誇ります。また、200メートル以上の高地で砂丘の上に聳え立つ熱帯雨林が世界で唯一の場所です。

350種類以上の鳥類が記録されており、島で最も豊富な動物の生き物です。シベリアの繁殖地と南オーストラリアとの間の長距離飛行中に休憩場所としてこの地域を使用する渡り鳥も多く確認されています。また絶滅が危惧されているキジインコ(Ground Parrot)の生息地として重要視されています。

哺乳類は47種確認されており、特に翼を開くと体長が2メートルを超える巨大なコウモリ・オオコウモリ(flying foxes)の個体数が多いです。

フレーザー島はディンゴ(Dingo)の純血種の数少ない生息地でとしても有名です。

ディンゴはタイリクオオカミの一種であり、中国から南下してきたオーストロネシア人(オーストロネシア系諸族ともいう)に伴ってオーストラリア内に入り、アボリジナルピープルに家畜として飼育されたり、逃げ出して野生化したりして繁栄してきました。

他種の犬との交配が可能であり純血種は貴重になっています。島内では120~150頭が確認されており、ディンゴの純血を守るために犬の持ち込みは禁止されています。(野生動物の保護の観点からいかなるペットの持ち込みも禁止されています。)

観光客の増加と同時にディンゴと人間との偶発的な事故も増えており、2001年には小児がディンゴに襲われて死亡する事故も起きています。今後は事故を防ぐために、ディンゴの保護管理も計画されています。

フレーザー島のユニークな湖や模様のついた沼地は、水の純度や酸度、栄養価が低いため、魚や他の水生生物の生息環境にとってはあまり住みやすい環境ではありません。

いくつかのカエル種は適応進化しており、特徴的な酸性条件に耐えることができます。そのようなカエル種は酸性カエル(acid frogs)と呼ばれており、中には絶滅危惧種が多く含まれています。

環境保護

海岸線のドリフトなどフレーザー島内で確認されている希少価値の高い現象は十分に大きく多様であり、絶滅危惧種を含む生態系も存続に十分な個体数と生活環境を維持し、保護活動も十分に進んでいるとされているので、人間による島への悪影響はあまりないとされています。

今のところ、土壌の汚染は確認されておらず、湖や小川などの水中環境もそのまま残っています。伐採によって森林環境はある程度脅かされてしまいましたが、現時点において伐採活動は中止されており、以前の広大な森に戻り流だけの能力は残されていると報告されています。

危惧されているものとしては、訪問者数の増加、不適切な火災、外来動植物による生態系の侵略、気候変動による劣化などがあります。

フレーザー島の観光客数は増えており、特に湖の水質に影響を与えるのではないかと管理が進んでいます。外来種の雑草や植物病、野生動物の環境への影響は少なくありませんが積極的な管理で本来の生態系は維持できるものとされています。火災は特定のエリアのみに生息している動植物を殲滅してしまう可能性から、厳重な警戒がなされています。

2007年、オーストラリア政府はフレーザー島へのより強固な保護の重要性を認識し、国家遺産リストにも追加しました。

参考:オーストラリア・環境エネルギー省公式HP

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

関連記事一覧