マッコーリー島:野生動物の楽園

マッコーリー島はオーストラリアオーストラリア南東部・タスマニア島からさらに南東約1,500kmに離れた場所位置する島である。希少な生態系と地質学的か位置の保存の目的から1997年に世界自然遺産に登録された。ペンギンやゾウアザラシの貴重な生息地として世界的にも重要視されている。

マッコーリー諸島ってどんなところ?

マッコーリー島(Macquarie Island)はオーストラリア南東部・タスマニア島からさらに南東約1,500kmに離れた島であり、オーストラリアと南極の中間に位置しています。

その希少な生態系と地質学的価値から、1997年にユネスコの世界自然遺産に登録されました。

マッコーリー島は全長34km、幅5.5km、総面積は約128平方kmに及びます。近辺には北に11km離れた場所にビショップ・クラーク諸島(Bishop Clerk Isets)、周辺12海里以内には岩石やサンゴ礁があり、保護エリア全体の面積は5572平方kmに及びます。

現在は完全な無人島であり、生態系を守るために一般人の観光目的での上陸は固く禁じられています。タスマニア島から島を周遊するクルーズ船が出ており、船上から島の様子を伺うことができます。

歴史

1810年にイギリス人によって発見され、当初は流刑地として利用することを検討していましたが、孤立しすぎた場所であったことと厳しい生活環境であることを加味して、却下されました。

ニュージーランドとオーストラリアの間で取り合いになり、結果オーストラリアが勝ち取り、1825年にタスマニア州が管轄することが決定しました。

19世紀初頭に動物性の油を摂るためにアザラシやペンギンの猟が始まり、主にランプ用の油を摂るために乱獲が行われました。

1911年から環境調査が始まり、同時に野生動物の保護が活発になりました。1933年には最初の野生動物保護区が設けられました。

1992年に地質学的価値観のために世界遺産の登録候補に挙がりましたが、ユネスコの登録基準に達せず、登録を逃しました。その後、オーストラリア政府は地質学的価値だけではなく、亜寒帯の生物地理領域を代表する海洋島生態系の広い意味でマッコーリー島に価値があると登録内容を変更し、1997年世界遺産リストに登録を果たしました。

自然環境

マッコーリー島の気候は荒涼であり、暴風が吹き荒れるため背の高い木は繁殖することができず、地面には草原が広がっています。年間を通して雨が非常に多く、記録では年間の降雨日が300日を超えた日もありました。この記録は今のところ世界最多であるとされています。

周りの海は非常に深く、島の東側には水深5000mの深海が広がっています。また、地震も多く、2004年にはマグニチュード8.1の地震も起こっています。

島の真下にある海洋地殻とマントルからの岩石でできている世界唯一の島であり、地球の地殻の深さやプレートの構造、大陸の動きなど、数百万年にわたって行われてきた地質学的な変化を研究する最も優れたサンプルの一つです。

マッコーリー諸島は、11,000〜3,000万年前に新しい海洋地殻が形成され、その時にできた海底に広がる隆起地が起源とされています。

ある段階で隆起地は広がることをやめ、地殻が圧縮し始めたことによってマントルの奥の溶岩は歯磨き粉をチューブから押し出すような形で縦に成長し始めました。尾根は成長を続け、60万年前に海面に露出しました。

表面に出ている岩石は地球の奥深くで生成されたマントルであることがわかり、マントル成分の研究に役立てられています。マッコーリー島近辺にも同じような成り立ちを持つ小島が点在し、その隆起は高いものだと数百メートルに達します。

海岸線の周りには波の侵食によって形成された海上に突起する沿岸テラスがあります。沿岸テラスはその泥炭床に根付いた食生物に覆われており、その上を歩いたときの感触から「フェザーベッド(featherbed)」と呼ばれています。

沿岸テラスの内側は200mを超える急峻な断崖になっており、中には400mを超える大型のピークも存在します。中でも最も高いのは433メートルのハミルトン山(Mt. Hamilton)です。

台地から海への斜面は、島の南端と西海岸沿いで最も壮大な景色を作り出しています。南端と西海岸沿いでは南太平洋から波が絶え間なく押し寄せ、海の積み荷やサンゴ礁に囲まれた多くの険しい入り江を形成しました。

生態系

マッコーリー島ではユニークな動植物の多様性が確認されており、重要な地球環境保全の意義のある場所でとして厳重に保護されています。

島内ではペンギンやアザラシ、海鳥が多く生息しており、特に繁殖期のペンギンの巨大な集会が有名です。

オウサマペンギン(King Penguins)の繁殖個体数は2000年の調査では15万〜17万匹と推測され、現在も拡大しています。キングペンギンは1年近く巣の近くを離れないので、強い風や雪に吹き飛ばされないようにビーチで一箇所に集まり厳しい冬を生き残ります。

ロイヤルペンギン(Royal penguin)はマッコーリー島と近郊のビショップ島とクラーク島の固有種であり、繁殖個体数は85万ペア以上と推定されています。9月〜2月の繁殖期には海岸はロイヤルペンギンの団体で埋め尽くされます。

ゾウアザラシ(Elephant seals)は繁殖期にビーチで印象的なコロニーを形成します。ゾウアザラシは、体長4.5メートル以上、体重が3.5トンにまで成長することができます。大きいオス同士の激しい衝突が島内でよく目撃されています。

急峻で険しい崖の上では個体数の減っているワタリアホウドリ(Wandering Albatross)、マユグロアホウドリ(Black-browed albatross)、ハイガシラアホウドリ(Grey-headed Albatross)、ハイイロアホウドリ(Light-mantled Albatross)の4種のアホウドリが繁殖しており、巣作りを始めるとその様子は遠くからでも確認できます。

保護活動

マッコーリー島は1999年にオーストラリア政府が宣言したマッコーリー島海洋公園(Macquarie Island Marine Park)に含まれ、エリア内の保全価値を人間の影響から守るために厳重な保護を受けています。マッコーリー島海洋公園内には160万平方kmをカバーする世界最大級の高度保護海域も設置されています。

オーストラリア南極部隊は年間を通して駐留していますが永住者はおらず、島へのアクセスは船のみに限られています。

1810年から人間の利用が始まり、周りの生物圏に大きな変化をもたらしました。

まず油を取る目的でアザラシとペンギンを乱獲してしまったため個体数が激減しました。特にペンギンは100年間で300万羽以上が殺され、1919年に環境保護団体が立ち入った時にはおよそ4000羽しか残っておらず、まさに絶滅の危機に立っていました。その後の懸命な保護活動とペンギンたちの驚異的な繁殖力のおかげで50万羽以上に回復しています。

また、人間の使用が始まって以来、複数のネコが島に持ち込まれ急速に野生化し島の生態系を乱しました。1878年にはアザラシ狩猟者が食用にウサギを島放ちましたが、予想以上に大繁殖してしまい、島内の草食を破壊するほどの被害が出ました。ピーク時は13万羽以上が確認されています。オーストラリア政府は1960年後半に粘液腫ウイルスを使用してウサギの駆除を始め、1980年代には2万羽まで抑えることに成功しました。その後駆除の成果があって島の植生は回復を見せましたが、今度はウサギを捕食していた猫たちがウサギの減少に伴い、マッコーリー島固有種の鳥類を襲い始めました

固有種の絶滅を恐れたオーストラリア政府は再び猫の殲滅に着手し、2000年までに大部分のネコを駆除することに成功しました。しかし今度は粘液腫ウイルスの影響を受けずに生き残ったウサギたちが天敵のネコがいなくなったことにより再び大繁殖し、猛スピードで植生が奪われてしまい、問題は振り出しに戻ってしまいました。同時に環境の変化によっていくつかの原種が絶滅し、その他の種も大幅に減少しました。 現在も本来の生態環境を取り戻すために、野生のウサギ、ネズミ、雑草の根絶など1960年代から積極的な管理プログラムが行われており、環境は急速に変化していますが、回復には何世紀もかかると見込まれています。

※本記事はコロナウイルス感染拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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