スティーヴ・ルカサー:天才集団TOTOのギタリスト

ロサンゼルスを中心にスタジオ・ワークで活躍してきたキーボードのデヴィッド・ペイチとドラムのジェフ・ポーカロによって結成されたスーパー・テクニシャン・バンドがトトです。音楽は何なのかを知り尽くした彼らによって生み出された楽曲は世界を席巻し数々の賞を受賞してきました。

TOTO結成

ロサンゼルスでトップ・スタジオ・ミュージシャンであったデヴィッドとジェフによるプロジェクトとしてトトはスタートします。これはというスタジオ・ミュージシャンに声を掛け、集まったメンバーは、みな名前の知られたスタジオ・ミュージシャンばかりでした。
シンセサイザー、キーボードにはジェフの弟のスティーヴ・ポーカロ、ギターには結成当時21歳、天才ギタリストの名前をほしいままにしていたスティーヴ・ルカサー、そしてボーカルにはオーディションに自作曲を持ち込んだボビー・キンボールが加わることになります。
ちなみに、この時ボビーが作った曲は「You are the Flower」で彼らのファースト・アルバム「TOTO」にも収録されています。
デビュー・アルバム「TOTO」はビルボード9位を記録するスマッシュヒット、続く「Hydra」は同37位とまずまずのスタートを切ります。
しかし、高い音楽性とテクニックを持つがゆえにメンバーが固定されず、サポートメンバーを含めると実に30人近いミュージシャンがトトに参加することになるのです。

成功からジェフの死

1982年にリリースされた「TOTO Ⅳ」が全米4位を記録する大ヒットとなり、トトの名前は全世界に知られることになります。ただ、他のバンドと違うのはトトがスタジオ・ミュージシャンの集まりであり、それぞれがセッションの仕事を優先し、バンドでの活動が二の次であったという点です。
トト結成前から全員が実力派スタジオ・ミュージシャンであった彼らは、トトの成功でさらにギャランティが跳ね上がります。当時人気絶頂だったマイケル・ジャクソンやクインシー・ジョーンズといった一流ミュージシャンがこぞって彼らとのセッションを希望したのです。
その事自体は悪いことではありませんが、彼らが仕事をすればするほど、ヒットチャートはトト・サウンドで埋め尽くされることになったのです。
結果、商業ロックと批判されトトとしてのセールスは落ち込んでいきます。また、スタジオ・ワークとバンドとしての創作のバランスの乱れからかバンドからの脱退が相次ぐことになります。まず、ボーカルのボビー・キンボールがドラッグの使用とプライベートな問題から解雇同然にバンドを去り、ベースのデヴィッド・ハンゲイトがポーカロ兄弟の次男マイク・ポーカロに押し出される形で「Isolation」を前に脱退します。そして、オリジナル・メンバーであったスティーヴ・ポーカロが「Fahrenheit」を最後にクレジットから外れることになりました。
そして、悲しい事件が起こってしまいます。トトの創始者の1人でリズム隊の要であったジェフ・ポーカロが殺虫剤によるアレルギーで1992年急逝してしまうのです。「ハーフタイム・シャッフル」と呼ばれる独自のリズム・パターンは、今でこそドラマーの必須テクニックですが当時は非常に斬新なものでした。
残ったメンバーは、ボーカルに「Jaws」や「Close Encounters of Third Kind」などの映画音楽のコンポーザーとして知られるジョン・ウイリアムズの息子ジョセフ・ウィリアムスを、ドラムには、ザ・フーでキース・ムーンの代役を務めたこともあるサイモン・フィリップを加入させますが、このあと、「TOTO Ⅳ」を上回る商業的な成功を収めることはできませんでした。

スティーヴ・ルカサーの愛器

トトのデビュー時には、ギブソンのレス・ポールとストラト・キャスターをメインに使用していました。ブラウン・サンバーストのストラトと、チェリーサンバーストのレス・ポール、あとゴールド・トップのレス・ポールも「Georgy Porgy」のビデオクリップで見ることができます。
その他には、ヘッドから指板まで全てシースルーレッドでカラーリングされ、ピック・ガードとトレモロ・ユニットはブラス製というムーンのオリジナル・ストラトキャスターもありました。
鏡面仕立てに加工されたピック・ガードにトレモロ・アームが映り込み、2本のアームが搭載されたオリジナル・ストラトキャスターと間違われたこのモデルは、その後、シェクターからも発売されることになりました。
最近では、ミュージック・マンから発売されているシグネイチャー・モデル、「Music Man LⅢ」をメインに使用しているようです。
こちらのモデルは、フロントとリアにディマジオ・カスタム・ピックアップを搭載、シングル+シングル+ハムバッキングとハムバックング×2の二種類がラインナップされています。
ブースト・ゲインスイッチが付いていて、トレモロはロック式、さらにネックにはローステッド・メイプルを採用しています。
最近のセッションでもジャンルにかかわらずよく見かけますから、相当お気に入りのギターであることが分かります。

スティーヴ・ルカサーのおすすめアルバム

多くのセッション・ワークをこなしているスティーヴですが、やはりおすすめはトトのアルバムからになります。
まずは、デビュー・アルバム「TOTO」をおすすめします。このアルバムからは「Hold the Line」がシングル・カットされましたが、スティーヴの強烈なソロを聴くことができます。
このビデオクリップを見たリスナーがトトをハードロック・バンドと思い、以降のAOR色の強い楽曲に嫌悪感を抱いたことがセールス的に安定しなかった理由の一つであったとも言われています。
しかし、並み居るヘヴィメタル・ギタリストと比べても遜色ないスティーヴのソロは一聴の価値があると言えるでしょう。
セールス的にもっとも成功した4枚目のアルバム「TOTOⅣ」は、AOL色の強い作品で、もっともトトらしい1枚と言えます。
シングル・カットされた「Africa」は全米第1位、「Rosanna」が同2位を記録する空前の大ヒット・アルバムとなったのです。
アルバム自体は、その年のグラミー賞でレコード・オブ・ザ・イヤーを含む6部無門を獲得するなど名実ともにトップ・バンドの仲間入りを果たすことになったのです。
おしゃれなトトもいいけど、もっとスティーヴのプレイを聴きたいという人には、9枚目のアルバム「Tambu」はいかがでしょうか。
前作を最後にトト・サウンドの要でもあったドラムのジェフ・ポーカロを失い、サイモン・フィリップスを迎えたこの作品では、かつてないほど、スティーヴのギターが前面に出た作品になっています。
曲調もヘヴィで暗い雰囲気のものが多く、ファースト・アルバムの「Hold the Line」が好きだったファンにはたまらない作品となっています。
スティーヴのボーカルも「99」や「I won’t Hold Back」のような甘い歌声ではなく、ハスキーでワイルドなイメージに一変しています。
ファズで歪んだルカサー・サウンドを堪能したければぜひ一度聴いてみてください。

スティーヴ・ルカサーの現在

2016年からトトとは別にナーヴ・バンドルというグループを率いて活動しています。もともとはクリスマス・ショーを行うためのプロジェクトだったのですが、ファンの評価が高く、現在も継続して活動を続けているようです。
ベースにスウェーデン出身で元ガヴァメント・ミュールのヨルゲン・カールソン、キーボードには、ジェイムス・テイラーやスモーキー・ロビンソンとのセッションでも知られるジェフ・バブコ、そしてドラムには、急逝したジェフ・ポーカロの父、ジョー・ポーカロの門下生でもあるトス・パノスという実力派ラインナップです。
決して、それぞれがビッグ・バンドに在籍していた経歴があるわけではありませんが、スタジオ・ミュージシャンとしての腕前は、みな超一流です。
トトやスタジオ・ワークと並行して行われているナーヴ・バンドルは、現在、もっともスティーヴらしいプレイが聴けるユニットで、これからも目が離せません。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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