史上初!4thネックの使い手!マイケル・アンジェロ

ボディから左右に伸びたネックの上を両手のタッピングだけで演奏する…。そんな嘘のようなトリッキーなプレイをいとも簡単にやってのけるのがアメリカはシカゴ出身のスーパー・ギタリスト、マイケル・アンジェロです。

レフティを活かした奇跡

マイケル・アンジェロがギターを始めたのは10歳とのことですから、それほど早いわけでもありません。ただ、マイケルはもともと左利きであったため、右用のギターと左用のギターを同じように弾けるように練習したのだそうです。
通っていたギタークリニックでは、2年もすると講師よりも早く上手に弾けるようになってしまい、2本のギターをタッピングだけで演奏し別々のハーモニーを奏でる奏法を独学で学んでいきます。
その後、イリノイ大学に進んだマイケルは、音楽理論と作曲理論を専攻し学士号を習得します。卓越したギターテクニックに加え、音楽理論を学んだマイケルは本格的な音楽活動を開始することになります。
最初に、タッピング奏法をマスターしたマイケルは、自身のプレイスタイルにマッチしたギターを制作するためクアッドギターを考案します。これは4本のネックがX状にボディから伸びたギターで、もちろんマイケル以外に弾きこなせる人間はいませんでした。
にもかかわらず、このギターはエルパソでのライブ中に盗まれてしまい、長い間日の目を見ることがなかったのです。

ホランドからナイトロ、そしてソロへ

マイケルのデビューは、アトランティック・レコードからリリースされたトミー・ホーランドのアルバムでのプレイがきっかけでした。
その後、ジム・ジレットのソロアルバムに参加したのを機に、ベースのT.J.レーサー、ドラマーのボビー・ロックらと共にナイトロを結成します。
ナイトロは超変速奏法のマイケル、6オクターブの声域を持ち、声でワイングラスを割ったと言われるジムと実力的にはトップクラスのハード・ロック・バンドでしたがセールスには恵まれず1999年に4枚目のアルバムを出した後解散してしまいます。

マイケル・アンジェロの愛器

マイケルはディーンと専属契約を結んでおり、彼のために作ったシグネイチャーモデルをメインに使用しています。通常のオーソドックスな6弦ソリッドギターもありますが、ダブルネックを始めたくさんのユニークなギターを揃えています。
一見するとワーロック・タイプのソリッドギターの外見をしているギターでも、よく見るとフレットが29まで刻んであったりします。(通常は21~22フレット、BCリッチやアレンビックなどでも24フレットが限界)
そして、マイケルの代名詞とも言える複数ネックを装備したギター。2018年現在、マイケルがメインで確認できるのは2本のギターがお尻の部分でくっついたようなダブル・アックスと左右2本ずつ、合計4本のネックが付いているクワッド・ギターです。ダブル・アックスの方は左右とも6弦のレギュラー・チューニングでフロントとリアにハムバッキング・ピックアップがマウントされています。
トレモロ・ユニットはフロイドローズがマウントされているようですが、アームは装着されていません。
1ボリューム1トーンにピックアップ・セレクターのためのトグルス・スイッチと非常にシンプルな作りになっています。
クワッド・ギターの方は重量の関係からか、さらにシンプルになっていて4つのギターに対しコントローラーは全て1ボリュームのみとなっています。
クワッド・ギターは、さらに改良が加えられているようで、最新の動画では下の2本のネックが自動で上下するタイプも作られているようです。
ライブにおいてマイケルは、このギターを一点止めのストラップで固定し、クルクルと回転させながら全てのネックを使用してプレイします。

オンリーワンのプレイスタイル

エドワード・ヴァン・ヘイレンやイングヴェイ・マルムスティーンのプレイが素晴らしいと言っても世の中には同じくらいのテクニックを持つギタリストは結構いるものです。
単にコピーして演奏するだけなら本家よりも上手に弾くことができるプレイヤーもいることでしょう。
でも、マイケルのプレイだけは別です。マイケルがスーパー・ギタリストと呼ばれるミュージシャンに比べて今ひとつ人気やネームバリューがないのも、あまりに凄すぎるギターテクニックによるものだという意見もあるくらいなのです。
ファンはリスペクトするギタリストのプレイを自分のものにするために、何度も、何度も聞いて真似をすることから始めます。最初はおぼつかない運指であっても、繰り返し毎日練習することで絶対に無理だと思っていたフレーズであっても、いつか弾けるようになるものなのです。
ところがマイケルのプレイだけは別格です。両手でタッピングして別のメロディを奏でる左右どちらでも同じようにギターが弾ける、そんなプレイができるギタリストはまずいません。
そもそも、左右にネックが伸びた特殊なギターなど限定モデルを探しても入手することは困難でしょう。自分が弾くことができない、真似することができないギタリストをファンはなかなかヒーローとして見ることはできないのです。
2018年現在、世界でもっとも早いギタリストしてギネスに認定されているのは、バーニング・ヘルのブラジル人ギタリスト、チアゴ・デラ・ヴェガとなっていますが、アメリカの雑誌ギター・ワン・マガジン誌では世界で最も早くギターを弾く男としてマイケル・アンジェロを選んだことがあります。
ちなみに、その時のランキングでは光速のギタリストと呼ばれるクリス・インペリテリが2位、鬼のスウィープ・ピッキングで知られるイングヴェイですら5位でした。
その他に、ネックの上から人差し指や親指を使って弦を抑えるアンジェロ・ラッシュという奏法も彼のオリジナルです。
非常に速いスピードでネックの上から弦をタッピングするため、動画サイトの画質では手がぶれてしまい、何をしているかさえ確認できないほどです。いずれにせよ、通常の努力ではマイケルのプレイを真似る事自体、まず不可能であると言えるでしょう。

マイケル・アンジェロのおすすめアルバム

マイケル・アンジェロはナイトロで4枚、ソロとして11枚のアルバムを出しています。その中でおすすめのアルバムとなると2004年にリリースされた「Lucid Intervals and Moments of Clarity,Pt.2」、2013年にリリースされた「Intermezzo」があげられます。
前者は、マイケルの3枚目と4枚目のアルバムからのコンピレーション・アルバムになっていてマイケルのテクニックを知るためには格好の1枚になっています。
後者のアルバムでは、ドッケンのギタリストであったジョージ・リンチやシンフォニー・エックスのギタリスト、マイケル・ロメオなど多くのゲストが参加していて聴き応えのあるアルバムに仕上がっています。

現在のマイケル・アンジェロ

マイケルは音楽理論の博士号を持っていることから、数々の教則本などを制作しています。とくに教則用のDVDは人気があり、すでに10枚近くリリースされていて中には10万本以上売れているものもあるほどです。
また、コラムニストとしても活動しており、いくつかの専門誌に定期的にコラムを連載しています。
本業のバンド活動の方では、2016年ジム・ジレットとともにナイトロの再結成が発表されました。ドラムにラム・オブ・ゴッドのクリス・アドラーを加え、ニュー・アルバムのリリースも計画されているようです。
当時、トップクラスの実力を持ちながらもセールス的な成功を果たせなかった彼らが30年の時を越えてリベンジすることができるのか、興味深いニュースです。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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