スティーヴ・ヴァイ:バークリーが生んだ天才ギタリスト

天才の名をほしいままにし、フランク・ザッパ門下生の中ではもっとも成功したと言われるスティーヴ・ヴァイ。彼の超人的なプレイと音楽センスは一体どこから来るのでしょうか。

名門、バークリー音楽大学

一時期、ミュージシャンの間でトレンドにもなったバークリー音楽大学。その魁とも言えるのがスティーヴ・ヴァイです。
6歳でオルガンを始めたスティーヴは、すぐに絶対音感を持っていることに気が付きます。耳にしたメロディーをその場で演奏できるスキルは周囲からも高く評価されていました。
その後、13歳の時にレッド・ツェッペリンを聞きロックに目覚め、テスコのギターを5ドルで購入します。通常ですと、ここから独学でギターを学ぶという道筋が多いのですが、幼少期から音楽を習うということに慣れていたスティーヴはギターの師匠を探すことにします。
この時、たまたまスティーヴ家の近くで教室を開いていたのが、のちに数々の大物ミュージシャンとのセッションで有名になるジョー・サトリアーニでした。フュージョン・ギタリストとして知られるジョーですが、ディープ・パープルのライブでリッチー・ブラックモアの代わりを務めたことがあるなどハード・ロックのキャリアにおいても確かなものを持っています。
ジョーにギターを教わったことは、その後のヴァイにも大きな影響を与えることになったと言われています。
ハイ・スクールで音楽を専攻したスティーヴは、バークリー音楽大学に進み、さらに音楽理論や楽典といったものを学んでいきます。絶対音感を持つスティーヴは、とくに採譜能力に長けていて高いスキルを見込まれてフランク・ザッパ・バンドの採譜係として採用されることになるのです。

ザッパも認めたスティーヴ・ヴァイのスキル

フランク・ザッパ・バンドでの仕事は主に2つありました。1つはザッパがステージやスタジオで演奏したプレイを譜面に書き起こすこと、もう1つは、ザッパが作曲したものの難易度が高くて弾きこなせない曲をザッパの代わりにプレイすることでした。
ザッパ・バンドのもとで働く一方、この時期にスティーヴは多くのセッションやスタジオ・ワークをこなしていきます。
そして、1984年フランク・ザッパ・バンドを離れ、初のソロアルバム「Flex-Able」を発表します。

超絶ギタリストとしてロック・シーンに登場

スティーヴ・ヴァイの名前が一躍ワールドワイドになったのは、アルカトラスに参加したことがきっかけでした。当時、グラハム・ボネット率いるアルカトラスは、速弾きギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンを失い後任のギタリストを探していました。
良くも悪くも個性的でスーパー・テクニックを持っていたイングヴェイの代わりということで人選は難航します。
最終的にはオーディションによって決定されたのですが、そこには後に光速のギタリストと呼ばれたクリス・インペリテリも参加していました。
イングヴェイの後任と言うことで世間の注目を集めたスティーヴですが、見事に代役を務めます。いえ、代役どころか全く新しいアルカトラスの魅力を引き出すことに成功するのです。
どちらかと言うとブリティッシュ・ロックに近い様式美を前面に押し出したイングヴェイに対し、スティーヴは明るくハードなアメリカン・ロックを基調とした曲を提供します。もちろん、ギタープレイもイングヴェイとは正反対、前衛的でありながらテクニカルなプレイで多くのロック・ファンをうならせました。

ソロ活動までの軌跡

しかし、スティーヴもアルカトラスでは1枚のアルバムに参加しただけで退団してしまいます。脱退の理由は、デヴィッド・リー・ロスのソロ・プロジェクトに参加するためでした。
当時、ヴァン・ヘイレンを脱退しソロ活動に専念していたデイヴは、ビッグ・ネームを集めたスーパー・バンドを企画中でメンバーを探していたのです。
ベースには、アイアン・メイデンのスティーヴ・ハリスと並ぶ超絶テクニシャン、ビリー・シーハン、後にサイモン・フィリップに代わってTOTOでもドラムを叩いくことになるグレッグ・ビソネット、そしてギターにはスティーヴ・ヴァイというスーパーテクニシャン集団が集められました。
世界中のロック・ファンが注目する中発表されたアルバム「Eat’Em and Smile」は、4人の個性がぶつかり合いながらもエンターテイメントの枠組みにしっかりと収まった傑作で、全米4位を記録するヒット・アルバムになります。
デイヴの元で2枚のアルバムを発表したのち、映画「Crossroads」にも出演。準主役である敵役ジャック・バトラーを熱演し高い評価を受けます。
その後、ディープ・パープルを脱退したデヴィッド・カヴァーデイルのホワイト・スネイクで1枚のスタジオ・アルバムに参加したのを最後に以後はソロ、セッションワークが中心となっていきます。

スティーヴ・ヴァイの愛器

フランク・ザッパ・バンド、アルカトラスのころはフェンダーのストラトキャスターをメインに使用していましたが、その後はアイバニーズのシグネイチャー・モデルオンリーのようです。
JEMと呼ばれるこのギターは、基本的にはストラトキャスターをさらにシャープにした外観を持ち、ボディ上部に取手のような穴が開けられています。ピックアップはハムバッキング+シングルコイル+ハムバッキングの組み合わせ、ほぼ全てのギターにフロイドローズのトレモロユニットが搭載されています。
JEMは細かな仕様が変更されているいくつかのバージョンがあり、サスティナーやブースターが内蔵されているもの、高音域のフレットがスキャロップに加工されているもの、7弦仕様に改造されているものなどがあります。
スティーヴはさまざまな、カラーリングのJEMを持っていますがサイケデリックでポップなカラーリングを好んでいるようです。
カスタマイズされたJEMの中にはトリプルネックのものも存在し、上から12弦、6弦、6弦フレットレスの組み合わせになっています。
トリプルネックと言えば、以前、ホワイト・スネイクのライブでハート型のボディに左に2本、右に1本ネックが付いている変形ギターを使用していたこともあります。
その他では、やはりアイバニーズのユニバースやRGシリーズ、BCリッチなどもコレクションしているようです。

スティーヴ・ヴァイのおすすめアルバム

スティーヴの超絶ギターを堪能したいのであれば、1990年に発表されたソロアルバム「Passion and Warfare」がおすすめです。このアルバムは全曲インストゥルメンタルにもかかわらずビルボード最高18位を記録しゴールドディスクに認定されています。スティーヴのアルバムではバラードの指定席となっている7曲目の「For the Love of God」のギタープレイは従来の泣きのギターとは少し違う、スティーヴならではのブルージーなギターソロを聴くことができます。
もっとハードなスティーヴを聴きたいのであれば、デイヴとのアルバムをおすすめします。
デイヴ時代の2枚はどちらも甲乙つけがたいですが、スティーヴ自身は1枚目の「Eat’EM and Smile」の方が気に入っているとインタビューで答えています。理由は2枚目の「Skyscraper」が若干オーバープロデュースになってしまったとのこと、たしかに、このアルバムでは通常のエレキギターやアコースティックギターに加え、シタールなども取り入れており前作のストレートなポップ・ロックよりも難解さが増した印象があります。とは言っても、どちらも非常に優れたアルバムであることは間違いありませんから、あとは好みの問題と言えるでしょう。

現在のスティーヴ・ヴァイ

現在もスティーヴは精力的にソロアルバムやセッションワークをこなしています。中でも2011年から活動しているG3ユニットから派生したジェネレーション・アックスは各地で大反響を巻き起こしています。
8弦ギターのトーシン・アバシ、エクストリームのヌーノ・ベッテンコート、オジー・オズボーン・バンドのザック・ワイルド、アルカトラスにおける先輩ギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンにスティーヴ・ヴァイを加えた古今東西の5人のスーパーギタリストによる共演は信じられないほど豪華なラインナップです。
性格も音楽の好みも違いそうなスーパーギタリスト達が一同に介した背景には、スティーヴの真面目で温厚な人柄が影響しているのかもしれません。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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