ニール・ショーン:ジャーニーを率いたプログレ・ハードの雄

アメリカを代表するプログレ・ロック・バンドとして一時代を築いたジャーニーですが、高い音楽性を求めるあまり、度重なるメンバーチェンジに悩まされてきました。サンフランシスコで産声を上げたジャーニーは、サポートメンバーまで含めると現在までに20人近いミュージシャンが在籍したことになります。

天才ギタリスト、ニール・ショーン

カルロス・サンタナに見出されわずか17歳でデビューを飾ったニール・ショーンが、同じくサンタナ・バンドに在籍していたキーボードのグレッグ・ローリーとともに新バンドを立ち上げようと計画したのが1972年サンフランシスコでのことです。
ベースにロス・ヴァロリー、ドラムにエインズレー・ダンバーの4人編成でインストゥルメンタルを中心に演奏していましたが、人気の方は今ひとつでした。
デビュー・アルバム「Journey」はビルボードで100位圏内に入ることもなく、次作の「Look into the Future」では方向性を変え、全てボーカル曲にしたにもかかわらず、100位に到達するのがやっとという状況だったのです。

プログレ・ハードからハード・ポップへ

低迷するバンドに大きな転換期が訪れたのは、1本のデモテープがジャーニーのマネージャーの元に届いたことがきっかけでした。
エイリアン・プロジェクトとクレジットされたデモテープからは、圧倒的な声量と音域で歌い上げるボーカルの声が聞こえてきました。
すぐに、コンタクトを取った結果、バンドに加入したのがスティーヴ・ペリーだったのです。
実は、スティーヴ自身もすでにエイリアン・プロジェクトとしてメジャーデビューが決まっていたのですが、直前にベースが交通事故で他界してしまい、デビューそのものが白紙になっていたのです。
スティーヴを迎えて作られた4枚目のアルバム「Infinity」でバンドはついに商業的な成功を手に入れます。スティーヴの書く曲とジャーニーの持つ高い音楽性がマッチしたこのアルバムは、全米21位まで上り詰め初のプラチナ・ディスクをもたらすことになるのです。
永遠に続くかと思われたスティーヴとニールによる黄金時代ですが、1986年突然スティーヴの脱退が伝えられます。
その後、1996年に一旦は復帰するものの1998年には再び脱退、現在はフィリピン出身のアーネル・ピネダが後任を任されています。

ニール・ショーンの愛器

さまざまなギターを使うニール・ショーンですが、やはりいちばんしっくり来るのがギブソンのレスポールではないでしょうか。ゴールドトップ、ブラックフィニッシュ、タイガーサンバーストなどさまざまなカラーリングのモデルを愛用しており、トトのスティーヴ・ルカサーとヴィンテージのレスポールを巡って争奪戦を繰り広げたこともあったようです。
ライブでもっぱら使われていたのが、ギブソンと共同開発したギブソン・レスポール・ニール・ショーンモデルです。
オリジナルのレスポールをもとに開発されたこのギターには、なんとケーラーではなくフロイドローズのトレモロユニットが搭載されています。さらにアッセンブリにはサスティナーとトレブルブースターが組み込まれていてさまざまな音色を表現できる仕様になっています。
最近では2011年にライセンス契約を締結したポール・リード・スミス製のシグネイチャーモデルも使用しています。こちらは、当初ローランドのギター・シンセサイザー・ドライバーを内蔵した特殊なギターでしたが、2013年、ポール・リード・スミスのシングル・カットをベースとした正式なニール・ショーンモデルが発売されました。
こちらは、シンセサイザー・ドライバーは搭載されておらず、セミアコ状ボディの中身に空洞が設けられたホロウボディ仕様となっているのが特徴です。
少し変わり種のギターということで言えば、以前日本のギターメーカーがニール・ショーンにプレゼントしたダブルネックがあります。
ジャーニーのシンボルでもあるスカラベをボディデザインに持つこのギターは、なんと左右1本ずつ対象にネックが取り付けられているのです。どちらも6弦仕様のネックが取り付けられておりピックアップは左右ともに1ハムバッカー。
ニール・ショーンは雑誌のインタビューで、左は通常のプレイに、右はオープンチューニングにしてボトルネック奏法に利用すると答えていました。

ニール・ショーンのプレイスタイル

サンタナ・バンドにいたころから、卓越したギタープレイには定評がありました。サザンロックが中心だったサンタナ時代は、どちらかと言えばブルージーな泣きのギター、ラテン風の速いリフが中心でしたが、ジャーニーを結成してからは都会的なプログレ志向が前面に出てくるようになります。
10代の頃からギターで生計を立てていただけあり、スタジオワーク、セッションなど短いフレーズを弾いてもキラリと光るものが感じられます。ジャーニーにおけるプレイも素晴らしいですが、ヴァン・ヘイレン加入前のサミー・ヘイガーとジョイントしたヘイガー・ショーン・アーロンソン・シュリーヴでのパワーギターやポール・ロジャースのアルバムに収録された「Muddy Water Blues」におけるブルージーなプレイもおすすめです。
また、リー・リトナーの「6String Theory」では「68」と「In your Dreams」の2曲に参加していて、スティーヴ・ルカサー、パット・マルティーノ、ジョージ・ベンソン、マイク・スターンといった名だたるギターの名手を相手にその存在感を際立たせています。

ジャーニーのおすすめアルバム

試行錯誤を繰り返したジャーニーの一つの完成形であると言えるアルバムが、彼らの7枚目のスタジオ・アルバム「Escape」です。スティーヴ・ペリーが加入してからのアルバムは、どれも完成度が高く、セールス的にも一定の成功を収めてはきましたが、100%満足できるものではなかったような気がします。
そんな、モヤモヤとした思いを吹き飛ばしてくれたのが、この「Escape」だったのです。
このアルバムでは、新しくキーボードにジョナサン・ケインを迎えて作られ、全世界で1000万枚以上を売り上げたと言われています。
シングルカットされた「Open Arms」はビルボードで2位を記録し、アルバムは初の1位を獲得します。
次作にあたる「Frontiers」も名盤です。ロックファンなら一度はイントロを聞いたことがあるのではないかと言えるほど有名な「SEPARATE WAYS」で幕を開けるこのアルバムは、前作を上回る勢いで売れ、1曲目から5曲目までがシングルカットされ、いずれもビルボードの30位以内に入るという大ヒットアルバムになったのです。
残念ながら、37週に渡って全米チャートの1位に君臨し続けたマイケル・ジャクソンの「Thriller」に阻まれ1位を獲得することはできませんでしたが、それでも9週連続で2位にランキングされました。
ジャーニー初心者の方なら1989年にリリースされた「Journey Greatest Hits」をおすすめします。スティーヴ・ペリーが加入した「Infinity」から「Raised on Radio」までの6枚のアルバムから厳選された15曲が収録されたベスト盤でジャーニーの魅力がぎっしりと詰まっています。

現在のジャーニー

2018年、オリジナルのメンバーはギターのニール・ショーンはとベースのロス・ヴァロリーの2人だけになってしまいました。
一時は復帰したジョー・ペリーも体調不良のため脱退、バンドとの溝も大きくなり復帰は難しい状況となっています。ニール・ショーンも初期のキーボードであるグレッグ・ローリーとともにサンタナのアルバムに参加するなどしていましたが、現在は再びジャーニーとしてがんばっているようです。YouTubeの動画を見てメンバーが惚れ込んだと言われるフィリピン人ボーカリスト、アーネル・ピネダもバンドになじみ、精力的にツアーをこなしています。
ベスト盤の発売を除けば2011年以来スタジオ・アルバムがリリースされていないため、ファンの関心はもっぱらニュー・アルバムに向いているようです。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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