カルロス・サンタナ:世界を制したラテン・ロック

カルロス・サンタナは、情緒あふれるサウンドと美しいメロディで一世を風靡したギタリストです。メキシコをふるさとに持つサンタナは、ラテンやブルースなどさまざまな音楽を吸収・消化し、オンリー・ワンのサザンロックを構築していったのです。

皿洗いからギターヒーローへ

10代のサンタナは、皿洗いのアルバイトと路上ライブでなんとか生計を立てていました。父親はヴァイオリン奏者でしたが、それほど裕福な状況ではなかったようです。
カルロスがデビューのきっかけを掴んだのは、彼がよく行くクラブでの事件がきっかけでした。
1966年、ちょうど自身のブルースバンドを解散し、ソロとして活動していたポール・バターフィールドがサンタナの住む街のクラブに出演することになりました。
ところが、アルコールとドラッグの影響でライブはキャンセル、困った責任者のビル・グラハムは地元のミュージシャンを集め、即席のバンドを作ってピンチを切り抜けようとします。
幸い、ある程度のメンバーは集まったのですが、ギタリストだけはこれといった人材がいませんでした。その時、ある人物がカルロス・サンタナを推薦しオーディションの結果、即席バンドに加わることになったのです。
その夜のライブにおけるオーディエンスの反応を見て、サンタナはプロになることを決意します。ストリート・ミュージシャン仲間であった、デヴィッド・ブラウン、マーカス・マローン、グレッグ・ローリーらと、サンタナ・ブルース・バンドを結成するのです。
その後、2年間は地道に活動を続け、1969年コロムビアレコードから待望のファースト・アルバム「Santana」をリリースします。
続く1970年2枚目のアルバムが全米1位を獲得。同アルバムからシングル・カットされた「Black Magic Woman」はシングルチャート4位、「Oye Como Va」は13位を記録する大ヒットとなり、サンタナの名前は全米に知られることになります。

低迷期から再ブレイクへ

順風満帆にも思えたサンタナですが、その後はセールスに苦しめられます。東洋哲学に傾倒していたのもこの時期で、長らくヒットチャートから遠ざかることになるのです。
そんなサンタナが再び脚光を浴びたのが、1999年に発表した「Supernatural」の空前の大ヒットを記録しました。2500万枚は売れたとされるこのアルバムでは、グラミー賞の9部門を全て独占、シングル・カットされた「Smooth」は全米ナンバー1を記録したのです。
このアルバムの成功で、サンタナは再び音楽界の第一線に復帰することになり、以降、コンスタントにアルバムを発表し続けているのです。

サンタナの愛器

ブルースを基本にした非常にオーソドックスなプレイが目立ちます。サウンド的にはほどよくオーバードライブのかかった骨太のトーンで、ロングサスティンがよく効いています。
サンタナと言えば、ハムバッカー+コンプレッサーの組み合わせが有名で、ギブソンやYAMAHAのSGモデルをメインに使用していました。
とくに、シグネイチャーモデルを発表しているYAMAHAはお気に入りだったようで、SG175をベースにしたカスタムギター「BUDDA」はライブでもよく見かけました。
このギターはナチュラルウッドの木目の上に、座したブッダがインレイで描かれているもので、限定発売されたこともあったようです。
現在は、ポール・リード・スミスから出ているSE-Santana SAをメインで使っていることが多く、ハードな曲から哀愁漂うラテン・ロックまで全てSA1本でこなしています。
大ヒットを記録した「Smooth」のビデオクリップでも、美しい虎目のサンバーストが輝くPRS-SE-Santana SAを見ることができます。

サンタナのおすすめアルバム

2018年時点ですでにキャリアは50年、サンタナ・バンド名義のスタジオ・アルバムだけで24枚を数えます。
その中で、初期のおすすめアルバムとしてはデビュー2作目で早くも全米ナンバー1を獲得した「Abraxas」、同じく全米1位となった3枚目のアルバム「SantanaⅢ」が挙げられます。
「Abraxas」には初期のサンタナの代表曲である「Black Magic Woman」が収録されているだけでも一聴の価値がありますが、全ての楽曲が高いレベルでまとまっている傑作です。
また「SantanaⅢ」から、ツインギターを採用しているのですが、なんとそのギタリストは若干16歳のニール・ショーンでした。のちにジャーニーを結成して世界的ミュージシャンとなるニール・ショーンのプロデビュー作がサンタナⅢだったわけです。
「Jungle Strut」や「Taboo」などでサンタナとの息の合ったツインリードを聴くことができます。
そして、サンタナのキャリアの中でもっとも成功した「Supernatural」も外せません。
バンドとしては、18作目、デビューから30年の節目に発表されたこのアルバムは空前の大ヒットとなります。このアルバムの最大の特徴は、多くのゲスト・ミュージシャンを招いて作られたことです。
グラミー賞を獲得したこともあるシンガーソングライター、デイヴ・マシューズ、全世界で4000万枚以上のセールスを記録した若手オルタナティブ・ロック・バンド、マッチボックス・トゥエンティのボーカル、ロブ・トーマス、そして、Mr.スローハンド、エリック・クラプトンなど名だたるミュージシャンが参加しているのです。
これだけの人材を集められるサンタナの人柄にも驚かされますが、完成されたアルバムはまさに非の打ち所のない名盤。「Smooth」ではロブ・トーマスのボーカルを、「The Calling」ではクラプトンとの共演を聴くことができます。
最後にもう1枚おすすめするアルバムがあります。サンタナ・バンドのナンバリング・アルバムでもある「Santana Ⅳ」です。
このアルバムが発売されたのは2016年のことですからⅢからは実に45年も経過してからの続編ということになります。
このアルバムで注目するべき点は、Ⅲリリース時のメンバーが再集結したということです。「Supernatural」のヒット以降、サンタナは多くのプレーヤーをゲストに招いてレコーディングをする方策を取ってきました。当初「Santana Ⅳ」も同じ路線で行く予定だったのだそうですが、突然ニール・ショーンの方から共演を求めてきたのです。
それを聞いたサンタナは、ニールが来るなら他のギタリストはいらない、と即決し、さらにキーボードのグレッグ・ローリー、ドラムのマイケル・シュリーヴ、パーカッションのマイク・カラベロを招集し、45年間止まっていた時計の針を再び動かすことにしたのです。
このアルバムは全米5位を記録する大ヒットアルバムになりました。また、リリースを記念してジャーニーとのジョイントコンサートも行われ、それぞれのファンにはたまらないイベントとなったのです。全16曲が収録されたアルバムのうちインストゥルメンタルは5曲、そのどれもがニールとサンタナの緊張感あふれるプレイを聴くことができます。

サンタナの魅力

フォークやブルース、ラテンやアフリカンミュージックなどさまざまな音楽を吸収しサザンロックへと昇華させてきたサンタナですが、いくつになっても貪欲に新しい音楽を求め続けています。
前述の「Supernatural」ではオルタナティブ・ロックのスターであるロブ・トーマスやヒップ・ホップ界のマルチミュージシャン、シー・ローなどと共演していますし、「Shaman」では「Everywhere」のヒットで知られるポップスの歌姫ミシェル・ブランチやスペインのクラシック・テノール歌手、プラシド・ドミンゴを招いています。
極めつけは、「All that I am」に参加したゲストです。全米を代表するハードロック・バンド、エアロスミスのボーカルであるスティーヴン・タイラーやヘヴィメタルバンドとして一世を風靡したメタリカのギタリスト、カーク・ハメットなどがクレジットされています。
ジャンルや国籍、年齢や性別にとらわれず、自分に必要なもの、興味のあるものに関しては常に積極的に吸収していく。こういったサンタナの姿勢こそが50年経ってもチャートの上位に君臨できる理由なのかもしれません。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

関連記事一覧