ストレイ・キャッツ:ロカビリーで世界を制した永遠の不良魂

ネオロカビリーの旗手として1980年代に一世を風靡したバンドがストレイ・キャッツです。リーダーのブライアン・セッツァーを中心とした最小単位のトリオであるにもかかわらず、ブルースやカントリーを取り入れ巧みにアレンジを施したストレイキャッツサウンドは、世界中のティーンエイジャーのハートを掴みました。

ストレイ・キャッツ

多くのバンドが最終的にアメリカでの成功を夢見て渡米するのに対し、ストレイ・キャッツはニューヨークで結成されたのち、イギリスのロンドンへ渡ります。
長いリーゼントに革ジャンというパンク・ロッカーのような風貌にもかかわらず、ストレートなロックやロカビリーを演奏する彼らはロンドンで次第に頭角を現していきます。
とくに、オーディエンスを惹きつけたのは彼らの楽器に対するこだわりでした。
ギターボーカルのブライアン・セッツァーはバカでかいフルアコをかき鳴らし、ベースのリー・ロッカーはさらに巨大なウッド・ベースを引きずりながらステージを駆け回ります。そして、ドラムのスリム・ジム・ファントムに至っては座ることすらせず、バスドラムとスネアとたった1枚のシンバルのみ。それでいて重く重厚なサウンドを演奏するのですからまるでマジックを見ているような感覚だったのでしょう。
やがて、彼らの人気はメディアが注目することになりローリング・ストーンズのミック・ジャガーが自身のレーベルからデビューしないかと声を掛けます。
当時からローリング・ストーンズの人気は不動のものでしたが、バンドはこの申し出を断ります。その後、大手レコード会社により大争奪戦が繰り広げられ、最終的にアリスタ・レコードから「Stray Cats」をリリースすることになったのです。このアルバムはアメリカでは発売されなかったためセールス的には特筆すべきものではありませんでしたが、イギリス、ヨーロッパでは大ヒットを記録し、全英では最高6位にランクインしました。

アメリカへの凱旋

イギリスでのデビューから遅れること1年、EMIからアメリカを含めたワールドワイドでデビューすることになります。デビューアルバムはすでにイギリスなどで発売されていた
2枚のアルバムからベストチューンを選ぶ方式でリミックスされたものにもかかわらず、大ヒットを記録しプラチナ・アルバムを獲得することになります。
ストレイ・キャッツのこだわりは、ファンだけでなく同業のミュージシャンたちからも一目置かれていたようです。全米ツアーには多くのゲストが飛び入りで参加し、各地で大盛況でしたが、中でもブルース・スプリングスティーンが突然ステージの現れ、ブライアンと「Long Tall Sally」を歌ったニュースは世界中のファンの間で話題となりました。

メンバーの特徴

バンドの中心人物でボーカル・ギターを担当しているブライアン・セッツァーは、デビューから一貫してグレッチのG-6120ナッシュビルを愛用しています。G-6120と言えば、「Summer time Blues」や「C’mon Everybody」のヒットで知られる悲劇のロックスターエディ・コクランの影響と言われています。
信じられない話ですが、ブライアンがギターを始めた当時、ロカビリーの人気自体が低迷していたこともあり、G-6120をたった100ドルで購入したのだそうです。
2018年現在、同モデルは比較的新しい2000年台のモデルでも4000ドルはしますから、1959年製ともなれば、おそらく1万ドルは下らないでしょう。
ベースのリー・ロッカーはウッド・ベースを愛用します。再結成後に一時期エレキベースを持っていたこともありますが、リーと言えばやはり巨大なウッド・ベースを引きずりながら演奏するスタイルがぴったりきます。
器用にもベースの上に飛び乗り演奏するリーは、ステージでのハイライトの一つとなっていました。
そして、ドラムスのスリム・ジム・ファントムです。よくビートルズのリンゴ・スターのドラムセットを最小単位の組み合わせと言われることがありますが、スリムの場合は、そこからさらにフロアタムとハイアットをオミットしています。
椅子に座らず立ったまま演奏するスタイルは、かえって斬新でクールに映ったものです。曲によって、クイーンのロジャー・テイラーがバスドラムとタンバリンだけで演奏することはありましたが、スリムの場合は、全曲このセットで通します。
こういったこだわりが、ストレイ・キャッツをいつまでも新鮮に見せてくれる要因のひとつなのかもしれません。
彼らのライブでは、フロントに3人が横一線に並んで演奏する独特なスタンスを取っており、ギター・ソロの時などリーは重いウッド・ベースを引きずってステージを移動し、スリムはバスドラの上に飛び乗ってスネアを叩きまくるのが恒例となっています。

ストレイ・キャッツのおすすめアルバム

ストレイ・キャッツがアメリカ本国でデビューしたのは、イギリスで2枚のアルバムを出した後のことです。そのため、本国でのファースト・アルバムはすでに発売されていた1枚目の「Stray Cas」と2枚目の「Gonna Ball」をリミックスしたものになりました。
ワールドワイド的にはファースト・アルバムにあたる「Built for Speed」は、なんと15週間も全米チャートの2位にランキングされる大ヒットとなります。
シングルカットされた「Rock this Town」は9位、「Stray Cats」は3位を記録するなどたった1枚のアルバムでストレイ・キャッツは凱旋を果たしたことになったのです。
ちなみに、12週もの間ストレイ・キャッツの1位を阻んだアルバムは、世界的ヒットアルバム、マイケル・ジャクソンの「Thriller」でした。

このアルバムは2枚のアルバムを1枚にまとめてあるだけあって、全ての曲がおすすめの作品と言っても過言ではありません。
「Rev it up Speed」ではローリング・ストーンズのサポートメンバーとして参加し、またレッド・ツェッペリンの「Rock’n Roll」でもキーボードを弾いていたイアン・スチュアートがゲストとして参加していてファンならずとも一聴の価値があります。
続く「Rant N’ Rave with the Stray Cats」も評価の高いアルバムです。「(She’s )Sexy」は全米5位、「A won’t Stand in Your Way」は同35位、「Look at that Cadillac」は同68位を記録し、アルバム自体も2作品連続でプラチナ・アルバムを獲得することになったのです。
賛否両論ありますが、1986年にリリースされた「Rock Therapy」では、往年のロカビリーやブルースの名曲のカヴァーを堪能することができます。
バディ・ホリーの「Looking for Someone to Love」やチャック・ベリーの「Beautiful Delilah」など50年台、60年台の珠玉の名曲がストレイ・キャッツによって蘇っています。
また、このアルバムの唯一のオリジナル曲「Broken Man」では、ブライアンがバンジョーを巧みに弾いているプレイを聴くことができます。

現在のストレイ・キャッツ

ストレイ・キャッツは1983年と1992年に解散していますが、いずれも撤回し再結成されています。
解散されていた時期には、ブライアンは自身のバンド「ブライアン・セッツァー・オーケストラ」を結成したり、コンポーザーとしてとしていろいろなメディアに楽曲を提供したり活動を続けていました。
スリムは、ロスのサンセット通りでクラブを経営しており、ガンズ・アンド・ローゼスのメンバーなどもたびたび利用しているとのことです。
リーも音楽活動を継続していてロスとロンドンを行ったり来たりしながら、プロデューサー業やソロ活動を続けています。
現在は2004年に再結成されたストレイ・キャッツとしての活動を継続中で、2019年にはなんと26年ぶりとなるスタジオ・アルバム「STRAY CATS『40』」がリリースされました。
2018年にアメリカのラスベガスで開催された世界的なとかビリーイベントである「Viva Las Vegas Rockabilly Weekender」で行われたライブでは、「Rock this Town」や「Stray Cat Strut」など往年のヒット曲も演奏され、再結成を待ちわびたファンから盛大な拍手をもって迎えられ、伝説的ネオロカビリー・バンドとしての人気がまだまだ衰えていないことを証明してみせたのです。

※本記事はコロナウイルス感染症拡大より以前に執筆・掲載された記事です。

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